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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百十七話 ある晴れた日にその四

「他の曲もですが」
「プッチーニの曲も」
「そして歌ってもいます」
 僕にだ、そのある晴れた日を聴きながら述べた。
「喉に気をつけながら」
「ああ、歌手ですから」
「やはり喉です」
「大事にしないといけないですね」
「喉に何かあったと思いますと」
「一番怖いですか」
「そうです」
 裕子さんとしてはだ、そしてだ。 
 裕子さんは早百合さんを見てだ、こうも言った。
「早百合さんと同じですね」
「そうですね、私も手に何かあれば」
「その時を思うと」
「怖いです」
「だからですね」
「いつも手袋をしています」
 今もだから凄い、とにかく早百合さんはピアノを弾いたりする時以外はいつも手袋をして手を守っている。それも厳重に。
「夏でも」
「暑くても」
「そうしてます」
「私も夏はしませんが」
「マフラーをですね」
「マスクもします」
 そちらもというのだ。
「そちらも」
「やはりそうですか」
「特に冬です」
 この季節はというのだ。
「注意しています」
「喉をガードしていますか」
「慎重に」
「やはりそうした場所は大事ですね」
「そうですね」
「私もです」
 早百合さんはその革手袋で包んだ両手を顔に寄せて話した。
「こうしてです」
「ガードされていますね」
「何かあれば」
 ピアノを弾くその手にだ。
「そう思うと」
「それだけで怖いですね」
「ですからずっとこうしています」
「そうなのですね」
「ピアノをはじめてから」
 何でも物心ついてすぐにだ、早百合さんはピアノをはじめたらしい。小学校中学校といつもコンサートで賞を取っていたらしい。
「そうしています」
「ピアノを弾いたりする時以外は」
「お料理もしますが」
「その時もですか」
「別の手袋をします」
 そうしているというのだ。
「そして手を守っています」
「手に何かあれば」
「包丁で切ると思うと」 
 何か恐怖症めいたものを感じた、どうも早百合さんはピアノを弾く両手に何かあることを極端に恐れている。そのことは前から思っていたけれどその通りだった。 
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