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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百十八話 大浦天主堂その十

「凄いですね」
「ニーベルングの指輪もそうですね」
「あれは四日ですからね」
「しかも一作一作が長いです」
 ニーベルングの指輪にしてもそうだ、特に最後の神々の黄昏は相当だ。
「その上演の間です」
「テノールの人は舞台にいって」
「歌っています」
「だから相当に難しいんですね」
「ですからワーグナーを歌えるテノールは世界に五人しかいないと言った人もいます」
「五人ですか」
「その時代で」
 また凄いことを聞いたと思った。
「満足に歌える人は」
「そこまで難しいんですね」
「そしてソプラノもです」
「難しいんですか」
「やはり低い声域で輝かしい歌を歌わないといけないです」
 テノールと同じく、というのだ。
「ブリュンヒルテやイゾルデがそうです」
「そうした役は」
「ソプラノとメゾソプラノの区分が曖昧ですし」
「メゾは低いですね」
「はい、ですがワーグナーソプラノは声域が低いので」
「その区分もですか」
「曖昧なところがあります」
 そうだというのだ。
「ですから私にはです」
「ワーグナーのメインの役は」
「今はかなり難しいです」
 ブリュンヒルテやイゾルデみたいな役はというのだ。
「歌いたいとは思いますが」
「声の問題で」
「ソプラノでも」
「蝶々さんとはまた違うんですね」
「蝶々さんも少し低めですが」
 ソプラノのその役の中で、というのだ。
「ですがそれ以上にです」
「ブリュンヒルテやイゾルデは低いんですね」
「歌う場面も多いので」
「だからですか」
「迂闊に歌うと喉に影響が出ますから」
「歌わないんですね」
「若しかすると最後まで歌わないかも知れないです」
 ワーグナーのそれはというのだ、そうした役をしながらだった。
 僕達は中華街でお土産を買った、僕は小野さん達だけでなく親父のものも買ってだ。そうしてからだった。
 中華街を後にしてそしてだ、次は大浦天主堂に向かった。大浦天主堂に行くにも坂道があった。その坂道を上っていってだ。
 僕は汗をかいてだ、ついこんなことを言った。
「ここまで坂道が多いと」
「歩くこともですね」
「辛いですね」
 こう奥さんに答えた。
「いや、本当に」
「そうですね、ですが」
「これが長崎ですね」
「そうです」
 奥さんは僕に穏やかな声で話してくれた。
「そうした場所です」
「そうですよね、坂道が多いのが特徴ですね」
「それを楽しむこともです」
「結果としてですね」
「長崎に来るということです」
「そうなりますね」
「はい、ですからここもです」
 大浦天主堂、ここもというのだ。しっかりとした形のその天主堂が見えてきた。 
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