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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百十六話 長崎の街その三

「何といいましても」
「だからご存知でも楽しみですか」
「はい」
 その通りだ、僕はこれからのことが楽しみで仕方がない。
 それでだ、裕子さんにあらためて言った。
「一緒に楽しく回りましょう」
「それでは、ただ案内はですね」
「もう知ってますから」
 それでだった、このことについては。
「大丈夫です」
「そうですね」
「はい、ですから一緒に楽しく回っていきましょう」
「それではその様に」
「そしてまずは」
「乗りましょう」
 路面電車、それにだ。
 僕達は長崎名物の一つである緑の路面電車に乗った、小さいけれどその大きさがまた愛嬌がある感じだ。
 僕は裕子さん達と路面電車に乗ってだ、電車の中から街中を観つつ一緒にいる裕子さんに言った。四人並んで一つの席に座っている。
「神戸や大阪にもあったらいいんですが」
「路面電車が」
「昔は大阪にあったらしいですね」
「はい」
 奥さんが答えてくれた。
「市内に走っていました」
「そうだったんですね」
「かなり昔ですが」
 それでもというのだ。
「走っていました」
「それが廃止されたんですか」
「車が増えたので」
 そのせいでというのだ。
「市営バスも発達しましたし、地下鉄も出来て」
「ああ、地下鉄ですか」
「そうです」
「大阪の地下鉄は凄いですからね」
 かなり充実している、それこそ大阪二十四区はおろか市街にまで通っている程だ。ただ線の交差が複雑で慣れていないと迷ってしまう。
「あそこは」
「そうしたことがありまして」
「大阪の路面電車はなくなったんですね」
「そうです、何十年か前に」
「残念ですね」
「残念ですが仕方がありません」
 奥さんは何処か達観した様に僕に答えた。
「こうしたことも」
「そうですか」
「はい、時代の流れです」
「大阪市の」
「その結果ですから」
 仕方ないというのだ、路面電車の消失は。
「その分地下鉄が発達したと思うべきでしょうか」
「地下鉄ですね」
「あちらもかなりなので」
「大阪市の地下鉄は確かに凄いですね」
 充実が半端じゃない、本当に二十四区のあらゆる場所に行ける。これだけ便利な足はそうは存在しない。
「あれがあるから路面電車はなくなった」
「そうなるかと、それに」
 奥さんは僕にさらに話してくれた。
「環状線もあれば大阪の私鉄もありますから」
「大阪を本社とした」
「八条鉄道は神戸が本社ですが」
 日本全土に路面を持つ第二の国鉄とまで言われたこともある鉄道会社だ。今も八条グループの基幹企業の一つだ。 
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