ハイスクールD×D/EXTELLA
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フリードと聖剣エクスカリバー(偽物)
一誠side
「狙え! 兵藤を狙うんだ!!」
「死ね淫獣野郎が!!」
「うおぉぉぉっ! テメェらふざけんなあぁぁぁ!」
部活対抗戦のドッジボール。俺は飛んでくる豪速球を涙ながらに叫んで、必死に避けている!
対戦相手は野球部。開始早々に俺だけが狙われていた。
単純な話だ。すぐに分かったぜ。
俺以外の部員に当てるわけにはいかないんだ、こいつら的には!
部長・・・・・・駒王学園の二大お姉さまのお一人。大人気のアイドル。当てられない。
朱乃さん・・・・・・駒王学園の二大お姉さまのお一人。学園のアイドル。当てられない。
アーシア・・・・・・二年生ナンバー1の癒し系天然美少女。しかも金髪! 当てられない。
柴崎・・・・・・棟夜の幼馴染で運動音痴美女。当てられない。むしろ当てた瞬間棟夜に撲殺。
小猫ちゃん・・・・・・学園のマスコット的存在でロリロリ少女。当てたらかわいそう。
木場・・・・・・全男子の敵だが、当てたら女子から恨まれる当てられない。
棟夜・・・・・・木場同様男子の敵であるため、勇気あるやつが一人狙ったんだが・・・。
「死ねイケメンが!」
「はっ。遅いわボケ!!」
野球部の豪速球を何ともせずキャッチして、倍返しと言わんばかりの豪速球を受けた野球部が一人気絶。結果実力的に敵わないため当てられない。むしろ殺られる。
俺こと一誠・・・・・・なぜこいつが美男美女ばかりのオカ研にいるのか分からない。当てても問題なし。いや、むしろ当てるべきだ。死ね。死ぬんだ野獣が!
奴らの心の声が聞こえてくるようだ!
究極の消去法だった! そして、俺への悪意、殺意が集中する! 全校生徒から!!
「イッセーをぶっ殺せぇぇぇぇぇ!」
「アーシアちゃぁぁぁぁん! 可愛いよぁぁぁぁぁ! 一誠は死にやがれぇぇぇぇぇ!!」
「お願い! 兵藤を亡き者にして! リアスお姉さまのために! 朱乃お姉さまのために!」
「アーシアさんと柴崎さんを正常なる世界へ取り戻すんだ!!」
「ヒャッハーーーーッ! 死にやがれ淫獣野郎!! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねーーーッ!!」
「殺せぇぇぇぇぇぇ! ロリコンは俺だけでいいんだよぉぉぉぉ!!」
ギャラリーから死ね死ねコールが飛び交う!! ふざけんなお前ら! 全員目がギラギラと殺意に満ち溢れてやがる! ちくしょう! 何でこんなことに!?
「イッセーにボールが集中してるわ! 戦術的には犠牲って事かしらね! イッセー、これはチャンスよ!」
「部長ぉぉぉぉ! 頑張りますぅぅぅぅ!!」
部長に期待されちゃ、嫌でも体を張るしかねぇだろ!!
俺へ集中するボールを小猫ちゃんが堅牢な防御力で防いで、細腕から繰り出されるパワフルな一撃で相手チームを倒していく!
よっしゃ! この調子なら優勝も楽だな! 後は俺が何とかボールから逃げていけばいいだけだ!
そんなことを思っていたら、一人豪胆な野球少年が俺から木場に標準を変えやがった!
「クソォ! 恨まれてもいい! イ死ねイケメンめぇぇぇぇ!」
おぉっ! イケメンへの憎悪が大きかったのか、木場にボールを打ち出しやがった! そのまま当てられちまえ! かと思ったが・・・・・・。
「何ボーッとしてやがるんだ!」
遠い目で試合に集中していない木場のもとへ、俺は毒づきながらも駆け寄り、庇うように前へ出る。
「・・・・・・あ、イッセー君?」
あ、イッセー君? じゃねぇだろ! 何やってんだお前は!
ボールが迫る! くそ! こうなったら止めてやらぁ!!
と思っていたら急にボールの軌道がズレた。フォークボールのように降下していく球体は、勢いは衰えず俺の下腹部へ。
-ドォォォォォォォンッ!!-
「ッ!?」
ちょ、直撃するボール。
・・・・・・玉が、俺の玉に・・・・・・。
「ぐはっ!」
俺はあまりの痛さに股間を抑え、倒れ込んだ。こ、この答えようのない痛さは・・・・・・男子だけがしる痛み。
駆け寄ってくる部員たち。部長が俺を抱きかかえる。
「ぶ、部長・・・・・・。た、ボールが、俺の・・・・・・」
「ボールならあるわ! よくやってくれたわね、イッセー! さて、私の大切な後輩をやった輩を退治しましょうか!」
お、お姉さま、目がマジッス。
てか・・・・・・マジで、た、玉が・・・・・・。息もできねぇ。
「こりゃぁ相当キツイな。子猫・・・・・・一誠の奴を安全な場所まで引きずって運んであげてくれ」
「・・・・・・はい」
っておい棟夜。人を荷物みたいな言い方してんじゃねぇよ。
むんずと、俺の襟が掴まれずーりずーり引きずられていく俺。さすが怪力少女・・・・・・俺を運ぶのに無表情ですぜ。
そして体育館の一角に置かれた俺は股間を抑えたまま試合を見ることにした。
「イッセーの弔い合戦よ!」
部長の怒りの気合の入った声が聞こえてくる。後部長、俺はまだ生きてます・・・・・・もう一つの俺の玉は死にかけてますけど。
そしてまぁ俺のいなくなったオカ研は快進撃をしていき俺も途中で復帰して、優勝と言う形で部活対抗戦を終えたのだった。
ザーっと、外は雨模様だ。大会が終わった後が幸いだった。
-パン!-
雨音に混じって乾いた音が響く。部長に叩かれたからだ。俺ではなく・・・・・・木場だ。
「どう? 少しは目が覚めたかしら」
釣り目の部長。かなり怒ってらっしゃいます。
部活対抗戦は優勝という形で納めたのだが、一人だけ非協力的な奴がいた。木場のことだ。
それでも何度か貢献してはくれたが、終始ボケっとしていた。試合中、何度も部長が怒っていたけど、それでも木場はどうでもよさそうな感じだった。
部長が怒ってなかったら俺がキレてたと思う。
「・・・・・・・・・・」
頬を叩かれても木場は無表情、無言だった。
・・・・・・な、何だこいつ。本当に木場か? あまりの変貌ぶりに別人のように思えるぞ。いつもはニコニコ顔でイケメンだったのに。
と、木場は唐突にニコニコ顔になるが、何か違う感じだ。
「もういいですか? 球技大会も終わりました。球技の練習をしなくてもいいでしょうし、夜の時間まで休ませてもらってもいいですよね? 少し疲れましたので普段の部活は休ませてください。昼間は申し訳ございませんでした。どうにも調子が悪かったみたいです」
「・・・・・・木場、お前マジで最近変だぞ?」
「キミには関係ないよ」
俺が聞いても、木場は作り笑顔で冷たく返してくる。
「皆心配してるんだぜ?」
「心配? 誰が誰をだい? 基本、利己的なのが悪魔の生き方だと思うけど? まぁ、主に従わなかった僕が今回は悪かったと思ってるよ。話は終わり? 僕は帰らせてもらうよ」
コイツ! 一体どうしちまったんだよ!!
「あのな! これからチーム一丸でまとまって行こうとした矢先でそんな調子じゃ困るんだよ! この間の一戦で、俺たちがどれだけ痛い目に遭ったのか俺たちが一番わかってるだろう!?・・・・・・お互い、足りない部分を補えるようにしなきゃダメなんじゃねぇか? 仲間なんだからさ」
俺の言葉に木場は表情を曇らせる。
「仲間・・・・・・か」
「そう、仲間だ」
「キミは熱いね・・・・・・イッセー君。僕はね、ここのところ、基本的な事を思い出していたんだよ」
突然木場が勝手に話し出した。
「基本的なこと?」
「あぁ、そうさ。僕が何のために戦っているのか、を」
「部長のためなんじゃないのか?」
そうだと思ってた。頑なに信じていた。一人で身勝手なまでに。
それは即否定された。
「違うよ。僕は復讐のために生きている。聖剣エクスカリバー・・・・・・それを破壊するのが僕の戦う意味だ」
木場の強い決意を秘めた表情。
その時俺は、コイツの本当の顔を見た気がした。
木場Side
どしゃ降りの中、僕は傘も差さずに歩いている。
水に濡れた制服が重くなって、肌にくっ付く感触が気持ちが悪い・・・・・・でも、熱の上がった頭にはちょうどいいくらいだと思う。
・・・・・・ケンカをしてしまった、部長と。
自分を救ってくれた主に初めて反抗してしまった。『木場祐斗』としては失格だろう。
けれど、聖剣エクスカリバーへの復讐心を忘れたことなんてなかった。ちょっと学園の空気に呆けていただけだ。
仲間もできて、生活も得て、名前も与えられた。生き甲斐のも主でもあるリアス・グレモリーに貰った。
これ以上の幸せを願うのは悪いことだ。悪いに決まっている。
想いも果たすまで、同志たちの文を生きていいなんて思ったことなど・・・・・・ッ!!
異常な気配を察し、僕は瞬時に魔剣を作り出した。殺気だ!
-ギイィィィィイインッ!-
雨の中で銀光が走り、火花が散った。
殺気の方向へ体を向けた時、長剣を振るう何者かが襲いかかってきた。
相手は神父の格好をしていて、こちらに明確なほど強烈な殺気を飛ばしてきている。
「やっほ、おひさだね」
嫌な笑みを見せるその少年神父を僕は知っていた。
白髪なイカレた少年神父・・・・・・フリード・セルセン。先日の堕天使との一戦で僕たちとやりあった輩だ。
・・・・・・相も変わらず癇に障る笑みを見せてくれる。
「・・・・・・まだこの町に潜伏していたようだね? 今日は何の用かな? 悪いけど、いまの僕は至極機嫌が悪くてね」
怒気を含んだ口調で言ってみるが、彼はあざ笑うだけだ。
「そりゃまた都合がいいねぇ。すんばらしいよ! 俺っちのほうは君との再会劇に涙涙でございますよ!」
ふざけた口調は健在か。本当に、腹が立つよ。神父ってだけで憎いのにね。
左手にも魔剣を創ろうとした時、彼の振るう長剣が聖なる輝きを発し始める。
ッッ! あの光は! あのオーラは! あの輝きは!
・・・・・・誰が忘れるものか!
「神父狩りも飽きてたところでさ、ちょうどいいや。お前さんの魔剣と俺様のエクスカリバー、どちらが上か試させてくれないかね? ヒャハハハハ! お礼は殺して返すからさ!」
そう、彼の持つ剣は聖剣エクスカリバー、そのものだ。
エクスカリバー・・・・・・僕が、僕らの人生を壊した元凶が、コイツが持っていたなんて!
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
今ここで、聖剣を破壊する! 何としても!!
振り下ろした魔剣をフリードは難なく受け止めた。
「ヒャハハハハ! 随分と殺気を出すね君! そこまで聖剣が嫌? 悪魔だから? それもと・・・・・・聖剣計画で適合できなかった不良品だからかな?」
ッ!! 僕を、僕たちを・・・・・・!!
「不良品と呼ぶなぁぁぁぁぁぁ!!」
「近くでギャァギャァ騒ぐんじゃねぇよ!!」
-バキィィィィ!!-
!! 僕の魔剣が聖剣に叩き折られた。
「聖剣に対応できなかったテメェを不良品呼ばわりして何が悪い? 事実だろうが。聖剣に対応できなかった不良品風情が。みんな死んじまったくせに無様に生き延びたと思ったら今度は悪魔になったのかよ。ヒャハハハ。聖剣じゃなくて、魔剣を扱うなんて不良品らしい武器じゃねぇか」
ッ、この!
再び魔剣を創りだして斬りつけようとしたけど。
「そんな魔剣が聖剣に敵うわけねぇだろうタコがっ!!」
-ギイィイィィン! ドカッ!!ー
「がはっ!!」
剣を壊されて蹴飛ばされた僕は蹴飛ばされ、後ろに吹き飛び倒れこむ。
そこへフリードが飛び上がって、斬りかかってくる。
「死んじゃえよ不良品がよーーー!!」
魔剣・・・・・・間に合わない!
聖剣が振り下ろされる直前、僕の後ろから複数の短剣がフリード目がけて飛んで行った。
「なっ! ウゼェんだよ!!」
フリードが聖剣を振るうと、短剣がすべて壊された。あの短剣、まさか。
「後つけてみれば、厄介ごとになってるな木場」
「と、トーヤ君!!」
振り返れば、ずぶ濡れのトーヤ君が両手に短剣、干将莫邪を手にしていた。
「おっほ! テメェはあの時のクソ人間じゃねぇか! 何々? 君も俺のエクスカリバーに斬られたいの? ま斬っちゃうけどね!」
「それが聖剣エクカリバー・・・・・・随分と仰々しい剣だな。もう少しマシな剣だと思っていたんだが」
「はいはい、御託はもう聞きたくないでございやすよ。それじゃぁますは、この悪魔君から滅してあげましょうーーーーー!!」
「魔剣創造!!」
地面から多種多様の魔剣を創りだし、フリードの向け射出する。でも・・・・・・。
「だから無駄だっつってんだろうが!!」
ことごとくエクスカリバーに斬られ、霧散していく。途中トーヤ君が干将莫邪を投げつけ大剣を投影し力任せに叩き付けたけど、受け止められた。
「クソ。無駄に頑丈だな」
「ったりめぇだろうが。エクスカリバーは聖剣の中で最強と語り継がれてる伝説の聖剣だからな! 負けるわけねぇだろう!!」
-バギィィ!!-
「ッ!!」
「死ねよクソがぁっ!」
「トーヤ君!!」
大剣を壊されたトーヤ君に向かってフリードが聖剣を振り下ろす! 斬られるかと思っていたけど。
-ガキィィィィン!-
瞬時に紅い槍、魔鎗ゲイ・ボルクを顕現させて受け止めた。
「な!? ゲイ・ボルク!! 何でテメェがその槍を持ってるんだよ!?」
「俺の神器だからだよ狂人神父さんよ!!」
「イターイ!!」
受け止めていた力を抜いて、前のめりになったフリードに体当たりを食らわし吹き飛ばした。
「あーもう! クソが! 厄介な槍持ってんじゃねぇか!!」
「どうする? この場で殺り合おうってんなら容赦しないぜ?」
槍に禍々しい魔力が走る。槍の周囲だけまるで熱を持っているかのように歪んで見える。
「・・・・・・チ。止めた止めた。まさかここでそんな呪いの槍と殺り合おうなんてまっぴら御免だぜ。僕チン運は良いけど、その槍に勝てそうにないわ。ッてなわけでばいちゃ!」
懐から何かを取り出し、地面に向かって投げつけると一瞬目が見えなくなった。閃光か!
目が慣れたころにはフリードの姿は見当たらなかった。相変わらず逃げ足も速いな。
「逃げたか。斬られてねぇよな?」
「・・・・・・大丈夫だよ」
槍を消して手を差し伸べてくれたトーヤ君の手を取らず、僕は立ち上り背を向け歩き出す。
聖剣をフリードが所持してると分った以上、アイツを見つけ出し聖剣を破壊する。
「アイツと再戦すんのは止めといたほうが良いぜ」
ッ。一瞬歩みが止まる。
そのままトーヤ君は話を続けた。
「アイツが持ってるエクスカリバーはお前にとって、憎い代物だろうけど今のお前じゃ勝ち目なんざないぜ? 何か秘策でもあるのか?」
「・・・・・・別に秘策はないよ。ただ、聖剣だけは、僕の力で破壊しないといけないんだ。僕と同じように不良品として処分された同志たちの無念を晴らさないとっ」
「秘策も何もないのに聖剣を壊すのか? あまりにも無謀だ。そんなんじゃ無念を晴らすどころかただの無駄死にだ。そんなことやるのはただのバカだ・・・・・・同志の奴らもお前に復讐を遂げてほしいなんて思ってはいないと思うぞ」
「ッ! 君に何が分る!!」
僕は胸の内にあったものを抑えきれず、トーヤ君に掴みかかった。
「君には分らないだろう!! 聖剣に扱えるものを育てるために、僕たちは人生の半分を神と聖剣に費やしたんだ!! 何度も何度も辛い実験に耐え続け、神のために戦うことが幸せだと信じさせられ続けた! その結果、その結果が聖剣に対応できないだけで不良品扱い・・・・・・僕たちは処分されたんだ」
無意識のうちにトーヤ君の制服の掴んだ手に力がこもる。
「それを・・・・・・何も知らない君が、部外者が口に出すな!!」
トーヤ君を突き放した僕は、荒げた息を整える。
聞こえてくるのは雨の音。それ以外は何も聞こえない。
「悪かった。とりあえず今日の所は家に帰った方がいいぞ。今のお前じゃ確実に負ける・・・・・・それと、今のお前はリアスの下僕、騎士の木場祐斗だ。主の悲しむことはするんじゃねぇぞ」
それだけ言うと、棟夜君は背を向け歩き出した。トーヤ君が去っていく姿を見た後、体が震えた。
長時間雨に当たってたから、体が冷えているな・・・・・・今日の所は大人しく戻ろう。
僕はその場から少し早歩きで移動する。
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