夢幻水滸伝
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第二十話 現実の世界でその三
「そうさせて頂きました」
「そうなんか」
「はい、そして私と坂口君はこの様にです」
「同じクラスでやな」
「よくしてもらっています」
その坂口を見て微笑んで話した。
「いつも」
「それはこっちもや、頼りになるわ」
坂口も太宰を見て言った。
「いつもな」
「そうでしょうか、私は頼りないと思いますが」
「スマートで目先が利いて几帳面でな」
帝国海軍士官の様な評価だった。
「頼りになるで」
「そうだといいのですが」
「クラスの皆が頼りにしてるわ」
「やっぱり生徒会長やしな」
綾乃が微笑んで言ってきた。
「こっちの世界でも頼りになるわ」
「そうみたいやな」
中里もその太宰を見て言う。
「宰相はこっちの世界でも宰相か」
「そうやな」
「本当にそうだがや、後な」
坂口がここで三人にこう言った。
「よかったら今日のお昼はな」
「一緒にか?」
「食おうか」
食事に誘ってきた。
「そうしよか」
「昼飯か」
「きし麺食うだがや」
食堂のそれをというのだ。
「今日はな」
「そのまんま名古屋人やな」
坂口のその話を聞いてだ、中里は納得した感じで言った。
「きし麺か」
「ああ、大好物だがや」
「やっぱりそうか」
「あと味噌カツに海老にスパゲティも好きだぎゃ」
「スパゲティはあれやな」
「勿論だぎゃ」
あの鉄板の上で焼かれたそれだというのだ。
「あれが一番だがや」
「そうか、やっぱりな」
「それとういろうだがや」
「ういろうは僕も好きやで」
「本場はまた違う、それでぎゃ」
「今日のお昼はか」
「きし麺だがや、あと味噌鋳込みうどんもええだがや」
実に名古屋人らしい言葉だった。
「味噌は勿論八丁味噌だがや」
「その味噌食べて生きてるか」
「名古屋というか東海はそうだがや」
「そっちはそうか」
「あと鶏も好きだがや」
「というかどんどん名古屋出してくるな」
鶏まで聞いてだ、中里はこうも思った。
「ドラゴンズも調子よかったらなあ」
「野球の話は今は聞きたくないがや」
「昨日ドラゴンズ負けたからか」
「そうだがや」
まさにその通りだった。
「全く、ここ数年あかんわ」
「落合監督解任が悪手でしたね」
太宰は苦い顔になった坂口に苦い顔で突っ込みを入れた。
「やはり」
「ほんまそっからやったがや」
「そしてどうもGMとしては」
「まあそこは言わんで欲しいぎゃ」
「再建を希望します、そして再建されて」
そしてというのだ。
「巨人を最下位に落として欲しいです」
「それは天下億民の願いやな」
綾乃は太宰のその言葉に大きく頷いて言った。
「巨人が強いと世の中おかしくなるしな」
「というか巨人が勝つこと自体が悪いことやな」
芥川はまさにこの世の真理を指摘した、巨人の勝利はまさにそれ自体が世の中にとって悪なのだ。
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