夢幻水滸伝
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第十六話 内政その十一
「宰相として」
「死刑とかのもかいな」
「死罪は宰相の処断となっています」
関西では、というのだ。
「徳川幕府が死罪は老中の裁可のものだった通り」
「あれお奉行がやってたんちゃうからな」
中里もこのことは知っていた、時代劇では奉行が死罪等を決めているが実際は評定所がどうすべきかを話し老中が評定所の断を決めていたのだ。
「あれにならったか」
「そして相当悪いものでもない限り罪一等か二等減じています」
このことも江戸時代に行われていたことだ。
「あの様にしています」
「井伊直弼さんみたいにかえって重くしていませんか」
「私はその御仁は大嫌いなので」
「嫌いも嫌いか」
「大嫌いです」
太宰は無表情できっぱりと言い切った。
「反面教師にしています」
「何かあの人好きな人おらんな」
「完全な悪役ですにゃ」
弥生も言う。
「幕末において」
「そやな、頑迷な位保守で独裁的でな」
「死罪とか蟄居連発してますにゃ」
「殺されてざま見ろって感じやしな」
桜田門外の変だ、何とこのことは殺されたその頃からの評価であるから生前からの評判の悪さもわかる。
「日本の歴史上源頼朝さんと並ぶ不人気人物やな」
「全くですにゃ」
「蘇我入鹿さんとか藤原時平さんは人間やなくなってるし」
「そうですにゃ?」
「歌舞伎で公家悪やけどな」
そうした役回りだというのだ。
「蘇我入鹿さんは不死身で藤原時平さんは牛舎に乗ったまま空飛ぶ演出あるんや」
「どっちも化けものですか」
「あの隈取血流やけど青いし」
公家悪の隈取は青いのだ。
「つまり公家悪って血が青いからな」
「生物学的でも人間でないですにゃ」
「そやねん」
「こっちの世界では青い血の種族っていないですにゃ」
「皆赤か」
「うちも赤ですにゃ」
猫人の弥生もというのだ。
「そうですにゃ」
「そうなんやな」
「うちの知ってる限りではですにゃ」
「知られていない種族ですと」
太宰もそこは言う。
「青い血の種族もいたりするかも知れません」
「そのことも覚えておこか」
「そうしましょう」
「そうですね、それでお話を戻しますが」
「罪一等か二等はやな」
「相当な重罪人以外は減じています」
そうしているというのだ。
「私は」
「井伊直弼さんと違ってやな」
「はい、幕府は元々そうしていました」
井伊直弼以外の者はと言っていい、寛政の改革の松平定信も天保の改革の水野忠邦もこのことは守った。
「しかし井伊直弼はそこを拡大解釈してです」
「重くしてたんか」
「幕府の慣例を破り」
「保守主義者でもやな」
「そうしていました」
「矛盾してるな」
中里も今の言葉は辛辣だった。
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