八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百十八話 大浦天主堂その三
「それも幸せに」
「だからですね」
「買ってそれで送ります」
イタリアまでだ。
「もう住所もわかっていますし」
「ヴェネツィアの」
「そこまで送ります、ただ」
「ただ?」
「何かヴェネツィアですから」
イタリアの中でも屈指の有名な都市だ、しかもただ有名なだけでなく奇麗なことでも評判だ。水の都と言われるだけあって。
「僕も行きたいですね」
「そうもですか」
「思います」
「ヴェネツィアですか」
「そう思いました」
「そうですね、そう言われますと」
裕子さんもだ、遠い目になって言った。
「私も行きたいです」
「そうですか」
「歌う身としてもミラノやジェノヴァ、ローマと並んで」
「あの街もですか」
「行きたいです」
そう思っているというのだ。
「あの街も歌劇場があり歌劇の舞台にもなっていますので」
「歌劇のですか」
「ヴェルディのシモン=ボッカネグラという作品の舞台です」
「ヴェルディ、椿姫の」
「あの人の作品の一つです」
そうだというのだ。
「ヴェルディの作品の中では地味ですが」
「椿姫とかと比べると」
「はい、どうしてもそうした位置ですが」
それでもとだ、裕子さんはカンフー着黒いそれを見つつ僕に話してくれた。
「名曲も多い」
「そうした作品ですか」
「そうです」
まさにというのだ。
「あの作品は」
「そうですか」
「舞台の演出によっては非常に素晴らしい作品になります」
「そう言われますと」
「御覧になりたいですね」
「はい」
僕もこう答えた。
「そう思いました」
「では八条学園の歌劇場で上演される時があれば」
「御覧になられますか」
「そうさせてもらいます」
「そうされて下さい、名作であることは確かです」
だからだとだ、裕子さんは僕に話してくれた。
「ですから」
「それじゃあ」
「ヴェルディは素晴らしい曲が多くて」
早百合さんも僕に話してくれた、気付いたら早百合さんも僕の傍に来ていてくれていた。奥さんもそうしてくれている。
「一回弾きはじめると何十曲にもなります」
「何十曲ですか」
「はい、オーケストラでもです」
それでもというのだ、ピアニストの早百合さんでも。
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