レーヴァティン
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第十九話 紹介その七
「だからな」
「そうしたお店に行ってか」
「そこそこタイプの娘見付けたらな」
「それでか」
「卒業すればいいんだよ」
「俺はな」
「考え変わらないか」
久志の血走ったままの目を見て問うた。
「卒業に情熱賭けてるんだな」
「夢なんだよ」
卒業に最高の相手を、というだ。
「俺のな、だから今からな」
「その人が美人さんならか」
「理想の相手だよ」
まだ会ってもいないが確信していた。
「その人とベッドを共にしてくるな」
「まあそこまで言うならな」
「いいか」
「ああ、まあ行って来い」
何だかんだ言うが智うは久志を止めるつもりはなかった、それで他の面々と共に彼を送りはした。
しかしだ、久志が行ってからあらためて彼は言った。
「どうなるだろうな、あいつ」
「さて、お相手がどうした方か」
「そもそもそれが問題だね」
順一と源三は智にそれぞれ応えた。
「どういったお顔で性格か聞いてないし」
「お家と住所だけ聞いてですからね」
「それで行くとかね」
「冒険では」
「そうだよな、あいつもう完全に思い込んでるな」
卒業のことで頭が一杯になってというのだ。
「そこにいる人が最高の相手だってな」
「そうですね、間違いなく」
「何時の間にか確信しているよね」
「あんなに思い込み激しい奴だったか?いや」
ここでだ、智は久志の今の状況を理解してそうして言った。
「完全に一つのことしか考えられなくなってるな」
「はい、卒業のことだけで」
「もうね」
「だからですね」
「相手のことは考えられなくなっているね」
「お店に行くのと同じだな」
智は久志の今の状況をこう察した。
「つまりは」
「そうですね、どうやら」
「今の彼はね」
「お店には確実にある程度の娘がいますので」
「それが商売だしね」
「お店とは違うんだよ」
智はこのことを言った。
「こうした場合はな、あいつはまだわかってないがな」
「やれやれですね」
「まあそれも未経験だからだね」
「こういうのは場数がものを言うんだよ」
その場数を踏んできた者の言葉だ。
「経験すれば経験するだけな」
「わかってきてだね」
「考えられる様になるんだよ」
こう言うのだった。
「戦いと同じでな」
「そうだよね、こうしたことも」
源三は智の今も言葉にはっきりとした顔で頷いた。
「経験を積んでね」
「わかっていくよな」
「そうなんだよね」
「一回よりも二回、二回よりも三回でな」
「経験が教えてくれるね」
「だからな、あいつもな」
久志、彼もというのだ。
「まずは経験だよ」
「ここはだね」
「どんな結果になってもな」
「初陣で得られるものは多いしね」
「むしろ初陣でどうなってもな」
例えどうした結果になってもというのだ。
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