| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

DOREAM BASEBALL ~ラブライブ~

作者:山神
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

シンキングファストボール

 
前書き
昨日会社のソフトボール大会で初めて最下位になりましたorz
来年は4年ぶりの優勝を達成したいなと思いますo(`^´*)ビィ 

 
強豪校を次々と撃破した音ノ木坂学院野球部。彼女たちは注目が集まる中でも自分たちの野球をやりきり大会5日目・・・

「ストライク!!バッターアウト!!」
「やったぁ!!」

最後の一人の打者を空振り三振に奪いガッツポーズする穂乃果。三回戦vs千葉南女子校戦を11対0の5回コールド勝ちに納め、念願の全国大会出場を勝ち取った。













「いやぁ!!今日もパンがうまい!!」
「食べ過ぎですよ、穂乃果」

廃校阻止のために大会に出場した彼女たち。そんな彼女たちは大々的に取り上げられる全国大会に出場することができ、沸き上がっていた。

「これすごいことよね!?初出場で全国なんて!!」
「見てみてにこちゃん!!音ノ木坂のことがネットニュースで取り上げられてるよ!!」

肩肘のアイシングをしながらスマホを見ていた花陽がそう言うと、全員がその周りに集まってくる。そのニュースには確かに音ノ木坂学院のことが取り上げられていた。

「『今大会のダークホースが現れた。一回戦で横濱、二回戦では春の準優勝校華崎徳春を撃破した初出場音ノ木坂学院が全国大会へと駒を進めた』」
「『全試合で完投しているエース小泉はここまで四死球がわずか1つと安定しており、打線もリードオフマンの高坂、今大会の最速の塁間タイムを誇る星空がチャンスを作り長打力のある西木野、勝負強い園田、俊足好打の絢瀬がそれを還す』」
「『守備ではセンターラインが安定しており、バント処理でのミスもなく安定感がある』」
「『かつて甲子園3連覇、さらにはU-18日本代表として初の世界一を達成した名捕手天王寺剛がこの大会でまたもや頂点を取るのか、その指揮に注目が集まる』」

読み終えた一同はべた褒めされていることに「オオ~」と思わず声を出す。

「にこは!?にこは褒められてないの!?」
「これはうれしいわね、こうして注目してもらえるなんて」
「そうですね。これで音ノ木坂に少しでも興味を持ってもらえたら・・・」

廃校を阻止することができる。その期待に大きく胸を膨らませるナイン。

「穂乃果!!これ見た!?」
「ネットニュースのこと?」
「そうそう!!」
「これすごいよね!?みんなべた褒めされてるよ!?」

席を外していたヒデコ、フミコ、ミカも同じニュースを見ていたらしく、大慌てで飛んでくる。
褒められているところしか読んでいなかった彼女たちは嬉しさで大興奮。しかし、最後の一文を読んでいたらきっと手放しでは喜べなかったのだろう。

『ただ、音ノ木坂学院はここまで小泉一人が投げ抜いている。かつて天王寺が東日本学園のキャプテンだった時に起きた『夏の悲劇』を再現してしまわないか、心配する声も多く上がっている』



















「夏の悲劇か・・・」

別室ですでにスーツに着替え終えていた剛は穂乃果たちが読んでいたネットニュースを見ていたようで、思わず苦笑いをしている。

『佐藤、涙を堪えきれずマウンドを降りていきます。しかし、ここまでよく投げました!!胸を張ってくれ!!』

二人に肩を借り、涙を拭いながらゆっくりとマウンドを後にする背番号7。それをマウンドに集まっている東日本学園の内野手たちは、懸命に涙を堪え目を充血させ、見送っていた。

「二度とあんなことさせるかよ、ふざけやがって」

自分の無力さを痛感し、あれほどまでに後悔した試合はない。その出来事がもう一度起きるのではと危惧する声に、彼は面白くないと苛立っていた。

「剛さん!!お待たせしました!!」

そこへ制服に着替えてやってきた選手たち。その顔を見て落ち着きを取り戻した剛は、立ち上がって全員を集める。

「まずは全国出場おめでとう、よくやった。ただ、まだ目標を達成したわけじゃないからな。気を抜くなよ」
「「「「「はい!!」」」」」

ここから先まだ関東大会は続く。次は第三シードの千葉経済学高校。そして勝てば次はおそらく春の選抜優勝校UTX学園。強豪校と次々に戦えるとあって、全員の気持ちは熱く燃え上がっていた。















翌日・・・

カキーンッ

「あ、行ったわね、これ」

バックネット裏から準決勝第一試合を観戦していた音ノ木坂ナイン。そのうちの一人、絢瀬絵里が4番打者の放った打球を見てそう言う。

ゴツ

その言葉通り、打球はバックスクリーンに直撃し、先制のスリーランホームランとなった。

「3番優木あんじゅ、4番統堂英玲奈、5番綺羅ツバサ。このクリンナップはやっぱり強力だね」
「えぇ。全員がホームランを打つ力を持っているんだもの。相手からしたら堪ったもんじゃないわよね」

全国でも常に結果を残し、『常勝軍団』と呼ばれる実力校。その戦いぶりに、見惚れるしかなかった。

「穂乃果、アップに行きましょう。もしかしたらコールドがあるかもしれません」
「うん、そうだね」

関東大会では全ての試合においてコールドゲームが存在する。甲子園予選では決勝のみコールドがなくなるが、女子では試合日程が男子より詰まっていることも考慮され、決勝でもコールドゲームを採用しているのだ。

「それにしてもすごいニャ。まるで子供と大人って感じで」
「そう?私の方が全然いいバッターよ」
「よく言うわね、ポップフライの方が多いくせに」
「なんですって!?」
「まぁまぁ」

睨み合う真姫とにこを宥めることり。そんな様子を見ていた希が、あることを話し始める。

「なぁ、みんな。UTXのクリンナップ、裏でなんて呼ばれてるか知ってる?」
「「「「「え?」」」」」
「A-RISE・・・今まで何度も奇跡を起こしてきた(a rise)ことからそう呼ばれてるんよ」

これまで幾度となくピンチを救い、逆転劇の主役になってきた3人組。彼女たちに敬意を評し、女子野球界では彼女たちをそのように呼ぶようになっている。

「そのうちの一人、綺羅ツバサが何て言ったか知ってる?「私たちが奇跡を起こしたんじゃない。みんながそれをさせてくれたの」って」

野球と言うスポーツではチームワークが大きな武器になる。チームの軸になる選手はもちろん存在するが、その一人では勝てない。全員で力を協力することが何よりも重要だ。

「うちらは他のチームよりもできてから日が浅い。こんなところでケンカしてちゃ勝てへんよ」
「わ・・・わかってるわよ」

UTXの強さを目の当たりにしわずかにチーム間に生まれた歪みを容易く取り除いた希。彼女は互いに顔を見合せ笑顔になっている仲間たちを見て、ニッコリと微笑む。

「さ、早くアップしよ。穂乃果ちゃん、掛け声お願いね」
「うん!!」


















「変えてきたな、ピッチャーを」

現在シートノックを行っているのは先攻を取っている音ノ木坂学院。その守備陣とブルペンに入っている髪の長い少女を見て、すでに試合を終えているUTXのA-RISEはそう話していた。

「ライトの園田さんをピッチャーに、エースの小泉さんをそのままライトに入れるのね」
「確かにあのライト、肩良かったものね」

ブルペンで前日まで投げていた投手よりも速いストレートを投じるサイドスロー。一方の千葉経済学高校のブルペンにいるのは・・・

「千葉経済学はエースの須川じゃないのか。決勝に温存か?」
「昨日投げてたからじゃないの?9回を完封してたはずだし」
「よく見てるわね、ツバサ」

あんじゅにそう言われ得意気に胸を張る。その子供っぽい仕草に頭を撫でると、怖い顔で睨まれますます頭を撫で回すあんじゅ。

「あの投手のデータは?」
「短いイニングを投げてはいますが、先発では初めてですね・・・球種も110km弱のストレート中心でこれといった変化球もないようですが・・・」

だがなぜかここまで無失点を続けているらしく、一応データを集めてはいるらしい。しかし、その理由はいまだに解析できていないらしい。

「この試合で何か分かればいいんだが・・・」
「まぁ、わからなくても何とかできるでしょ、私たちなら」
「ふふ、そうね」



















「整列!!」
「いくよ!!」
「「「「「オオッ!!」」」」」

準決勝第二試合。第一試合が5回コールドだったため予定よりも若冠早い試合開始となっている。
音ノ木坂学院は先攻のため、整列後1番の穂乃果と2番の凛がヘルメットを被り、バットをスイングしながらベンチを出る。

(この大会では3試合中2試合に登板していまだ無失点。確かにイニングは4回と少ないけど、あのボールで無失点ていうのはちょっとな・・・)

遅いボールは打ちにくいと言われているが、110km弱なら女子野球では平均レベル。むしろ1番打ち頃のボールである。それなのにここまで自責点どころか失点もないのは剛も不思議に感じていた。

「お願いします」

審判に一礼して打席で構える穂乃果。相手は右のスリークウォーター。特に投球フォームに癖があるわけでもないので、先頭の穂乃果に特に指示は出していない。

ピュッ

「ストライク!!」

初球は無難にアウトローのストレート。それを見逃し1ストライク。続く2球目・・・

(また?)

初球と同じような球に打ちに出る穂乃果。捉えたと思ったその瞬間、バットから響いてきたのは鈍い音。

「ショート!!」

ショートへのボテボテのゴロ。それを軽快に捌かれ一塁へ転送、アウトとなる。



















「あら?高坂さん初めて一打席目を凡退したわね」
「そうなのか?」
「はい!!ここまで全ての試合で一打席目は出塁してました!!」

それも全てヒットでの出塁をしてきただけに今の当たりはどうにも腑に落ちない。試合を観戦するUTX学園の面々も不審な表情を浮かべていた。



















「ごめ~ん!!詰まったみたい!!」

ベンチへ戻ってきて開口一番謝罪する主将。ベンチからは大丈夫と声が出るが、剛の眉間にはシワが寄っていた。

「穂乃果、どんな感じだった?」
「それが・・・普通のストレートだと思ったんですけど、なぜかバットの先で打ってしまったみたいで・・・」

本人もどういうわけかわからず回答に困る。それを受けて剛はもうしばらく様子を見てみることにした。

ガキッ

2番の凛が1ボール1ストライクからの3球目を打ちに出るが、引っかけてピッチャーゴロに倒れた。

「ニャニャ?なんであんな当たりに・・・」

ガッカリと落ち込んでいる凛。タイミングはバッチリだったのになぜか打球は弱々しい当たり。しかし、剛はその理由が何となくわかってきていた。

(真姫までは見ておくか。俺の予想が正しければおそらく真姫なら大丈夫だろう)

何を根拠にそんなことを思っているのか素人目にはわからない。その3番の真姫への初球。

カーンッ

快音を残した打球はライナー性でセンター前へと運んでいく。あまりの打球にセンターが後逸しそうになっていたが、なんとか抑えシングルヒットに留める。

(やっぱりな。まぁ海未は内野ゴロになってもいいや。次からは対処できるし)

その予想通りにセカンドゴロに倒れた海未。3アウトになったためベンチから攻守交代のために音ノ木坂ナインが飛び出してくる。


















「ランナーは出したが結局無得点か」
「あの3番・・・西木野さんだっけ?いい当たりだったわね」

スタンドで見ているUTXのA-RISEことクリンナップ3人はこの回も無失点に抑えた相手投手に感心していた。だが、1人だけ詰まらなそうにしている人物がいた。

「問題ないでしょ。あのピッチャーが抑えられる理由はわかったし」
「「え?」」

なんとすでに打てない理由を解明したと言うツバサ。他の面々は彼女のその理由を尋ねた。

「あの投手が打てない理由はね――――」
















「シンキングファストボール?」

裏の守備を3人で抑え戻ってきた音ノ木坂ナイン。円陣を組んだ彼女たちは剛から相手のボールの正体を聞かされていた。

「あぁ。通常のストレートと違い、縫い目から指を外すことにより回転数を減らし、手元でわずかに沈ませる。そのせいで内野ゴロが多くなっているんだ」

そのため長打を打つためにボールの下の方を打ちに行く真姫はジャストミートできたらしい。穂乃果が先で打ったと思ったのは内野ゴロだったため。実際には手がしびれていなかったことから剛はボールの上っ面を叩いたのだと気が付いたのだ。

「それで?対処法は?」
「知らん」
「「「「「えぇ!?」」」」」

ナインの大きな声に思わず耳を塞ぐ。耳がキーンとなったものの、落ち着いたため手を外すと、穂乃果たちが迫ってきていた。

「剛さんは甲子園で優勝した人なんですよね!?」
「だったらシンキングファストボール?を投げる人ともやったことあるんじゃないんですか?」
「残念、ないんだこれが」
「ナインだけに?」
「そういうことじゃなくて」

現在野球ではシンキングファストボールよりもツーシームの方が主流である。そのためツーシームの対処はある程度やったことがあるが、シンキングファストボールは名前しか知らないためイマイチ対処方がわからない。

「ただ、シンキングファストボールの対処法はないけど、あの投手を降板させる方法はある」
「「「「「・・・はい?」」」」」

打てないのに降板させる。そんな便利な方法があるのかと疑問に思うメンバーに、剛はその策を伝えた。



 
 

 
後書き
シンキングファストボール・・・あまり使う投手は見たことがないですね。私も一試合くらいしか使用したことないですし(制球がつきにくくて・・・)
次で準決勝は終わりますかね、ゆっくりと行きたいと思います。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧