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夢幻水滸伝

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第二十六話 浮島その五

「そうしてるんや」
「産業は充分か」
「ああ、でかい神社やお寺もあってな」
 芥川も縞の神社仏閣の話をした。
「人も結構おる」
「豊かな島か」
「そや、それでな」
「この島の内政をか」
「これから見るで」
「浮島自体を見るうえでやな」
「そや、そうするで」
 こう中里に話してだ、芥川は綾乃も入れた三人で浮島の中を見て回りだした。領民達はのどかに収穫に備えた仕事等をしていてだ。
 水車が動き川の中では魚達が泳いでいて釣りも為されている。工場も動いていて煙を出している。
 時折足軽達が見回っているのが見える、芥川はその島の風景を見てそのうえで中里に尋ねた。
「どないや」
「ええ感じやな」
 中里は微笑んで答えた。
「この島は」
「平和やろ」
「ああ、豊かなだけやなくてな」
「治安もええか」
「そや」
 実際にというのだ。
「昔は賊がおったけどな」
「征伐したか」
「そや、相当悪質な連中やったけどな」
 それでもというのだ。
「成敗して生き残りもな」
「処刑したか」
「全員強制労働で使い潰したった」
 文字通り死ぬまでだ。
「十五時間の強制労働で二食でな」
「最初から殺すつもりやったな」
「どうにもならん悪党共やったからな」
「そやからか」
「死刑にしてもよかったんやけどな」 
 この世界の死刑は過酷だ、普通に鋸挽きや釜茹でがある。凶悪犯にはそこまでする世界なのだ。
「それでも勿体なくてな」
「殺すだけやったらか」
「それで強制労働にさせたった」
 粗末な食事だけ与えてだ。
「全員死ぬまでな」
「そうか」
「非道とか言わんのやな」
「どうせ人殺しとかやってた連中やろ」 
 だからだと言う中里だった。
「そやからな」
「人殺しに人権はないか」
「人殺した奴にそんなん必要か?」
 中里は真顔で芥川に問うた。
「別にいらんやろ」
「自分もそうした考えやな、それでな」
「自分もか」
「こっちの世界は基本そうした考えや」
「凶悪犯に人権はない、か」
「ロシアやインドは敵にすら人権がない場合がある」
 こうした国々はというのだ。
「氷帝、雷帝の考えでな」
「めっちゃロシアらしいな」
「それ偏見やからな」
 ロシア、こちらの世界のこの国に対するというのだ。
「イワン雷帝とかを基本に考えんようにな」
「あと今の大統領とかスターリンとかか」
「そもそもスターリンはグルジア、いやジョージア出身や」
「それ有名な話やな」
 ロシア、ソ連では少数民族だった。秘密警察の長官であったベリヤもこの国の出身だった。 
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