夢幻水滸伝
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第二十一話 地の星達その九
「小学校の時からないしな」
「あさりちゃんか」
中里はここまで聞いて思わず漫画のキャラクターの名前を出した。
「それも高校時代の」
「ああ、スポーツだけで進学したんだよな」
「お姉さんと同じ学校にな」
優等生である彼女とだ。
「ある意味凄い娘や」
「そういえばそっくりだね、あたしは」
「外見ちゃうけどな」
「あたしも姉貴いるしね」
笑って自分の家庭のことも話した。
「これが抜群に頭よくてさ」
「そのことまでそっくりなんか」
「そうなんだよ、ただ滅茶苦茶優しいんだよ」
「そこは違うか」
「その漫画じゃ喧嘩する程だけれどな」
確かに言い合って喧嘩ばかりの姉妹だがよく見るといつも一緒にいる。
「あたし姉ちゃんにいつも甘やかしてもらってるな」
「そうなんだな」
「ただ、怪我には注意しろって言われてるな」
「正直スポーツの人間が怪我したら終わりやろ」
「そうそう、それでさ」
「怪我にはやな」
「注意しろっていつも言われてるさ」
その様にというのだ。
「本当にな」
「ええお姉さんやね」
綾乃もここまで聞いて言った。
「そこはほんまあさりちゃんとちゃうな」
「あと煙草は吸うな、飯はバランスよくたっぷり食え、水分補給は欠かすな何かする前は絶対に準備体操をしろ」
「いつも言われてるんやな」
「そうなんだよ、これがさ」
大きな口をこれまた大きく開けて笑って言った。
「あたしもそれ受けていつもな」
「準備体操とかもやな」
「してるんだよ、飯にも気をつけてるさ」
「そうしてるんやな」
「姉ちゃん、それ父ちゃんと母ちゃんがいてさ」
つまり両親もいてというのだ。
「今のあたしがいるんだよ」
「つまり家族が大事なんやな」
「それとダチな」
この言葉と共に井伏と山本を見た。
「この二人にしてもな」
「学科は違うがのう」
「付き合いは深いしな」
「あっちの世界でも仲間になったしな」
「お互い大事にせんとな」
「部員だってな、仲良くしねえとな」
笑って言うのだった。
「ダチとも」
「そやな、それはな」
芥川も玲子のその言葉に同意して頷いた。
「自分のええとこや」
「ああ、あたしは確かに馬鹿さ」
自分で笑って言うのだった。
「けれど忘れたらいけないものはしっかりとな」
「覚えてやな」
「守らないとな」
「それでやな」
「家族とダチ、絆はしっかりとだよ」
それこそというのだ。
「守って生きないとな」
「そういうことやな」
「姉ちゃんに子供の時に言われてさ」
「守ってるんやな」
「ああ、ちなみに姉ちゃんすげえ美人だぜ」
姉のことをさらに話した。
「彼氏いるかどうか知らないけれどな」
「おらんかったらか」
「どうだい?」
芥川だけでなく中里にも言った。
「よかったらな」
「別にええわ」
「僕もや」
だが、だった。二人は玲子のその申し出にやや微妙な顔になってそのうえで彼女に返した。
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