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夢幻水滸伝

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第二十二話 人の星その一

           第二十二話  人の星
 一年の校舎に行く時にだ、中里は芥川にこんなことを言った。
「今日忙しいな」
「休み時間はこうしてやからな」
「いつも出てるからな」
 だからだというのだ。
「随分とな」
「そやな、けどな」
「こうした機会にか」
「顔を見に行くのもええもんや」 
 そうだというのだ。
「そやからな」
「こうしてやな」
「顔を見に行ってるねん」
「そういうことやな」
「そや、それとな」
「それと?」
「こっちの世界の顔とあっちの世界の顔を覚えるのもな」
 それもというのだ。
「面白いやろ」
「確かにな、こっちの世界では人間でな」
「あっちの世界ではちゃう種族でな」
「立場も違って」
「その違いが面白いやろ」
「そやな、僕かてあっちの世界では鬼や」
 自分の話もだ、中里はした。
「それで武将やしな」
「武士でな」
「そういうことを考えるとな」
「違いも面白いやろ」
「ほんまにな、しかもな」
 さらに言う中里だった。
「それは僕だけやなくてな」
「他の連中もや」
「それを知ることもええな」
「そうやろ、二つの世界の違いはかなり面白いんや」
「その楽しみを見ることもか」
「ええことや、それで一年も行こうな」
「そやな」
 中里は芥川の言葉に頷きそうしてだった。
 一年の普通科の校舎に入った、ここでまたその中を観て言うのだった。
「ここも懐かしいわ」
「二年の時と一緒のこと言うな」
「ああ、ほんまにな」
 実際にというのだ。
「入学してな」
「最初はここやったな」
「最初の数日はあれやったわ」
「あれ?」
「ああ、地に足がついてない感じやったわ」
 そうだったというのだ。
「どうもな」
「浮かんでる感じか」
「それか夢の中におるかな」
 そうしたものだったというのだ。
「何かな」
「それ僕もやったわ」
「私もやったで」
 芥川だけでなく綾乃もそうだとだ、中里に話した。
「何かな」
「現実でない感じやったわ」
「この高校に入って」
「ちょっと夢みたいやったで」
「そやな、夢みたいやったな」
 中里は二人の言葉を聞いてあらためて言った。
「最初は。けど」
「現実になって来たんやな」
「そやったわ」
 中里は今度は綾乃に答えた。
「あの時は」
「それで友達も出来て」
「高校生活がはじまったわ」
「それ皆もやで」
 綾乃は笑って中里に話した。
「うちもほんまに入学したてはふわふわしてる感じで」
「高校生になったっていう実感なくて」
「それで夢みたいやったわ」
 そうだったというのだ。 
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