『塗り潰した7日間』
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『親子ゴッコ』
零の肩を抱いた男は、更に零を抱き締めた。ほんまの親子の再会のような雰囲気...。何故かウルッときてしまう零も、もう感情がおかしくなってる証拠。
そこで誠が『失礼します』と言ってスッと出て行った。2人にさすって事はマダ安全ぽい?マダ殺されずに済む?約束の7日目は明日やから大丈夫って事?
とにかく、うまく誤魔化せたなら何より。嘘を吐くのが下手な零の割には頑張った方やな。
『零、おまえは何も怒らすようなことはしてない。ええ子や。記憶戻らんのんか...戻らん方が幸せな場合もあるかもなぁ...大事か?記憶。取り戻したいか?今と、過去と、どっちが大事やと思う?』
『...今は父さんと逢えたから記憶なくてもいいかなっ!でも、過去のこと何も知らんのんは悲しいかな...父さんとの大事な思い出もいっぱいあるやん?零だけ覚えてないのは辛い...』
我ながらチョット怖い...。もしほんまに...って仮定で、もし実の父さんだったらって...そう想ってると勝手に涙だらだら出る...。
で、やっぱ此の人も完全悪に染まってるワケじゃ無いから尚更感情移入してしまうっていうか...ほんまに此の人を可哀想だと想ってきた...平和に終わりを迎えたい。7日目は明日。零はどうするべきかな...
『思い出か...父さんは零にそんな良い思い出作ってやれて無いから、今からやり直そうか。どっか、こんな汚い街から田舎に引っ越してなぁ。でも零は若いから田舎なんか嫌か...』
『嫌ちゃうで!父さんと毎日一緒おれるんなら嬉しいっ!今から引っ越そっ!そぉしよぉっ!で、いっぱい思い出つくろっ!』
『そぉするか...零、おまえはほんまええ子やな...記憶取り戻さんまんまで生きてくれ...新しくやり直してくれ...』
『...零、やっぱ何かしたん?父さん悲しいん?零のせい?』
『零のせいじゃ無い。父さんも零も...被害者やな...父さんは間違えた。零はそのまんまでええよ。そのまんまの零でええ』
『父さん?被害者って...?』
『零、知らんでええ。父さんは零と逢えて良かった。大事なもんやっと解った気がする...』
『大事なもん?何?零は父さんが大事やで!零も父さんに逢えて嬉しいよっ!過去も要らん。父さん一緒ならそれでええ!』
『零、待っといてくれるか?引っ越し準備せなあかん。荷物は殆ど無いから、チョット服まとめてくるわな。零の服も買いに行かんとな...』
『やったぁ!父さん選んでな!』
『若い子の服は解らんわぁ(笑)ほな、行ってくる...』
強く抱き締められた...
初めて笑顔を見せてくれた。
つられて満面の笑みを見せた。
振り返り際に涙がこぼれた気がした...。
零も涙が流れてた。
感情移入し過ぎた。
取り返しがつかん気がした。
現実と混同してる...。
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