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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百十六話 長崎の街その四

「ですが」
「関西の他の私鉄は大阪ですね」
 本社のその場所はだ。
「だから難波や梅田から線路がはじまっていて」
「そちらもありますので」
「鉄道が充実していて」
「路面電車よりもでした」
「そういうことですか」
「先程もお話しましたがバスもあります」
 これもだった。
「やはり市全体にあります」
「競争相手が多くて」
「結果としてでした」
「わかりました」
 僕も頷いた。
「大阪からどうして路面電車がなくなったのか」
「そうした理由です」
「時代の進歩ですね」
「そうなりますね」
「その結果必然としてですか」
「消えてしまいました」
「当然の流れですか」
 遠い目になってだ、僕は奥さんに応えて言った。
「大阪の」
「そうなります」
「大阪の地下鉄好きなんですよね」 
 僕個人としてはだ、あの便利さは何といってもいい。すぐに大阪のあらゆる場所に行けるとても素晴らしいものだ。市営バスも同じだ。
 けれどだ、その為に路面電車がなくなったと思うと。
「それでも残念でもありますね」
「そう言われますか」
「はい、どうしても」
 また奥さんに言った、そしてだった。
 路面電車から観える長崎の街並みを楽しんでだ、奥さんにこうも言った。
「じゃあ今は」
「こうしてですね」
「路面電車を楽しませてもらいます」
「長崎のですね」
「そうさせてもらいます」
 是非とだ、こう言った。
「長崎ならではのものですから」
「それがいいと思います」
「そこにあるものを楽しめばいいですね」
「ありのまま」
「そうですね」
 僕は奥さんに笑顔で応えた。
「それじゃあ」
「私もそうしていますので」
「奥さんもですか」
「その大阪のことも思い出します」
 大阪の路面電車をだ。
「ですから」
「そうですか」
「こののどかな感じがいいです」
「何か落ち着きますね」 
 それが路面電車のいいとことだ、速度はそれなりに速い筈だけれどのどかに進んでいく。その感覚が、だ。
「そして落ち着いて景色も観られる」
「それもですね」
「いいです、ではこうして」
「グラバー園まで行きましょう」
 奥さんが言ってくれてだ、僕達はグラバー園の最寄りの駅まで路面電車で行った。のどかな感じで進んでいって。 
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