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夢幻水滸伝

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第十七話 淡路合戦その十四

「ですから」
「わしと一緒におるか」
「そうです、共に船を漕ぎ出しましょう」
「天下、そして太平洋にのう」
「そうしましょう、では」
「その最初の大戦じゃ」
「進路は前に、全速前進ですね」 
 織田はまた正岡に問うた。
「そうしますね」
「そうじゃ、数や武器では劣ってもじゃ」
 このことはよく認識している、天下の中心で文化も産業も栄えている関西と四国では国力が全く違っている。
 だがそれでもだとだ、正岡は言うのだった。
「勝つ方法はあるきに」
「頭を使ってですね」
「そうじゃ、そうしたので勝てんならじゃ」
 数や装備で劣っていればというのだ。
「頭使って勝つんじゃ」
「その通りですね、では」
「全速前進、帆を思いきり掲げるんじゃ」
 正岡は満面の笑みで全軍に命じた、そしてだった。
 四国の軍勢は関西の軍勢の正面、三笠があるそちらに向かって来た。その動きは相当に速く。
 物見と神具で敵味方の状況を一瞬一瞬ごと把握しつつだ、吉川は三笠の甲板において玲子に強い声で言った。
「こちらに来ているな」
「真正面に来たんだね」
「囲まれるよりはだ」
「うって出てってことかい」
「そうだ、この三笠を攻めてだ」
「頭潰して一気にだね」
「指揮系統を混乱させてから小回りを利かせて各個撃破だな」
 吉川は敵の動きからこのことまで読み取っていた。
「そうした考えだ」
「敵も考えるね、けれどね」
「こうしたことをしてくることも想定していた」
「じゃあ手は打てるね」
「充分にだ、例えばだ」
「例えば?」
「敵がレモラを使ってきてもだ」
 この世界の海に生息している五十センチ程の大きさの魚だ、岩の様な顔をしており頭はコバンザメの吸盤の様になっている。大きさからは想像出来ないまでに重く船の底に着いてその動きを重さで邪魔をする。
「対策は考えてある」
「底から攻めてきてもだね」
「そうだ、水での戦は水の上だけでするとは限らない」
「水の中でもやるからね」
「私は人魚だ、水のことでわからないことはない」
 吉川はこの世界での自分の種族の話もした。
「水の中でも動けるしな」
「それでだね」
「そうしたこともわかる、水の中から来てもな」
「手は打てるね」
「そうだ、海図もだ」
 今開いているその神具もというのだ。
「教えてくれるしな」
「海の中のことも教えてくれるのは有り難いね」
「全くだ、何かもが手に取る様に現在進行形でわかる」
「凄い神具だね」
「望遠鏡も海の中まで見える」
 海の上だけでなくというのだ。
「何もかもがな」
「それでその神具も使って勝つ」
「そうだ、ではだ」
「敵が正面から来てるし」
「全軍でな、ならこちらも全軍で対する」 
 吉川は即断した、そしてだった。 
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