八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百十七話 ある晴れた日にその三
「彼もカリスマがあったからこそです」
「ドイツ人に圧倒的に支持されていたんですね」
「誰からもです」
それこそだ。
「九割近い支持を得ていました」
「凄い人気だったんですよね」
「外見は平凡でしたが」
背は実は普通位だったがよく見ればむしろかなり怖い顔だ、あのチョビ髭がないと眼光が異常に鋭いので相当に怖い顔になる。
「しかし」
「それでもですね」
「ヒトラーもカリスマがあったので」
「あそこまでなったんですね」
「そうです、そしてカラスもです」
「カリスマがあったので」
「世紀の歌手になったのです」
「技量もありましたよね」
僕は裕子さんにカラスのそのことを尋ねた。
「やっぱり」
「はい、忘れられていた作品を何作も復活させた程です」
「歌うには難しくてですか」
「そうしたことが出来た程です」
「技量もあったんですね」
「しかし後にカラスを見てカラス以上の技量を備えた歌手も出ました」
聞いていて一体どんな歌手か想像出来なかった、噂に聞くカラスの技量は今裕子さんが実際に言っている。
「その技量は相当で祖国オーストラリアでも有名でした」
「オーストラリアの人ですか」
「その人は」
「そうですか」
「しかしその歌手よりもです」
「カラスはカリスマがあったんですか」
「そうでした」
とにかくカリスマが他の歌手の追随を許さなかったとのことだ、こればかりは望んでも得られないそれをだ。
「カラスのカリスマはそうしたものですか」
「そうです、しかしです」
「蝶々さんにはですか」
「三浦さんと比べますと」
「合わないですか」
「カラスはベルリーニやドニゼッティです」
こうした音楽家の作品が合っているというのだ。
「一番と言われますと」
「そうなんですか」
「蝶々さん等の役はどうしてもです」
「合わなかったんですか」
「実際に舞台で歌ったことは少ないそうです」
「あっ、そうなんですか」
「やはり合わなかったのだと思います」
舞台で歌ったことが少なかったこともというのだ。
「やはり」
「そうですか」
「はい、それでなのですが」
「この曲はですか」
「何度聴いてもです」
ある晴れた日のこともだ、裕子さんは話してくれた。
「心が落ち着きます」
「そうですね」
「はい、ですからよく聴いています」
「いつもですか」
「他の曲も聴いていますが」
「この曲もですね」
「聴いています」
そうしているというのだ。
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