夢幻水滸伝
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第二十五話 五騎星その五
「侯爵家の者だ」
「侯爵か」
「そう、爵位で言うと私達の中で一番高い」
ヘッセはこうセルバンテスを紹介した。
「学業も優秀だ」
「ははは、本当のことを言われると困る」
ヘッセの紹介に笑ってだ、セルバンテスは返した。
「褒められることもな」
「だからか」
「止めて欲しいが」
「では止めよう」
「ヘッセは少し説明的過ぎるかな」
明るい茶色の髪をショートにした濃い青の目の少年が笑って言った、童顔で背は一七〇程と五人の中では一番小さい。黄色いブレザーと青いズボンという恰好がやけに目立つ。ネクタイが赤なのも余計にだ。
「いつもね」
「そうか」
「うん、私に対してもそうじゃない」
ヘッセに明るく笑って言う。
「面倒見がいいというかね」
「どうしてもな」
「そうせずにいられない」
「そうなのだ」
こう少年に返した。
「私はな」
「苦労性だね」
「自分でもそう思うがな」
少し苦笑いになってだ、ヘッセは少年に返した。
「どうしてもな、特にだ」
「私にはっていうんだよね」
「もっとしっかりしろ」
「しっかりしてるよ」
「忘れものばかりしているだろう」
「五日に一回位じゃない」
「ゼロにしろ」
それが当然だという口調だった。
「全く、仕方のない奴だ」
「まあまあ」
「まあまあではない」
「いい加減な奴みたいやな」
「そやな」
芥川も中里もそれがわかって二人で話した。
「こいつも五騎星みたいやけど」
「随分とな」
「そうだ、中々困った奴だ」
実際にとだ、ヘッセは二人に顔を戻して答えた。
「悪い奴ではないのだがな」
「まあそうみたいやな」
芥川は少年のその目を見てヘッセに答えた。
「少年そのものの澄んだええ目をしてるわ」
「そうなのだがな」
「あはは、少なくとも意地悪とかいじめは嫌いだよ」
少年も笑って芥川に応えた。
「そういうことはするなって父上に言われてきたしね、私も」
「父上にその一人称ってことはや」
中里はその二つから推理して言った。
「自分も育ちはええか」
「一応は貴族だよ」
「やっぱりそうか」
「うん、フランコ=デル=アルギエーリっていうんだ」
少年は中里に笑顔で名乗った。
「神空星、生まれはイタリアだよ」
「イタリアか」
「そう見えるよね」
「言われてみたらな」
そうだとだ、中里も答える。
「自分はそんな感じや」
「ミラノの生まれだよ」
「あのスカラ座のある」
「そうそう、ちなみにクラスはK組でね」
「私とマンションの部屋が隣同士だ」
ヘッセがここでまた話した。
「いつも登校前は忘れものがないかチェックしているが」
「五日に一回はか」
「それがある、しかも昼はよくだ」
「シェスタをしてるよ」
アルキエーリは中里に笑顔で話した。
「今日はそうした気分じゃないからしてないけれどね」
「私もシェスタは好きだよ」
セルバンテスも言ってきた、それも微笑んで。
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