夢幻水滸伝
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第二十五話 五騎星その二
「そうしたことは起こってないわ」
「そうなんか」
「それで欧州の連中もや」
「そうした奴はおらんか」
「そこにさらに騎士道が入ってや」
この倫理観が加わってというのだ。
「余計に厳しくなってる」
「こっちよりもか」
「ああ、とにかくそこは厳しい」
そうなっているとだ、芥川は中里に話した。
「騎士道に則って堂々と戦ってな」
「無駄な殺戮もなくてか」
「ほんま太平洋より奇麗な戦争してるわ」
「欧州の戦争ってえげつないけどな」
中里はこちらの世界のことを話した。
「傭兵やら十字軍やらな」
「こっちの世界ではな」
「奪って壊して殺してってな」
こうした戦争の話は実に多い、十字軍もそうであったし三十年戦争は実に酸鼻を極めたものだった。
「むしろ中国の戦争よりえぐいやろ」
「アメリカの戦争よりもな」
「こうした地域の戦争もえぐいけどな」
こちらの世界ではだ、あくまで。
「あっちの世界では星の奴等がそういうことせんからな」
「ロシアやインド以外はか」
「そのロシアやインドでも連中が必要やからしてな」
一般市民への攻撃もだ。
「街が攻撃目標やったり捕虜を見せしめとかでな」
「殺したりするか」
「そや、それで略奪とか暴行は許してない」
そのロシアやインドもというのだ。
「むしろそんなことした奴はな」
「殺されるか」
「女帝も雷帝も敵味方両方に冷酷や」
文字通りそうだというのだ。
「そうしたことした奴には容赦せん」
「自分の兵隊にもか」
「それもえげつない処刑方法で殺してる」
「軍規軍律は厳しいか」
「めっちゃな、まあ太平洋も軍規軍律は厳しいけどな」
かく言う彼等関西にしてもだ、太宰が定めたその軍律で軍を徹底的に統制しているのである。
「欧州もそうでな」
「そこい騎士道が入ってか」
「余計にや」
「厳しいか」
「そうや」
まさにというのだ。
「それで統一を目指してる」
「欧州は欧州でか」
「ああ、そうした状況や」
「それでも神星の奴でまとまりそうか」
「やっぱり神星が強い」
芥川もはっきりと言い切った。
「何かとな」
「そうか、ほな神星の誰かが盟主になりそうか」
「その中で筆頭候補はな」
「私か」
ここで廊下の右側から声がした、三人がそちらに振り向くと五人の少年がいた。その中央にいる金髪碧眼のギリシア彫刻を思わせる端正な顔の長身の少年が問うてきた。カラーが目立つ黒くボタンが見えない膝までの詰襟とズボンの制服である。
「それは」
「自分は」
「お初にお目にかかる、か」
少年は芥川に応えながら中里に応えた。
「君とは」
「自分確か」
「ジークフリート=フォン=ヘッセ」
少年は微笑んで名乗った、奇麗な澄んだ目である。
「ドイツから来た、クラスはH組だ」
「H組か」
「これから宜しくと言っておこう」
「五騎星やな」
「そうだ」
その通りという返事だった。
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