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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第4章:日常と非日常
  第110話「体育祭」

 
前書き
少し日にちが過ぎて体育祭。
この頃、9月に運動会や体育祭を行う学校が減っていますが、この小説では普通に9月に行います。
 

 




       =優輝side=





「宣誓!我々は、スポーツマンシップに則り―――」

 生徒全員がグラウンドに集まる中、代表者が宣誓の言葉を言う。
 本日は聖祥大附属小学校の体育祭だ。お誂え向きに天気も晴れ渡っている。



「最初は100m走だっけな?」

「そうだぞ。午前に1,2年の50m、3,4年の80m、5,6年の100m、玉入れ、1,2年の大玉転がし、3,4年の台風の目、5,6年の二人三脚、大繩、綱引きだ。午後は応援合戦をしてから、障害物、全員リレー、1,2年、3,4年のダンス、最後に5,6年の組体操だ。」

「おおう、全部覚えてるのか...。」

「分かりやすい順番だったからな。」

 開会式が終わり、自身のクラスのテントに戻りながら僕と聡でそんな会話をする。

「お?玲菜、どうした?」

「どうしたって...用がなければ来ちゃいけないって言うの?」

「いや、だってここ一応赤組だぞ?」

 やってきた玲菜に、聡がそういう。
 ちなみに、僕と聡は赤組、玲菜は青組だ。

「別に競い合ってるだけなんだからいいだろ。ほら、行ってこい。」

「ちょ、優輝、押すなって。」

「....ふん...。」

 聡に会いたいがために来たのだろう。そう思って僕は聡の背中を押す。
 気づいてくれない聡に、玲菜は不機嫌そうだしな。

「じゃ、僕はこれで。」

「えっ、優輝!?」

「ごゆっくりー。」

 気を利かせて僕はすぐにそこから立ち去る事にする。
 戸惑ったままの聡を放置して、僕は少し歩き回る事にした。

「優輝君、どこに行くの?」

「ん?ちょっと親の所に。まだ集合まで出番があるしね。」

「私も行っていい?」

「いいよ。」

 司もついてくる事になり、とりあえず父さんや母さんの所に行くことにする。
 そう、来てるのだ。さすがに僕の親だとばれないようにしているが。
 ちなみに、椿と葵も来ている。アリシアも部活後に来るらしいな。

「っと、いたいた。」

「皆固まってるね。」

 どうやら皆で場所取りをしたらしく、士郎さんやプレシアさん達もいた。

「...随分賑やかなのね。」

「去年は山菜とか採りに行ってたからねー。一種のお祭りみたいなものだよ。」

 そう、椿と葵は体育祭を見に来るのは今回が初めてだ。
 父さんと母さんも僕が一年の時以来なので、ヘマはしないようにしないとな。

「優輝はまずどれに出るんだ?」

「100mが全員参加だからまずはそれかな。個人だと二人三脚と障害物。どこにいるかは椿と葵なら見つけやすいんじゃないかな。」

「み、見つけやすいってどういう事よ。」

「えっ?素で目がいいからって事だけど....?」

「っ~~!な、なんでもないわ。忘れて。」

 なんか勘違いしていたようで、椿は顔を赤くする。

「司、彼氏に良い所見せろよ?」

「もう!まだそんなんじゃないってば!」

「“まだ”なのね?それに、この前負んぶされて送られてきたじゃない。」

「っ、その事は掘り返さないでよ!」

 司も司で、両親にからかわれて顔を赤くしていた。

「...やりすぎないわよね?」

「まぁ、素の身体能力は異常って程でもないし、大丈夫さ。」

 素の身体能力は恭也さんにそれなりに劣るぐらいだ。...あ、充分異常か。

「...ホントに大丈夫?」

「....手加減する事にするよ。」

 そんなこんなで、集合の時間まで会話して時間を潰した。







       =椿side=





「....いたわ。」

「いたね。」

 100m走とやらのために集合した優輝を見つける。葵も見つけたらしい。

「どこだい?」

「あそこだね。後ろのグループ...6年生の場所。その右から2列目の20番目だね。ちょうど優ちゃんのクラスの最後だよ。」

「....あそこね。」

 葵が光輝と優香に教え、二人も見つける。

「やはり椿がいると見つけやすいね。」

「士郎は自力で見つけてたでしょ。」

「まぁね。」

 せっかくなので、他の皆もどこにいるか見つけて教えておいたのだけど...士郎だけはすぐに先に見つけたわ。...とんだ親馬鹿ね。知ってたけど。



「一位だねー。」

「まぁ、当然ね。」

 しばらくして、優輝の順番が回ってきて、走り終わる。
 結果は当然のように一着。身体能力を制限してたみたいだけど、それでも当然ね。
 ちなみに、司は優輝の一つ手前の番で走ったけど、こちらも同じく一着よ。

「....当然すぎて面白味がないわね。」

「まぁ、仕方ないんじゃないかな?普段から鍛えてる人なんて早々いないし。」

 葵の言葉に、それもそうかと納得する。
 でも、優輝と一緒に走った...確か、聡とか言ったからしら?彼も中々の速さだったわね。優輝に劣るとは言え、二着を取っていたし。

「えっと、次は...。」

「二人三脚だから結構先だねー。ちなみに、司ちゃんと一緒に出るみたいだよ?」

「あらあら、だから昨日緊張しながらも楽しみにしてたのね。」

 葵が保護者勢とそんな会話をしている。
 ...そういえば優輝が司と走るって言っていたわね。

 ........。
 ...べ、別に司が羨ましい訳じゃないわ!

「あ、戻ってきた。」

「一人増えてるわね。あの子は...さっき優輝と走ってた子?それと、もう一人...。」

 優輝達がまたこちらへやってくる。
 今度は聡と玲菜だったかしら?二人も来ていて、優輝と聡が何か言いあっている。
 司と玲菜は後ろで苦笑いしたり、溜め息を吐いてたわ。

「楽勝だったみたいね。」

「いや、そうでもないぞ。聡結構速かったし。」

「そう言ってる割には走った後余裕そうだったじゃねぇか!あ~くそ!」

 ...なるほど、言いあってたのは彼が悔しがってるからなのね。

「ん?奏達はこっちに来てないのか?」

「そうね。もしかしたら次の競技が近いんじゃないかしら?」

「なるほど。」

 徒競走の次は玉入れらしいし、それに参加する...もしくは応援のために自分たちの拠点に留まっているのかもしれない。
 ちなみに、奏、すずか、アリサは赤組で、王牙帝が黄組、残りは青組らしいわね。

「って、夏祭りの時の...!」

「ええ、今日は応援に来てるわ。」

「よろしくねー。」

 今更ながら、聡は私たちがいた事に驚く。

「...やっぱ羨ましいわ。」

「お前だって幼馴染いるだろうが...。」

「そういう問題じゃねぇんだよ...。」

 あら?玲菜が少し不機嫌に...あぁ、なるほどね。
 優輝程ではないだろうけど、鈍感なのね。

「じゃ、次は二人三脚か。まだ時間はあるけど...どうする?」

「どうするったってなぁ...。」

「僕としては戻って応援の方がいいと思うけどな。司の応援だけで男子の士気は上がるだろうし。」

「何それ羨ましい。」

 っと、そろそろ戻るみたいね。まぁ、引き留める理由もないし別に構わないけど。

「お前、何気に司と同じ競技に参加してるから、残念だったな。」

「なっ...!?しまった...!これがっ...!孔明の罠か...!一緒の競技に参加できると浮かれたのが間違いだった...!」

 ...何かしら、この茶番。...って、玲菜が...。

「ふんっ!」

「おごふっ!?」

「あはは...じゃあ、また後でね。」

 玲菜が聡を一発殴って、そのまま連れて行ってしまった。
 司はそれを苦笑いしながら見届け、優輝と一緒について行った。

「なかなか面白い子たちだね。」

「下心がわかりやすいのは困りものだけど...まぁ、あの程度なら許容できるわね。」

 精神年齢が違うと馴染みにくいと思っていたけど...ああいう人達なら優輝達も安心ね。...問題は優輝が影響されないかだけど。
 影響されたら困るわよ。優輝の事は本体すら魂の輝きも含めて気に入ってるのに...。

「二人三脚まで結構あるみたいだね。」

「それまでは適当に時間を潰しましょ。奏達が参加しているのを見てもいいし、会いに行ってもいいんだから。」

「そうだね。」

 そういう訳で、優輝の出番までまた少し待つことにした。
 ...所で、二人三脚で司、浮かれすぎたり緊張しすぎたりしないかしら?
 あの子、心のしがらみが取れて優輝への想いに素直になってからだいぶ意識しちゃってるみたいだけど...。





       =司side=





「うぅ...今から緊張してきた...。」

「そうか?」

「足引っ張らないかなって心配で...。」

 二人三脚の種目が始まり、私は緊張で鼓動が速くなる。
 別に、種目そのものに緊張してる訳じゃない。優輝君と走るから緊張してるのだ。

「練習もしたし、大丈夫だ。」

「う、うん。そうだね...。」

 その練習でも、優輝君と密着する事で凄く恥ずかしかったんだけど...。
 ...ううん、前世でもやったんだから、失敗はしないはず...!

「...なぁ、俺が言うのもなんだが、こいつに勝ってくれね?」

「お前もそう思うか。まじ爆ぜろ。」

「聞こえてんぞお前ら...。」

「あはは...。」

 私といる優輝君が羨ましいのか、聡君や私たちと走る他の組の子が優輝君に対して嫉妬みたいな事を喋ってた。...私たちにも聞こえてたけど。

「っと、聡、来たぞ。」

「分かってるっての。優輝、お前こそ聖奈さんがいながら負けるなよ?」

「勝つ=息ぴったりって事になるが、いいのか?」

「てめぇ....!」

 最近はそこまで大きな事件がないからか、優輝君にもだいぶ余裕があるみたい。
 帝君の時もそうだったけど、最近は結構誰かをからかったりしてる。
 変化と言えば、私も最近はクラスの男子とかも名前で呼ぶようになったっけ?

「おー、速い速い。」

「ペアの健斗君も結構速かったよね。」

「息も合ってるしな。よし、勝ったな。」

 2位とだいぶ差をつけたので、もう負ける事はないだろう。

「よし、行くぞ。」

「う、うん...。」

 学校から支給された紐を使って、私と優輝君の足を括る。
 バランスを保ちやすくするため、互いに腰に手を回すんだけど...。

「(あうぅ...よ、余計な事を考えちゃだめ!)」

「せーので内側の足出すぞ。いいか?」

「う、うん...!」

 体に触れられるだけならともかく、腰に手を回されるという事で、どうしても意識してしまい、体が強張ってしまう。
 ...大丈夫。練習の時もある程度上手く行ってたんだから...!

「よーい...。」

     パンッ!!

「せーのっ!」

「っ!」

 スタートの合図と共に、内側の足を踏み出す。
 そのまま、優輝君の声に合わせて交互に足を出していく。

「っ.....!」

 走っている内に、恥ずかしさや緊張よりも、嬉しさが湧き出てくる。
 こうして、優輝君と一緒に走れるという、嬉しさが...。

『赤組速い!圧倒的差でゴール!青組と黄組も頑張れ!』

「...えっ?」

 気が付けば、ゴールしていた事に気づく。あ、あれ?あっさり...?
 実況の人の声も全然耳に入ってなかった...。

「大丈夫か?」

「え、あ、うん。大丈...きゃっ!?」

 緊張が解けたからか、立ち止まろうとしてバランスを崩してしまう。
 咄嗟に優輝君が動いて、せめて私の下敷きになろうとする。

「ゆ、優輝君!?」

「ってて...大丈夫か?」

「な、なんとか...。」

 足を括っているせいで、多少変な体勢になっているが、今の状況は完全に私が優輝君に覆いかぶさるような形になってしまっている。
 その事に気づいて、かぁっと顔が赤くなるのがわかった。

『....あのー、赤組の人、ラブコメしないでください。』

「普通にこけただけだ。変な言い方するなっての。」

「ご、ごめんね!すぐどくから...!」

「いや、先にほどいた方が早い。」

 優輝君に言われた通り、手を伸ばして先に紐をほどく。
 リボン結びなため、片手で引っ張るだけでも簡単にほどける。

「よっと、怪我はないか?」

「う、うん。...ごめんね?」

「いいって。それよりも周りの視線がいたい。」

「うう...。」

 ああぁ....終わってからとはいえ、ヘマしちゃったなぁ...。
 途轍もなく恥ずかしい...!







       =優輝side=





「....随分と美味しい目に遭ってたじゃない。」

「そう言う類の言葉、クラスメイトにも言われたよ。」

 綱引きがあるまでの間、再び椿たちがいる所へ行く。今度は聡たちは来ていない。
 そして、今言った通り、散々男子たちに色々言われた。

「それと、司が凄く申し訳なさそうな上に恥ずかしがってるからこれ以上は...な。」

「...そうね。」

 二人三脚が終わってから、司が僕の後ろでずっと赤面している。

「....羨ましい。」

「か、奏ちゃん!?」

 ...と、どうやら今度は奏達もいるようだ。

「奏達はどれに出たんだ?」

「...私とすずかが玉入れ、アリサが台風の目よ。」

「ちなみに、なのはが玉入れ、はやてが台風の目だったけど、フェイトと神夜が大繩だからこっちに来てないわ。こっちでも応援はできるのだけどね。」

 アリサが補足説明でなのは達がいない訳を言ってくれる。なるほどね。

「大胆ね司。」

「ふ、不可抗力だよ!」

「ああいうのを“ラッキースケベ”って言うんでしたっけ?」

「リニス、それは少し違うわ。」

 司は両親と話したりしていた。なんかリニスさんがずれた事言ってたけど。
 ちなみに、間違いを指摘したプレシアさんはずっとカメラを持っていた。
 ...さすが親馬鹿。娘からカメラを外そうとしない。

「最近、公認のカップル扱いされてる気がする。」

「いいじゃないか。彼女も嫌ではなさそうだし。」

「そうなんだけどさぁ...。」

 僕はなぜか恋愛感情が持てなくなっている。
 だからこそ、そういう扱いされても困るんだよなぁ...。嫌ではないけどさ。





「やっほー、調子はどう?」

 昼休憩になり、アリシアが部活が終わったらしくやってきた。
 ちなみに、綱引きは惜しくも2位だ。身体能力を制限してたからな。
 玉入れ、大繩もあまり結果がよろしくない。結構劣勢だな、赤組。

「赤組の士気が司や奏達で保ってる状態だ。結構やばい。」

「ありゃりゃ、フェイトの組が1位なんだ。優輝がいても勝てないなんてねぇ。」

「5,6年の一部はともかく、4年以下がちょっとな。」

 多勢に無勢と言った所か。突出した者が数名いても、勝てない。

「ま、午後に追いついて見せるさ。」

「お、言ったねー。」

 まずは応援合戦だが...まぁ、“熱さ”なら負ける事はないだろう。





「さて、ある意味メインの一つである障害物が来たか...。」

「ここでトップ取らないとね...。」

 応援合戦も終わり、6年の障害物が回ってくる。
 学年ごとに障害物の種類も違うんだよな。特に6年は異色だ。

「おっし、聡、七瀬さん、頼むぞ。」

「健斗君と総悟君も頼んだよ。」

「任せろ!」

「絶対にトップ取ってやる...!」

 それぞれ一番と二番のメンバーに激励を送る。
 ちなみに、この障害物は各組2グループずつ走るようになっている。

「...けど、いいのか?アンカーって確か...。」

「仮装した上での障害物、最後の借り物...だろ?」

 そう。ある意味メインと言われる所以がこれだ。
 この“仮装”というのがキワモノだったりする。例えば、男子なら大抵女装になる。

「...今回はさらに異色の衣装を集めたとか聞いたぞ?」

「恥を忍べば大丈夫さ。」

 これでも女装の経験がある。体育祭程度の仮装なら大丈夫だろう。



「優輝、頼んだ!」

「聖奈さん!」

「任せろ!」

「任せて!」

 そして、終盤。僕らはそれぞれバトンを受け取り、仮装するためのカーテンの中に入る。

『さて、赤組がリードして仮装部屋に入りました!ある意味醍醐味とも言える仮装ですが...今年は自信がありますっ...!』

 “それ違うベクトルの自信だろ”と、どこからかツッコミが聞こえる。
 まぁ、体育祭に偶にあるおふざけの一つだ。これは。

「(やっぱり、女装。しかもこれは...。まぁ、カツラがあるだけマシか。)」

 案の定女装が待ち受けており、しかも“お好みで♡”とかプレートに書いてあるカツラまで置いてあるという用意周到さだった。...あった方が男としては良いけどさ。

「(さて、司も終わった辺り。行くか。)」

 さっさと着替え終わる。すると、ざわめきが聞こえる。
 どうやら、司が先に出たようだ。

『先に出たのは赤組の聖奈さん!これは凄い!女子の私でも見惚れてしまう程の神々しさ!まさに聖女です!』

 実況の声と、男子の司に対するコールが聞こえる。
 僕も出て見てみれば、司は聖女のような恰好をしていた。
 ...うん、天巫女モードで見た。こっちもこっちでいいけどさ。

『そして、もう一人は....って誰だこの美少女は!?』

「失礼だよ!?」

 仮装する上で、しばらくは障害物なしに走る。
 その際に運営前を通るんだけど...思わず突っ込んでしまった。

『んん、失礼。赤組の志導君が着たのはなんとゴスロリ!聖奈さんの衣装含め、提供者様ありがとうございました!それにしても似合っています!誰ですか貴女。』

「志導優輝だよ!と言うか、提供者って!?」

 どうやら、今回の衣装は自力で調達した訳じゃないらしい。
 ...ふと、忍さんが目に入る。

   ―――...もしかして?

   ―――そのまさかよ♪

「(忍さん!?何提供しちゃってるの!?と言うかあったのか!?)」

 互いに視線で会話し、提供者が判明する。
 なお、その横ですずかは苦笑いしていた。...止めなかったんだな。

「に、似合ってるね...。」

「着こなせるものは着こなすからな。司も似合ってるよ。天巫女の姿で見慣れたけど。」

「あはは...。女装は着こなせる類なんだ...。」

 女顔だからね。さて、障害物はっと...。

「よっし、志導を狙えぇえええ!!」

「おおおおお!!」

「私怨で当てようとしてる!?」

 次の障害物は平均台。ただし、渡る際に妨害役として違う組の連中(希望者)が玉入れのボールを投げて妨害してくる。
 当たってもいいが、平均台から落ちたらやり直しだ。結構バランスも崩れたりする。
 そして、二人三脚の事もあってか皆僕を狙ってた。...面子に女子入れろよ。

「ゆ、優輝くーん!?」

「....はぁ、仕方ない。」

 さすがに集中狙いされると僕でも落とされる。
 そのため、ある手段を取る。...この衣装にした事を後悔するがいい...!

「すぅ....“やめて?お兄ちゃん...。”」

「「「「ごはぁっ!?」」」」

 声を変えて、ロリ声で惑わす。
 こいつらは美少女に弱いから、多少なりとも動揺させれば良かったが...。

『な、なんだ今のは!?赤組の懇願攻撃に妨害役が撃沈!と言うか、やっぱり本人じゃないでしょ!正体を現せ!』

「さっきから失礼だな運営!?」

 まさか全員ショックを受けて項垂れるとは思わなかった。
 ...とりあえず、この間に通るか。

「行くよ、司。」

「え、えっと...男としてのプライドはないの優輝君!?」

「使えるものは使う!」

「ええ....。」

 困惑している司を連れ、あっさりと障害物をクリアする。
 なお、後続もやってきたが...。

「ちくしょぉおおお!!」

「八つ当たり!?」

「ちょっ、味方に当てるなって...!」

 ...なんか、僕のアレで錯乱したのか、ただボールを投げる装置になってた。
 .....まぁ、いいや。好都合だし。(まさに外道)

「壁登り...まぁ...。」

「余裕...だね!」

 そして、次の障害物は壁登り。だが、今更だ。
 戦闘とかこなしている僕らにとっては、階段と変わらん。

『速い!赤組二人が速い!というかなんかずるい!青組、黄組頑張れ!』

「ずるいってなんだよ...。」

 確かに妨害役を惑わしたのはずるいかもしれんが...。

「...さて...。」

「借り物...だね。」

 輪くぐり(五回)もあったがなんなく乗り越え、最後の関門に至る。
 借り物...まぁ、意外なものが当たると苦労するアレだ。

『おおっと赤組のカップルペアは既に借り物!青組、黄組急げ!』

「...実況、僕に恨みでもあるのか?」

「.......。」

 事あるごとにおちょくってくるんだが....。ほら、司も顔赤くしちゃってるし...。

「さて、借り物は....。」

「.......。」

 それぞれ一枚紙を取り、確認する。
 そこに書かれていたのは....。

「.....。」

「え、えっと...優輝君?」

 互いに顔を見合わせ、僕は内容をもう一度確認する。

「なぁ...もう見つかったんだが。」

「えっ、き、奇遇だね...。私も...。」

 目を合わせ、一度互いに自身の借り物の内容を確認。
 ...そして、互いに手を取る。

「よし、行くか。」

「う、うん...!」

 そのまま、ゴールへと向かう。ゴールは運営のすぐ横だ。借り物はトラック関係なしだからな。ちなみに、借り物の確認もそこで行う。

『早っ!?えっ、赤組もう見つけたの!?』

 あまりに早かったため、実況の女子が素を出してしまっている。
 まぁ、自覚はしている。なにせ、すぐ傍にいたんだから。

「えっと、確認....。...“そう”なの?」

「.....。」

「まぁ、“そう”だな。」

 確認役の人が僕らの紙に書かれた内容と、僕らを交互に見る。
 そして、問いに対して僕らは肯定する。

「...オッケーです。」

『な、なんと、赤組が圧倒的早さでゴール!!借り物を見つけるまで僅か数秒とか、体育祭史上初めてです!』

 そして、圧倒的大差で同率一着を取る。
 まさか、お互いが借り物の内容と一致するなんて、思いもしなかっただろうな。

 そう、僕が借りるべきものは“親友”。...つまり司の事だ。
 司も同じような内容で、僕の事を指していたんだろう。

「...聞いていいか?何が書いてたか。」

「ふえっ!?」

 とりあえず他のグループを待つ間、なんとなく聞いてみる。

「あ、言いたくなければいいんだけど...。」

「ゆ、優輝君はどうだったの...?」

「“親友”...だけど?」

「.....。」

 僕が答えると、司は少し悩んで...。

「...な..と...。」

「えっ?」

「....“好きな人”....。」

 ....その答えに、お互いしばらく無言で固まった。
 幸いなのは、他の人に聞かれていなかった事だろうか。

「...ご、ごめん。聞かなければ良かったかな...。」

「い、いいよ...。優輝君だって、気づいてる癖に...。」

 確かに、気づいてはいるが...改めて言われると、恥ずかしい。

「い・い・か・げ・ん・に....しろぉおお!!」

「あっ。」

「おぶふっ!?」

 耐え切れなくなったのか、ゴールまでやってきた聡が突っ込んできた。
 思わず受け流してしまったため、こかしてしまったが...。

「......。」

「わ、悪い。つい...。」

「ち...。」

「えっ?」

「ちくしょぉおおおおお!!!」

 なぜか聡は大声を上げながらそのまま走り去っていく。
 そして、残ったのは司のグループである健斗と総悟、僕のグループの七瀬さんだった。

「.......。」

「えっと...七瀬さん?」

 そんな七瀬さんも、なぜか僕らをじっと見つめていた。
 気になって声を掛けると...。

「....百合...って言うのですよね?この状況って。」

「あっ、忘れてた。」

 その言葉に、僕がまだゴスロリ姿だったのを思い出す。
 それと七瀬さん、それはなんか違う。後、そっちの道には行くな。

「...お前、ホントに優輝か?」

「優輝だよ。カツラ取ろうか?不格好になるが。」

「いや、普通女装って不格好になるよ?」

 なんだろうか、グダグダしてしまったな...。

 ちなみに、この後再びカーテンを使って着替え、僕らはテントの方に戻っていった。









「優輝、バッチリよ!」

「何が。」

「写真。」

 全員リレーが終わってから、椿たちの所に行けば、母さんがいきなりそう言ってきた。
 ...そんな趣味あったっけ?

「ちなみに、なんの...。」

「ゴスロリよ!」

「なぜ撮った。」

「似合ってるからよー。忍ちゃんにも勧められたし。」

 その言葉に、自然と視線が忍さんに向く。

「恭也さん。」

「どうしろと。」

「ちゃんと管理してください。」

「もの扱い!?」

「...わかった。」

「恭也!?」

 よし、忍さんに対してはこれでいいだろう。

「まぁ、それらはともかくとして、リレー凄かったね。」

「司ちゃんと優ちゃんで最後ごぼう抜きだったねー。」

 そう。リレーはあっさり流したが、一位を取っていたりする。
 健斗がミスってバトンを落とし、最下位になったのだが、そこから司と僕で一気に一位まで追い抜いたのだ。

「後は組体操だけだな。」

「もうひと踏ん張りだね。」

 司も時間が経ったから平常に戻ったようだ。
 最近、司は僕の事を意識して顔を赤くする事が多くなったからな...。
 いつも通りに戻ってくれて良かった良かった。

「(と言うか、なし崩し的に本人から聞く羽目になったな...。)」

 知ってはいたとはいえ、なし崩し的に言ってしまったようなものだろうな。あれは。
 まぁ、司のためにも掘り返さないようにしよう。





 なお、この後は組体操も無事に終わり、赤組の逆転優勝で終わった。
 障害物と全員リレーが大きかったらしい。











 
 

 
後書き
健斗…クラスの男子で三番目に足が速い。リレーでは最後から三番目のポジ。

総悟…特別足が速い訳ではないが、障害物が得意(自称)。

七瀬…物腰が丁寧な女子。ちょっと百合や薔薇に興味があったりする。運動神経はある。

優輝の友人ポジとは言え、モブキャラなはずの聡の存在感が増してきた...。
そしてなんだろう、この書きたかったシチュを詰め込んだ感...。
所々余分っぽい描写がありますが、無理矢理一話に詰め込んだ弊害です。言い換えると大体作者の技量不足です。体育祭の話を書きたかったんや...。 
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