八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百十四話 ワインとデザートその五
「確か」
「えっ、金色?」
「ベトナムでそう聞いたわ」
「ええと、金色って」
僕はダオさんの言葉に戸惑った、紅葉は知っている、この目でも見てきた。けれど山が金色になるなんて聞いたことも見たこともなくてだ。
どういうことかと戸惑った、だがここで小夜子さんが言った。
「銀杏ですね」
「その木の葉がなの」
「はい、近くから見ると黄色ですが」
それがいうのだ。
「遠くから見ますと」
「金色なのね」
「そうなります」
「じゃあ日本の秋は山が金色にもなるっていうのは本当なのね」
「そうです、色々な木の葉がそうした色になります」
「紅や金に」
「そうなります」
「それね、ダオベトナムで聞いて夢みたいだって思ったのよ」
このこともというのだ。
「そんな嘘みたいなお話あるのかって」
「はい、日本では」
「そうなのね、じゃあ」
「秋になれば」
「そのことも楽しませてもらうわ、今も充分楽しんでるけれど」
それでもというのだった。
「これからも楽しめるのね」
「そうです」
「楽しんでばかりね」
微笑んでだ、ダオさんはこんなことも言った。
「日本に来たら」
「そう思われますか」
「実際にそうじゃない」
微笑んでだ、小夜子さんに顔を向けて言った。
「ダオは」
「楽しみ過ぎて」
「後で何かありそうよ」
「いえ、それはありません」
楽しんだ後で報いなり返ってくるものがある、こうしたネガティブな考えは多くの人にあって明るいダオさんにもあったみたいだ。
けれどだ、小夜子さんはその考えについてこう言った。
「決して」
「そうなの?」
「人生の楽しみは無限です」
「幾らでも楽しめるの」
「その人が望めば」
「そうだったの」
「はい、そして」
小夜子さんはさらに言った。
「不幸もありますが」
「そっちもなの」
「やはり無限で」
「幾らでもなの」
「起こり得るものです」
「その人それぞれに決まってないの」
「そして何を幸福と思い不幸と思うか」
それもというのだ。
「これは人それぞれなので」
「ううん、そうなの」
「ですから幸福の後で不幸が来るかといいますと」
「そうじゃないのね」
「私はそう思いますが」
「そうなの」
「否定しきれない幸福と不幸はあります」
その双方はというのだ。
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