レーヴァティン
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第二十二話 東の島その十
「駄目だぜ」
「その通りだ」
「ああ、堺とその周りはかなりいいんだよ」
「平和か」
「まだな、ただちょっと離れたら」
堺とその近辺からだ。
「もうな」
「戦や魔物か」
「多くて大変だぜ、野盗だっているしな」
「そうした連中を倒してだな」
「平和になって欲しいものだね、しっかりと全体でまとまった政も出来る様になってな」
「何かと大変だな」
「全くだよ、どうにかならないかね」
「なる」
そのどうにかが、というのだ。
「すぐにでもな」
「あんたがするのかい?」
「それを目指す」
前に広がる青空を観つつ船乗りに答えた。
「これからな」
「魔物や野盗を倒してか」
「まずはな、ではな」
「ああ、活躍してくれよ」
「そのつもりだ」
船乗りとそうした話もしてだ、英雄は堺に入った。そしてその堺に入ると船乗りが彼に言ってきた。
「じゃあまたな」
「ああ、機会があればな」
英雄は微かに、口元だけで笑って船乗に応えた。
「会おう」
「その時はまた飲もうぜ」
「酒をだな」
「お茶でもいいぜ」
こちらでもというのだ。
「お菓子と一緒にな」
「そちらも好きか」
「俺はどっちもいけるんだよ」
「そうか、実は俺もだ」
「ああ、あんたも両方いけるか」
「酒も茶もな」
つまり菓子、甘いものもというのだ。
「饅頭も羊羹も団子も好きだ」
「全部いけるか」
「ただ、菓子と酒は一緒には無理だな」
「それは普通ないだろ」
流石にとだ、船乗りも返した。
「西じゃいけるみたいだけれどな」
「あちらの菓子と葡萄酒は合う」
この組み合わせはというのだ。
「いける、だがこちらの酒と菓子はな」
「どうしても合わないな」
「だからこちらでは同時には楽しまない」
もっと言えば楽しめない、合わない組み合わせだからだ。
「とてもな」
「まあ大抵の奴がそうだな」
「例外もいるがな」
英雄は八条学園の中にある神社の巫女を思い出した、無類の酒豪であると共に壮絶な甘党でおはぎを肴に日本酒を飲む彼女のことを。
「しかし俺もな」
「無理だな」
「だから酒の時はな」
「煎り豆か?」
「刺身か天婦羅か豆腐か」
「ああ、確かにどれもいいな」
船乗りからしてもだ。
「じゃあそういうのでな」
「酒の時は頼む」
「茶なら饅頭か団子か」
「羊羹もいい」
「羊羹好きか、あんた」
「ういろうもきんつばも金平糖も好きだ」
「つまり大抵のお菓子はいけるか」
船乗りもこの辺りの事情を納得した。
「じゃあお茶の時はな」
「菓子をどんどん食いながらな」
「楽しもう」
「それじゃあそういうことでな」
「また会おう」
二人で笑顔で別れてだ、そしてだった。
英雄は堺の街の中を歩きはじめた、その後ろには馬と驢馬もいてこの世界での冒険をはじめたのだった。
第二十二話 完
2017・6・15
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