歌集「春雪花」
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
379
秋風に
散り降る銀杏
黄に染まり
ひぐらし鳴かば
寂しさぞつのり
街や公園に植えられた銀杏…秋の風に散らされて道へと落ちる…。
鮮やかな黄色…道の端を染めるかのように…。
ふと聞けば…茜色の空に蜩の鳴き声が響き、秋の夕暮れの寂しさを際立たせる…。
彼は…この秋をどう思い眺めるのだろう…。
もう私には手の届かない彼…時の無情さに、侘しさだけが纏わりつく…。
久方の
雲間に洩るゝ
月影に
想いさざめく
花すすきかな
夜に雲がかって月を見れないでいたが、久しぶりに淡い雲の間から月明かりが射し込む…。
あちらこちらで秋虫が歌い、寂しくなるなと言う方が無理な話…。
溜め息をつき…彼に会えないかと考え…無駄だと諦め…それでも、会いたいと願い…。
秋の肌寒い風が吹き抜ければ、野原のすすきが穂を揺らし…私の想いまでさざめかせるようで…。
この虚しさを消すには…どうしたら良いものか…。
ページ上へ戻る