八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百二十三話 ハウステンボスから帰ってその一
第百二十三話 ハウステンボスから帰って
朝起きるとだ、相当にだった。
頭が痛くてだ、僕はもう起きて稽古に行こうとしていた畑中さんに言った。
「お風呂入ります」
「そうされてですね」
「二日酔い解消します」
「それが宜しいかと」
畑中さんもこう言ってくれた。
「二日酔いならです」
「お風呂ですね」
「それに入られて汗をかかれて」
そしてというのだ。
「すっきりとされて下さい」
「わかりました」
畑中さんのそのお言葉に甘えることにした、そして。
僕はお風呂場に入った、すぐに身体を洗って湯舟に入り。
熱いお湯に五分位入って汗をかいてから一旦出て冷たいシャワーで身体を冷やしてまた湯舟に入る。それを三回繰り返してお風呂を出ると。
すっきりしていた、起きた時の頭の鈍い痛みが嘘みたいに消えていた。
それで稽古を終えて戻ってきた畑中さんにもこう言った。
「もうです」
「二日酔いもですね」
「消えました」
「それは何よりです」
「お風呂はそのままにしておきました」
畑中さんにこうも言った、お部屋のソファーに座ったままで。
「ですから」
「はい、それでは私も」
「お風呂にですね」
「入らせて頂きます」
こう僕に言ってだ、そうして。
畑中さんもお風呂に入った、僕はその間本を読んでいたけれど。
お風呂から上がった畑中さんは僕が読んでいるその本を見て何処か懐かしそうに言った。
「よい本を読まれていますね」
「オリンポスの果実ですね」
「田中英光ですね」
「そうです」
僕は作者の名前について答えた。
「その人のですけれど」
「私も学生時代読みました」
「そうだったんですか」
「話に聞いていた人の作品だったので」
「確かこの人は」
田中英光についてだ、僕は畑中さんにお話した。畑中さんは僕に断りを入れてもう一つの席に座ってお話を聞いてくれた。
「自殺してますよね」
「はい、太宰治の墓前で」
「そうでしたね」
「太宰を終生敬愛していまして」
「それで、でしたね」
「後を追ってです」
まさにそうしてというのだ。
「そうしました」
「何ていいますか」
「残念ですか」
「はい」
正直に思った、その死については。
「自殺しなくても」
「私もそう思いますが」
「この人にとってはですね」
「どうしてもです」
「そうしないといけなかった」
「そうだったのでしょう」
「そうですか」
僕は悲しい顔で応えた。
「あの人にとっては」
「太宰の死がです」
この人が自殺したことは田中英光のそれよりも有名だ、芥川龍之介とこの人は自殺した作家の代名詞になっている。そういえば太宰はどうも芥川への憧れが終生あっていて彼の生き方をなぞっている感じに思う。
「彼のその死を決定したのでしょう」
「後追い自殺ですか」
「そうだったかも知れません」
「そうかも知れないですね」
僕もそう思った、実際に。
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