ハイスクールD×D/EXTELLA
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戦闘校舎のフェニックス
合宿前半
「ハァーハァー」
俺は激しく息を切らせ、尋常じゃない量の荷物を背負っていて山道を歩いていた。
「やっほー」
『やっほー』
どこからか誰かの声が木霊してくる。ちくしょう、どこぞの登山者め。気楽なもんだぜ。
今、俺は山にいる。部長が山へ修行しに行くというので連れてきた。
それは昨日のことだった。
「よろしいですね?」
ライザーが帰った後、グレイフィアさんと部長がゲームに向けて細かい打ち合わせをしている。
「期日は10日後といたします」
「10日後・・・」
「ライザー様とリアス様の経験。戦力を鑑みて、その程度のハンデはあって然るべきかと」
グレイフィアさんの提案に、部長は苦い表情を浮かべた。
「悔しいけど、認めざるを得ないわね。そのための修行期間として、ありがたく受け取らせていただくわ」
・・・ということになり、修行を山で行うことが決まった。
身支度を済ませた俺は、すでに集まっていたみんなと魔方陣で山のふもとまで転移した。
空は快晴。周囲には自然豊かな木々が生い茂り、小鳥が鳴いていた。山の風景としては最高だろう。
・・・だが問題はこの斜面だ。土肌の山道を歩くたび体力を奪っていく。
「ほらイッセー。早くなさい」
遥か前から部長が激励を飛ばしてくる。部長の隣にはアーシアと朱乃さんがいる。アーシアは俺を心配そうに俺を見てる。
「・・・あ、あの。私も少し荷物を」
「いいのよ。イッセーはあれくらいこなさないと強くはなれないわ」
二人の会話が聞こえてくる。ありがとうアーシア。鬼ですね部長。
・・・つーか、この荷物は無理ッスよ、部長、重すぎる。
俺の背中には巨大なリュックサック。さらに肩にまで荷物をかけていた。俺の荷物プラス部長の荷物、更に朱乃さんの荷物まで持たされている。
これも修行の一環らしいが、目的地に着くまで死にそうです。何が入っているんだ、これ。
「部長。山菜を積んできました。夜の食材にしましょう」
「くっそぅ。木場の奴見せ付けやがって・・・」
そう言いながら涼しい顔で木場が通り過ぎていく。奴も俺と同じリョックサックを背負っているのに苦もなくすいすい山道を登っていく。
毒づく俺だが、後ろから来た棟夜を見て絶句した・・・。
「黒歌。何故自分の足で歩かないんだ?」
「歩きつかれたから肩車してにゃん♪」
「ハァ・・・まぁ黒歌はいいとして、小猫は何故だ?」
「姉さまだけ・・・ずるいです」
肩掛バックに黒歌を肩車し、さらに俺の倍以上のリュックサックを背負った小猫ちゃんをおんぶして棟夜が登って行った・・・マジかよ。棟夜って確か人間だよな? 神器持ちの・・・ッてか、負けてらんねぇ!
「うおりゃあぁぁぁぁぁl」
俺は全身に力を入れて一気に山道を駆け登っていく! 死ぬ! マジで死ぬ!
こんなことを何度も繰り返し、俺たちは目的地の別荘にたどりついた。
棟夜side
ウザ鳥、ライザーとの勝負を控えた10日間。この期間をリアスは修行にあて下僕の強化を図るそうだ。そのため山にあるグレモリー家所有の別荘に来ていた。
普段は魔力で隠れ、人前には現れない仕組みになっていて、今日は使用するので姿を現している。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
・・・別荘前に一誠がうつ伏せに倒れこんでいた。無茶し過ぎたっつうの。
「わぁー! 素敵です!」
「さあ。中に入ってすぐに修行を始めるわよ」
修行ときいた瞬間、一誠は跳ね起きリアスを見る。
「修行ーッ!? やっぱり部長は鬼です」
「悪魔よ」
微笑を浮かべながら言い、別荘に入っていく。中に入ると木造独特の木の香りが鼻に入り込んできた。
リビングに荷物を置き、リアス達は二階に上がり俺たちは一階で着替える。
着替えの最中、一誠が木場に話しかける。
「なぁ木場。お前さ、前に教会で戦ったとき、堕天使や神父を憎んでるって言ってたけど、アレって」
「・・・イッセー君もアーシアさんも、部長に救われた。僕たちだって似たようなものなのさ。だから僕たちは、部長の為に勝たなきゃならない・・・ね?」
「ああ! もちろんだぜ。絶対に!」
「お前ら、さっさと着替えろ。リアス達はとっくに着替え終わって外に出てるぞ」
二人が話し込んでる間、着替え終え外で待つ。
二人が出てくると、リアスは笑みを浮かべながら言う。
「さて、修行開始よ」
レッスン1 木場との剣術修行
「うおりゃーーっ!! よっ! はっ!」
「そうじゃない。剣の動きを見るだけじゃなく、視野を広げて相手と周囲を見るんだ」
俺の前では、木場と一誠が木刀を持って剣の修行をしている。一誠は力任せに振るうが、木場は軽快に躱し、いなしたりしている。
-バシッ-!
隙を見て木場が一誠の木刀が叩き落とす。
「さすが騎士・・・ウガッ!」
「ほら。油断しない」
一撃を頭に貰いうずくまる。今のは痛いな。
「そこまで! 次はトーヤ、あなたが裕斗とやってみてちょうだい」
次は俺らしい。一誠と交代し、木刀を持って木場と相対する。
「つぅ~。アイツ容赦ないな」
「大丈夫ですか、イッセーさん」
一誠はアーシアから治療を受けていた。俺は木刀を正面に構える。
「行くよ。トーヤ君」
「いつでもいいぞ」
言うなり互いに飛び出し鍔迫り、同時に後方に弾け高速で斬りあう。
斬りあって分かったが、魔力強化なしでは力では俺が上で速さでは木場のほうが上だった。そして何度目か分からない程打ちつけた所で、木刀が砕け散った。
木場は下がろうとしたが、俺は残った腕を掴み投げ飛ばす。
「うわッ!」
地面に打ちつけられる前に受身を取り逃げようとしたが、俺の方が早く近づきマウントを取り拳を顔面スレスレで止める。木場は驚いていたが、何時もの笑みを浮かべる。
「・・・参ったよ」
木場から離れる。それを見たリアスが声をかけてくる。
「お疲れ様。裕斗、戦ってみてどうだった」
「正直言って、トーヤ君はとても強いです。斬りあって分かりましたが、速さでは僕が勝っていましたが、力では完全に負けていました。木刀が砕け散った時は、下がろうとしたんですけどそれよりもトーヤ君の動きが早く、投げられてしまいました」
木場が話しているうちに砕けた木刀を集める。
「ありがとう裕斗。トーヤ、あなたは何かあるかしら」
「木場の剣の技量は凄まじかった。だが、速さはあっても力が足りなかった。速さだけでの剣では限界がある。自分より強い奴を倒すにはもう少し技術が必要だな」
「そう言われるとキツイな」
苦笑いを浮かべる木場。
レッスン2 朱乃との魔力修行
「魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集めるのです」
朱乃から説明を受け、一誠は腕を突き出し力む。
「んん! うぐぅ~!」
「意識を集中させて、魔力の波動を感じるのですよ」
「出来ました!」
直後、アーシアが手のひらに魔力の塊を作り出していた。緑色の淡い魔力が野球ボール程度の大きさだ。
「あらあら。やっぱり、アーシアちゃんは魔力の才能があるのかもしれませんわね」
「あ・・・まぁ。アーシアが強くなるなら、それならそれで」
「うふふ。イッセー君も頑張れば必ず出来ますわ。それでトーヤ君は・・・」
朱乃は俺の方を見るなり驚いていた。それもそうだ。俺はすでに小さいながら、手のひらから炎や雷、風の渦を生み出しているからだ。
「トーヤさん・・・凄いです」
「あらあら。まさかここまで出来てるとは思いませんでしたわ」
「あ・・・アーシアのみならず、棟夜にまで負けた」
流石に一誠も落ち込んでいたが、俺は小さい頃か続けてたからな。
「こればかりはひたすら練習するしかねぇよ。俺はガキの頃からずっと練習を続けてたからな、別に落ち込む必要はどこにもねぇよ。こんなの大したことじゃねぇよ」
「大したこと・・・俺からしたら十分凄いんだが」
「お前も努力すればいずれ出来るさ。頑張れよ」
「それなら、トーヤ君はアーシアちゃんに先程の魔力操作を教えていただけますか? 私はイッセー君を教えるので」
「分かった。よろしくな、アーシア」
「は、はい! よろしくお願いします、ユウさん!」
教えるのが二人に増え一誠は朱乃、俺はアーシアを教えることになり修行を続ける。
「そうじゃないアーシア。無理に俺と同じような行為をするな。お前のペースでやればいい」
「は、はい!」
「イッセー君、力み過ぎですわ。魔力源流はイメージ。頭に浮かんだものを具現化させることが大事なのですよ」
「はい! うぬぬぬ!・・・出来た!! って小さい」
一誠のほうへ視線を向けると、手のひらに米粒程度の魔力を具現化させていた。
何事も努力だ一誠。
レッスン3 小猫との組み手
「ぬががああああああ」
-ドゴッ!-
「ぐふっ!」
小猫に果敢にかかっていくが、吹っ飛ばされ巨木にぶつかっていた。
「・・・弱っ」
「そういうな小猫。一誠は格闘技の一つも知らないんだ」
「くっそぅ。まだまだーー!! ゴハッ!」
立ち上がり飛び掛るがかわされ、後ろ回し蹴りを喰らいそのまま寝技を貰う。
「ぬがぁぁぁぁぁぁッ!!」
「打撃は体の中心線を狙って、的確かつ抉り込むように打つんです」
寝技を解いた小猫は俺の方を向き拳を構える。
「次は棟夜先輩です」
「ん。OK」
俺は何気なく構えると、小猫が攻撃してきた。
「えい・・・やあ・・・とう」
顔、足、腹と重点的に狙ってくるが、分かりやすい。
顔を狙ってきた拳に殴られる・・・フリをしてスリッピング・アウェーで避ける。
「ホラ」
「あ・・・」
体勢が崩れた隙つき、足を払う。
「小猫。体の中心線を狙いたいなら、もっと細かい技で相手を圧倒し、スキが見えたら打ち込め。そんなんじゃ俺には当たらない」
「むぅ・・・イッセー先輩。もうワンセットお願いします」
「こ、小猫ちゃん・・・何か怖いんだけど」
「問答無用です」
「ギャアアアアアアッ!!」
この後、一誠は小猫の気が済むまでサンドバックになった。・・・乙。
レッスン4 調理
「今度は魔力を使って・・・」
「お料理ですか?」
壮絶な修行を終えた一誠はエプロンを身につけ、アーシアと一緒にキッチンにいる。ちなみに俺と黒歌もいる。
「もちろん出来る範囲で構わないわ。じゃ、頑張ってね」
リアスはそう言うとキッチンを出て行った。魔力で料理か・・・初めてだな。
台所に置いてある材料から見て・・・結構な量だ。半年分はあるんじゃないかって思う量だ。
・・・まぁこれの殆どが小猫の腹の中に消えるんだろうけどさ。
「早速作るか」
「にゃ♪」
「はい」
「おう!」
俺はフライパンに肉を置いて魔力で焼き、アーシアは鍋に入ったお湯を沸かせ、黒歌は川で釣ってきた魚を炙る。
初心者の一誠は簡単な野菜、ジャガイモやタマネギの皮を剥いてもらうんだが・・・。
「ぬ~・・・ハァ。やっぱ上手くいかねぇ」
一個も剥けてなかった。仕方ない、手伝うか。
手伝いに行こうとした時、一瞬でタマネギの皮がバラバラに剥けた。本人も唖然としていて、ジャガイモを手に取ると同じように剥けた。
「へぇ~。ジャガイモも楽勝じゃん」
「すごいです一誠さん!」
「ふっ。さっきは調子が悪かっただけで、これが実力さ」
・・・なら今までの修行は何だったんだい?
口には出さないが心で言う・・・だが何故急に出来るようになったんだ?
「これって、前にも一度あったような・・・」
一誠が思い出す仕草をすると、新しいタメネギの皮も剥けた。
「! そうだ。あの時、初めて神器が発動したときだ」
そう言うと不意にタマネギとジャガイモの皮を剥いて・・・おい!
「そうか。これは! もしかして! 俺は無敵になれるか・・・イテ!」
「やめろバカ」
一誠の頭を叩くが遅かった。既にキッチン台や床には皮の剥けたジャガイモと玉ねぎが転がっていた。
「これ、どうするんでしょう」
「・・・勿体無い!」
「どうするにゃ!」
「あ・・・」
ハァ、調子に乗るとすぐこれだ。
「うおおおおお! 美味ぇぇ! マジで美味い!」
一日修行を終えた俺たちは、居間で夕食をいただいていた。
テーブルには豪華な食事。木場が採ってきた山菜はおひたしにした。
メインはカレー。肉料理は熊と猪。これは俺が山道を走ってるときに偶然居合わせた時に仕留めたものだ。存外弱かった。
魚料理は、リアスと黒歌が川で釣ってきたものを塩焼きにしていただいている。
他にも、一誠が全部剥いたジャガイモと玉ねぎを使ったポテトサラダや肉じゃが、オニオンスープやカレーに使用した。余分にあまった野菜は冷蔵庫に入れてある。
「美味しいわね。これ全部あなた達が作ったの?」
「肉料理とカレーは俺。スープはアーシア、魚と肉じゃがは黒歌、ポテトサラダは一誠と分担して作った」
「あらあら。何だか負けた気がしますわ」
「美味しいです・・・姉さま」
「ありがとう白音♪ おかわりもたくさんあるから食べるにゃ」
「アーシアも料理が上手くなったな」
「そ、そうですか? 嬉しいです」
「それにしてもイッセー君も凄いね。料理作れたんだ」
「バカにしてんのか木場!?」
等、修行後みんな楽しく会話したり賑やかな夕食になった。
正直これだけの量を一夜で食べきれるのかと思ったが、小猫のおかげで何とかなった。
食事の後片付け後、お茶を飲みながらリアスが一誠に訊く。
「さて、イッセー。今日一日修行してみてどうだったかしら?」
「はい・・・俺が一番弱かったです」
「そうね。それは確実ね」
ハッキリと告げる。
「朱乃、裕斗、小猫にトーヤはゲームの経験がなくても実戦経験が豊富だから、感じを掴めば戦えるでしょう。あなたとアーシアは実戦経験が皆無に等しいわ。でも、アーシアの回復。あなたのブーステッド・ギアだって、もちろん貴重な戦力よ。相手もそれを理解しているはずだから、仲間の足を引っ張らないよう、最低でも逃げる位の力はつけてほしいの」
「了解っす」
「はい」
一誠とアーシアが返事をすると、リアスが立ち上がる。
「さて、食事も済んだし、お風呂に入りましょうか」
「! おーふろーーッ!!」
風呂という言葉に反応しイスから立ち上がる。さっきの気落ちした感じは消え去った。
ホントそういうのには過剰に反応するよな・・・ある意味凄いよ。
「僕は覗かないよ、イッセー君」
「覗くなら一人で覗いてくれ」
「バッ! お前らな!」
「あらイッセー。私たちの入浴を覗きたいの? なら一緒に入る? 私は構わないわよ」
・・・それで良いのかリアス? 大事なゲームの前なのに。
「朱乃はどう?」
「うふふふふ。殿方の背中を流してみたいですわ」
「えええええ!?」
一誠が困惑の表情を浮かべながらも若干嬉しそうにしている。
あの二人がいたら血の涙を流してることだろうな。
「アーシアは大丈夫?」
顔を赤くし俯きながらも小さく頷く。恥ずかしかったら言えばいいのに。
最後に小猫と黒歌が残ったが・・・。
「小猫と黒歌は?」
「イヤです」
「イヤにゃ」
断った。それが普通の反応だ。
「じゃあ無しね。残念、イッセー」
「ガハッ」
アホ面で固まった一誠は椅子から転げ落ちた。
「・・・覗いたら恨みます」
倒れこむ一誠に追い討ちを食らわす。これでやったら本当のマヌケだな。
「あ!でも、私はトーヤだったらいいにゃん♪」
・・・はぁ!?
「私も・・・トーヤ先輩ならいいです」
「わ、私もトーヤさんとなら入ってもいいです」
「あらあら。それなら私もトーヤ君と入ってみたいですわ」
・・・逃げよう。俺は耐えられなくなりその場から駆け出し風呂場に逃げる。
「羨ましいぞ棟夜ぁぁぁ!」
「どこがじゃボケぇっ!!」
「イッセー君。僕と裸の付き合いをしよう。背中流すよ」
「うっせぇぇぇ! マジで殺すぞ木場ぁぁぁぁぁ!」
夜の別荘に響く怒りの慟哭。
あの後、騒ぐ一誠を鎮め風呂に入っているのだが、諦めが悪いのか反対側の風呂場を覗こうと壁に穴が開いていないか探している。
「イッセー君、そんなことしてなんの意味が・・・」
「黙ってろ! これも修行のうちだ!」
「イッセー君。透視能力でも身につけたいのかな?」
「どうせ下らないことだ」
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