| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百十八話 大浦天主堂その五

「壊れてしまいます、肝心のものが」
「整理体操と一緒ですね」
「そうです、それを忘れるとです」
「後が大変ですね」
「壊れるので」
 だからだというのだ。
「それは忘れないです、絶対に」
「指が」
「そうです」
「疲労骨折とか」
「はい、実際になりますので」
「ピアノでもですか」
「そうなります」
 ピアノを弾く指、それがというのだ。
「ですから気をつけています」
「そうなんですね」
「他にもありますし」
「ケアをしていないとですね」
「悪影響が出ます」 
 どうしてもというのだ。
「スポーツと一緒です」
「ケアは大事なんですね」
「そうなのです」
「だからいつも手を大事にされているんですね」
「そうです、怪我をしないで」
「ケアもですね」
「気をつけています」
 その手袋で包んだ手を見つつだ、僕に話してくれた。とにかく早百合さんの自分の手に対する気遣いは相当なものだ。
「一生ピアノを弾いていたいですから」
「ずっとですか」
「指がないと」
 もっと言うと手首全体がだ。
「それだけで」
「怖いですから」
「私も喉が大事ですから」
 裕子さんも言ってきた、ここでまた。
「気をつけていますし」
「芸術をしているとですね」
「私達は身体が楽器です」
 裕子さんはこうも言った。
「まさに」
「お身体自体が」
「喉や手が」
「だからですか」
「いつも大事にしています」
「勿論ピアノも大事です」
 早百合さんはこうも話してくれた。
「ですからピアノの調律も出来ます」
「ピアノ線とかの」
「はい、出来ます」
「あれは確か」
 ピアノの調律と聞いてだ、僕は早百合さんに聞き返した。
「特別な技術ですよね」
「ピアノを知らないと」
「そうでよね」
「難しいものがあります」
「それも詳しく」
「はい、ピアノを弾けてもです」
 それでもというのだ。
「調律が出来る人はです」
「少ないですか」
「そうです」
 こう話してくれた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧