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歌集「春雪花」

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 秋にそふ

  静けき虫の

   音に染まり

 長々し夜の

    閨の侘しき



 深まりつつある秋に寄り添うように…虫の鳴き声が響き渡る…。

 しんと静まり返る真夜中を美しく染めるようにさえ感じる秋虫の声…。

 段々と夜が長くなり…彼を想う時さえ長くなり…。


 独り部屋の中、諦めも出来ぬままに…彼を想う…。



 秋風の

  ひまより吹きし

   荒ら家に

 忍び掠るゝ

    草の虚しき



 秋の風はやや肌寒くなり…そんな風が戸の隙間から吹き込んでくる…。

 その風に、庭の草がざわざわと音を立てて…。

 忍ぶように生える草…忍ぶように生きる私…。
 風が吹けば葉は音を立て、そこに存在を示すが…私は彼に存在を示すことなど出来はしない…。

 在っても無くても同じならば…いっそ、雑草の方がましなのかも知れない…。


 彼を想いながら虚しさを抱く矛盾は…一体、いつまで続くのだろう…。



 
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