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夢幻水滸伝

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第二十一話 地の星達その八

「ほんまにな」
「そうでしょうか」
「うちが保証するわ、芸能プロにでも入ってな」
 そうしてというのだ。
「なってみたら?」
「それは」
「考えるのも悪くないで」
 触られてまだ恥ずかしそうにしている綾乃に笑って言う、そしてここで芥川が次のところに行こうと言ってだった。
 実際に今度は工業科、井伏と山本のところに行こうとした。だがここで芥川が言ってきた。
「今あの二人玲子ちゃんと一緒に体育科と工業科の校舎の屋上におるらしわ」
「そこにか」
「ああ、そこで三人でカード遊びしてるらしい」
 こう中里に話した。
「そやから屋上行こうか」
「そうか、っていうか玲子ちゃんあの二人と付き合いあるんか」
「みたいやな、ほな屋上行こか」
「そうしよか」
 二人で話す、そしてだった。
 綾乃も入れて三人で体育科と工業科の屋上に向かった、するとそこにだった。角がなくなった玲子と大柄で力士の様な外見の男とやはり背が高く引き締まった身体と顔の男が車座で座っていた。
 玲子はくるぶしまでのスカートにセーラー服だった、昔ながらの所謂スケ番の恰好だった。そして後の二人もだ。
 大柄の男は角刈りで背は一九〇はある、顔は岩の如くでがっしりとした体格だが目は穏やかだ。制服は黒の詰襟の長ランだ。
 引き締まった身体の男は背は一八〇位でハイカラーの黒い長ランで前のボタンを第二まで開けている、頭はざんぎりで目は鋭い。その三人が中里達に名乗った。
「円地玲子だよ」
「井伏秀幸です」
「山本剛です」
 三人共名乗る、中里はその三人にこう言った。
「三人共懐かしい恰好してるな」
「ははは、先輩から見てもだよな」
「昭和の不良か」
「あたしはどうもそうした格好が好きなんだよ」 
 玲子が笑って言う、見れば片膝を立てて座っている姿勢だ。
「それで」
「そうした制服を着てるんか」
「校則違反じゃないからね」
 こうした制服もあるのだ。
「だからね」
「その制服かいな」
「そうさ」
 中里に笑って話した。
「似合ってるかい?」
「まあな、その髪型にもな」
 黒いロングヘアだ、右手にはカードがあるがそれを花札に変えれば見事な昭和のスケ番である。
「完璧にな」
「それは嬉しいな」
「二人もな」
 中里は井伏と山本にも言った。
「昭和の不良やな」
「こうした服装が好きで」
「着ています」
 井伏と山本は広島弁で中里に応えた。
「校則違反の制服ではないです」
「そのことは断っておきますわ」
「そうか、けどほんま見てたらな」
 今の三人をというのだ。
「レトロやな」
「これでも三人共真面目やで」
 ここで芥川が彼等のことを話した。
「授業はさぼらんし煙草もシンナーもせんしな」
「格好はともかくとしてか」
「そや、いじめもカツアゲも万引きもせん」
「そうした曲がったことは嫌いだよ、あたし達」
 玲子もそれはと言う。
「もっともあたしは授業全部寝てるけれどね」
「だから成績悪いんか」
「全教科追試ってこともあったよ」
 中里に笑って言う。
「何とか進級出来たけれどね」
「ほんまに勉強はあかんねんな」
「ああ、教科書とかノートを開いたこともさ」
 それすらというのだ。 
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