魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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第4章:日常と非日常
第111話「霊術とデバイス」
前書き
またまたアリシア達強化回。王牙も出るけど影が薄いです。
優輝が完全に制御しちゃったからね。しょうがないね。
=優輝side=
「第二波、来るよ!」
「「了解!」」
すずかの声に、司とアリシアが霊力を練る。
すずかも同じように霊力を練り、それぞれ光の球、風の刃、氷の障壁を生み出す。
「奏ちゃん!」
「任せて...!」
それだけでは相殺できないと踏み、奏も刀を二振り構えて駆け出す。
そして、降り注ぐ武器群を次から次へと弾く。
すずか達が繰り出した弾幕と障壁も武器群を相殺していく。
「はぁっ!」
「アリサちゃん!」
「任せなさい!」
すかさずアリサが刀を構え、前へと出る。
そこへ、剣を持った王牙が襲い掛かる。
ギギギギィイン!!
「ちっ...!あんた、中々やるじゃない...!」
「くっ...!」
鍔迫り合いに持ち込まれ、王牙は魔力で身体強化して押し切ろうとする。
しかし、それはアリサも同様だ。よって、拮抗は続くが...。
「アリサちゃん!」
「っ!」
王牙は王の財宝による射撃も得意としている。
そのため、アリサは下がらざるを得なくなった。
「ここはっ...!」
「私たちが...!」
すかさず司と奏が前に出て、武器群の多くを弾く。
「てりゃぁああっ!!」
「っ...!」
さらに、すずかが作った氷の足場で武器群の射程外に跳んでいたアリシアが、斧を御札から取り出して思いっきり叩きつける。
さすがに、そんな見え見えの攻撃を王牙は躱すのだが...。
ピキピキ...!
「なっ...!?」
「捉えた!」
「チェックメイトね。」
着地地点を予測していたすずかによる、氷で足を取られ、アリサが刀を突きつける。
「勝負あり...だな。」
「...くそっ!」
勝負がついたため、僕がそういうと王牙は悔しそうにする。
以前までなら“まだ勝負はついてない”とか喚いただろうが...成長したなぁ...。
「じゃあ、反省会だよー。」
「まずはすずかね。今回、場をしっかり見ていて、指示も的確だったわ。それに、援護で氷を足場に使ったりしたのはいいわね。...ただ、指示と援護ばかりでほとんど動けていなかったわ。そこを改善していきましょ。」
「が、頑張ります...!」
模擬戦も終わったという事なので、椿たちが反省点を教えていく。
「次にアリサ。その思い切りの良さから果敢に接近戦をするのはいいわ。すずかや他の面子を信じて遠距離を使わない所もね。...けど、その割には肉薄した際の動きがいまいちよ。回り込むといった動きぐらいはしてほしかったわね。」
「これは王牙にも当てはまるぞ。」
「うぐ...わかったわ。」
「くそっ...。」
どちらも真正面から戦う。...まぁ、アリサは仕方ないだろう。
そういった戦術的な動きは慣れていかないといけない。天才ならともかく。
王牙は...まぁ、頑張れ。スペックは高いからな。
「司ちゃんと奏ちゃんはあれだねー。魔法を使った戦い方との切り替えがまだ上手く出来てないね。できる事がガラッと変わるから、動きが制限されるのは仕方ないけど、魔法と霊術で戦法の切り替えがちゃんとできれば、もう少し上手く動けるはずだよ。それ以外は特にいう事はないね。」
「あー...やっぱりかぁ...。」
「...難しい...。」
司と奏の場合、模擬戦では主に援護に回ってもらっている。魔法で戦えるしな。
しかし、援護の部分だけでも、ぎこちなさは残っているため、葵はそれを指摘した。
特に奏の場合は、腕から生やすのと直接持つのでは感覚が違うのだろう。
...それでも、王牙の武器を弾く事はできるが。
「最後にアリシアだけど...。」
「......。(ごくり)」
「風属性の術と、刀で武器の相殺。武器群の射程範囲外への跳躍。攻撃を避けさせるために重い一撃を選ぶ。...これらはいい判断よ。三つ目に至っては、攻撃が終わった時点で刀に持ち替えていた事から、その後の事も考えてあったし。」
「それに、霊力の扱いもだいぶ上手くなってたからねー。今ならアリサちゃんとすずかちゃんの二人同時相手でも勝てるかもしれないね。」
椿、葵から高評価が飛ぶ。と言っても、それでも魔法主体の司や奏に劣るけど。
強くなったとはいえ、それは今まで修行した範囲内での話だからな。
「でも、まだまだ甘いわ。本来なら、アリシアは一人で武器を全て相殺できるはずよ。そして、斧によるあの一撃ももっと鋭く、早く、重く繰り出せるはずよ。」
「言うなれば、まだまだ熟練度が足りないって事だね。」
「うぅ...。」
それでも、御守り制作を重点に置いていてこれほどなのは凄い。
椿と葵は結構スパルタだからそういう事は僕も含めて言わないけど。
「...それにしても、これだけやってもこいつに勝てないのね。」
「本来、陰陽師は複数で戦うのを前提としているからよ。一部の式姫や陰陽師は一人でも強かったりするけど、大抵は二人以上よ。」
「あたし達も遠距離近距離で役割分担してるからね。」
ちなみに、二人は一応一人でも結構戦えたりするらしい。
僕と奏が闇の書の偽物に取り込まれた時とか、椿は相当頑張ってたみたいだし。
「...せっかくこいつをボコボコにできると思ったのに...。」
「ははは、照れ隠しかアリサ?」
「“勘違い甚だしいよ?”」
「てめっ!」
「はい残念。」
最近は王牙が調子乗る→僕がからかうって言うのが定番になってきたな。
王牙も近頃即座に僕に突っかかるようになったし。簡単に防げるけど。
「はい、反省会も終わった所で、結論を言いたいのだけど...。」
「...結論?」
どういう事かと、アリシアが首を傾げる。
確かに、“結論”と言われてもピンと来ない。...と言うか、反省=結論と思うだろう。
「まだまだ粗が目立つし、精進すべき所も多々あるけど...。これで貴女達は一人前の霊術使いと言えるぐらいにはなったわ。」
「あ、王牙はまた別な。まだ無駄が半分以上余裕で残ってる。」
第一に王牙は霊術を使ってない。霊力を持っているのは確かだけど、それ以前に魔法での強さを磨かないといけないしな。
「一人前...。」
「と言っても最低限よ。司と奏は魔法があるからいいとして、アリサとすずかは必ず二人以上になりなさい。アリシアは...むしろ一人の方が動きやすいかもしれないわね。」
「なるほどね...。」
「もちろん、これからも私たちが鍛えるわよ?今回の事は、ある一定の基準に達した程度に思ってなさい。」
卒業や免許皆伝など、まだまだ先とでも言わんばかりに、椿はそういう。
...実際、椿や葵以上に強くならないと卒業とか言えないからな。
「まぁ、一人前になった記念だ。ちょっとした贈り物を渡すよ。」
「贈り物....?」
「優輝君、それってもしかして....。」
首を傾げるアリシアと、何か察した司。
まぁ、司と奏は知っているからな。内容を教えた訳じゃないが、心当たりはある。
「司と奏は元の形をそのままに機能の追加。アリシア、アリサ、すずかには一からって感じだな。それぞれの得物に合わせた形状にできる。」
「これって....デバイス?」
そう。贈り物と言うのはデバイスだ。
だが、当然ただのデバイスではない。
「霊力を通してみな。」
「え?....ええっ!?」
言われるがままに、各々霊力を通す。
すると、そのデバイスは起動する。
ちなみに、待機形態の場合は、アリシアは飴玉のようなものが入った瓶、アリサは炎を模した結晶のようなもの、すずかが氷の結晶のような形だ。
それぞれペンダントとして扱う事もできる。
「...もしかして、霊力に適応させたの?」
「その通り。いやぁ、さすがに苦労したさ。ちなみに、リヒトとシャルもアップデートついでに適応させておいた。」
理論を組み立てるまでは苦労した。
おまけに、クロノを通して申請しておいたとはいえ、デバイス制作の費用はほとんど自腹だったからな。おかげでミッドでのお金がほとんど消えた。
「アリサには刀型、すずかには氷の爪とトライデント型の槍。アリシアは刀、剣、槍、斧、弓、扇と色々な形状に変化するようになっている。」
「...便利ね。」
「おおー!凄い!二種類同時に展開もできるんだ!....でも、使いこなせるかな?」
「そこは要練習だな。」
それぞれ刀、槍、弓や扇を展開している。
デバイスの種類としては、ストレージになるが...後からAI追加は可能だ。
尤も、その時はさらに費用が掛かるから、随分後回しになるが。
「今の所、防護服の展開と武器の展開。後は御札とかを収納すると言った機能しかない。術の組み立ては基礎なら補助してくれるが、応用する時は自力になる。まぁ、霊力で動かせるデバイスとでも思ってくれ。」
「それでも凄いよ!これ、新発明じゃない!?」
「そう思ってクロノに伝えたんだけどさ...。騒ぎになるから、伏せるように言われた。」
「だ、だよね...。」
霊力を魔力の代わりに使える。...まぁ、便利だと思えるだろう。
だけど、ミッドチルダにとって、霊力は未知の力になる。
だから、名目上はただのストレージデバイスという事にしてある。
「最終的に、霊力を魔力に変換したりする事が目的だな。そうすれば、色々と戦術が広がるしな。あ、アップグレードしてほしかったら言ってくれ。武器の追加とかできるし。」
「....これ、タダかしら?」
「僕自身、やりたかったっていうのもあるし、タダでいいよ。」
「...時々優輝君って、とんでもない商売殺しするよね。」
仕方ないだろう。個人での取引にしか使えないし、かと言って売る訳にもいかないし。
「あ、そうだ。名前は決めてないから、好きにしていいぞ。」
「名前...かぁ...。」
「...霊術用なら、和風な方がいいよね?」
名前は未定だったので、皆に好きに決めさせる。
「でも、デバイス自体は洋風だし...。」
「...悩むのなら、二通りの名前を付けてもいいぞ?あ、でもデバイスとして登録する際には洋風の名前にした方がいいかもな。飽くまでそのデバイスは僕が作った“だけ”になっている。変に和風の名前を付けて、管理局で勘繰られたら面倒だしな。」
愛称、もしくは別称で和風の名前をつけるのならいいと、付け足しておく。
和風の名前だと、地球に他にも魔導師がいると勘違いされるかもだしな。
「とりあえず、登録名称だね。」
「待機形態の印象からとかでもいいぞ。」
しばらく、三人は悩み...。
「...よし、決めたわ。」
「私も。」
「うぇえ!?もう?」
アリサとすずかは決まったらしい。アリシアはまだのようだが。
「“フレイムアイズ”。」
「“スノーホワイト”。」
「「セットアップ!」」
二人は、登録と同時に防護服を展開する。
...と言っても、今着てるのをそのままコピーしただけだがな。
まだそういうのに対応させてないからなぁ...。
「アリサちゃん、すずかちゃん...。」
「えへへ...やってみたかったんです。」
「ちょっと恥ずかしいけど、いいわね。こういうの。」
司が先程の掛け声について聞くと、二人は照れ笑いしながら答える。
やっぱり女の子と言うだけあってか、密かに魔法に憧れてたんだな。
尤も、これは霊術用のデバイスだけど。
「うぅう~...。」
「深く考えすぎだ。直感的に考えるのもいいぞ?アレな名前だったら修正するし。」
「えっと...。」
アリシアがそれを見て焦って決めようとしたので、そういっておく。
「....“フォーチュンドロップ”...。」
「“幸運の雫”か...?中々洒落た名前にしたな。」
「ふえっ!?あ、うん、そうだね!」
...これは、ドロップは飴の方の意味で言ったな。まぁ、いいけどさ。
「じゃあ、三人共それでいいな?」
「...うん。中々しっくり来たし、これでいいよ。」
そういう訳で、正式な名前が決まった。
「司と奏はどうだ?」
「シュラインなのには変わらないから、やりやすいかな?」
「...私は、ちょっと違うけど...これはこれでいいわ。」
司は扇の形態が加わった程度の変化だが、奏の場合は刀に変形するようになった。
元々エンジェルハートは武器に変化してなかったから新鮮だろう。
「よしよし。実験的な事も含めてたけど、上々だな。」
「ちょっと、優輝!?」
「一度僕で試したからへーきへーき。」
それにしても王牙が静かだな...。どうしたんだ?
「...お前、改めて見れば多才だな...くそ。」
「えっ。」
ふと見れば、王牙がそんな事を呟いていた。
僕以外にも聞こえていたのか、皆が固まって一斉に王牙の方を見る。
「...お前が僕を褒めるなんて...明日は世界でも滅びるのか?」
「喧嘩売ってんのかてめぇ!?買うぞこら!!」
「いや、意外だったし。」
まぁ、視野を広くして見る事ができるようになってきたって感じだろう。
「あ、実験的なってので思い出したけど、こんなのも作ってみたんだ。」
「銃....って言っても、普通じゃないよね?」
「まぁな。」
取り出したのは、銃型のデバイス。と言うよりはマジックアイテムだな。
「これに専用のマガジンを入れて...アリシア、引き金を引いてみてくれ。」
「えっ、私が?」
「いいから。」
「う、うん。」
ドン!
「魔力弾...だよね?....あれ?でも私って....。」
銃口から飛び出したのはごく一般的な魔力弾。
しかし、アリシアも気づいている通り、魔力を使っていないのに魔力弾が出た。
「それがこれの特徴。この特殊なマガジン...というより弾丸だな。カートリッジとはまた別だが、これには魔力と術式が込められている。まぁ、使い捨てで魔法が行使できるアイテムだ。」
「へぇ~...。」
感心したような目で、アリシアは僕に返した銃を見つめる。
「ここのスイッチを切り替えれば、殺傷と非殺傷を切り替えれる。...魔導師の人手不足な管理局のために作ったんだよ。基にしたのは僕の使ってるリヒトのカートリッジ・リボルバーだ。元々、こっちも魔法が使えない人のための武器だからな。」
今回使用したのは威力を抑えた代物だが、カートリッジを使用する強力なタイプの銃も作っている。...ただし、まだ改良段階だけど。
「非殺傷にできて、おまけにちゃんとした魔法だ。これなら質量兵器には値しないし、次元犯罪者にも対応できるってな。ちなみに剣タイプとバリアジャケット代わりになるものも試作段階で出来ている。」
「ホント、器用だね優輝...。」
「人間、なんでも便利にしようとするからな。」
これは所謂クロノ達に対するお礼みたいなものだ。
ちなみに、既にクロノには話を通してあるし、もし生産可能ならするらしい。
その際に“こういう商売でも始めるのか?”とか言われたが。
「ま、とりあえず...だ。」
「デバイスがあるのなら、次からそれを使って特訓するよ。」
「そ、それってつまり...。」
アリシアが僕らの言いたい事を察して顔を引き攣らせる。
まぁ、その予感は正しいな。
「...もっと厳しく行くわよ?」
「あ、王牙もそれに合わせて厳しく行くぞー。」
「はぁ!?」
ものの見事に全員が驚く。散々厳しい所があったのに、それ以上と来たら...な。
「まぁ、今日はこれで終わりだ。解散。」
「...私たちは慣れてるのがあるけど、皆はきついだろうね。」
厳しくなるのを知って、トボトボ帰っていく皆。
それを見て、司はそう呟く。
「アリサとすずかには習い事もあるからな...。ああは言ったけど、あまり変えないつもりさ。デバイスを使った特訓が今までの特訓と成り代わるって所だな。」
「....優輝さんも人が悪い...。」
「言ったの僕じゃないけどな。」
僕がそういうと椿が気まずそうに顔を逸らす。
いや、そういうつもりで言ったんじゃないけどな?
「それにしても、どうしてこんなに早く強くなれるようにしてるの?」
「どうして...か。」
「それ、あたし達も気になるね。実行してるのはあたし達だけど、理由は知らされてないからね...。」
そう。本来ならアリシアはともかく、他の皆はここまでする必要はなかった。
それを、僕はスパルタで行くように二人に頼んでいたのだ。
「理由の9割がたは、緋雪の時のように有事の際に力が足りなかったなんて事がないようにって言うのが強い。そのために、体を壊さない程度に厳しくしてる。」
「...所謂、力を持たせることによる責任感ね。」
「そう言う事。」
力は力を引き付ける。それは善悪問わずに...だ。
その結果が、緋雪の時のようになってほしくない。...それが主な理由だ。
“死別”は僕視点でも、アリサ達視点でも、もう味わいたくない。
「.....待って、残りの1割は...?」
「それは...荒唐無稽な話になるが...。」
もう一つ理由と言えるものがある。だけど、それは理由とするには弱いもので...。
「...近いうち...抽象的だが、もしのんびり鍛えてたら到底間に合わないぐらい近い未来に、皆の力が必要になる...そんな漠然とした予感を感じたんだ。」
「それは...また突拍子もない...。」
「自覚している。」
本当に、ただの気のせいだと普通なら思うような事だ。
だけど、それが僕の頭にこびりつくように忘れられなかった。
...こういう事は、前世や前々世でもあった。
前世と前々世では、ここまで早い時期に感じる事はなかったけど...。
でも、その感覚に従わなければ、良い未来は訪れなかった。
前々世では、シュネーの人体実験。前世では聖司の死。
その両方を、“ただの気のせい”と思ったばかりに...回避できなかった。
その時の予感に比べれば、今回はまだ弱い。
けど、もう“気のせい”だとは断じれないのだ。
「まぁ、そういう訳で急いでいるんだ。」
「...そっか...。」
「...信じるのか?」
あっさり信じたように言う司に、困惑する。
見れば、奏も信じている様子だった。
「「だって、優輝君(さん)だから。」」
「...ったく、盲信的にはなるなよ....。」
「その時は私と葵が止めるわよ。」
「そうだね。」
二人と違い、椿と葵はまだ完全に信じている訳じゃなさそうだった。
「完全に信じる事はできない...けど、捨て置く事もできない...そんな感じね。」
「優ちゃんの予想や予感が外れる事って、あまりないからねー。さすがに漠然としたものじゃ、信用しきれないけど、無視もできないんだよね。」
「だから、心の片隅に置いておくぐらいがちょうどいいのよ。」
...とかなんとかいいながら、司達みたいに信用してくれてるみたいだな。
「...とりあえず、僕らも帰るか。」
「そうだね。」
特に話す事もなくなったので、僕らも帰る事にする。
アリシアの御守り作りも佳境に入ったし、後はなのはが疲労とかでぶっ倒れたり、怪我したりする前に渡せればいいが...。
「(...間に合う...よな?)」
ちょっと不安だ。これは椿の言う通りさらに厳しくした方がいいかも...。
「で、できたぁ.....!」
また別の日。今回はアリサとすずかは習い事で来ていない。
この日、ようやくアリシアはなのはに渡す御守りを作り終えた。
ちなみに、アリサ達の代わりに今日は久遠がいる。
「....よし、これぐらいなら命の危険に晒されても大丈夫ね。」
「よ、ようやく椿から合格が貰えたぁ...。」
すっかり疲れ切ったアリシア。
まぁ、仕方ないだろう。御守りの効果を高めるために、常に想いを込めながら術式を組み続けたのだから。
「くぅ...凄い力を感じる...。」
「えっへへ...くーちゃんも感じられるんだねー....。」
「完全に燃え尽きてるな...。それだけ御守りの力も凄いが...。」
術式を考える時点で愚直なまでの“想い”が籠ってたしなぁ...。
僕や椿でさえ、改良しようにもできない代物になってしまっている。
その分だけ、御守りとしての効果も強いが。
「効果としては、命の危険が迫れば身を守ってくれる。それに加え、命を維持するための治癒効果も少しばかりある....。単純な効果だけど、その守る力は御守りとは思えない程強力になっているわね。」
「...具体的には?」
「僕の見立てだと、なのはのディバインバスターを普通に防げる。」
「強い...。」
やっぱり先天的な才能がアリシアにはあったのだろう。
ここまでの御守り、僕だって滅多に作れないぞ。
まぁ、強力にする代わりに色々効果を付けて代用するんだけどさ。
「優輝、術式は読み取れるかしら?」
「一応な...ただ、想いを込めた部分は再現できないぞ。」
「それで充分よ。」
解析魔法を用いて御守りに込めた術式を読み解く。
そして、持ってきていたメモ帳に文章化させる。
機械語を訳すように訳が分からないものになるが、まぁ、仕方ないだろう。
「....よし、完了だ。」
「なるほどね....。じゃあアリシア。次はこれを他にもあげたい人の数だけ量産しなさい。もちろん、御守りとして機能するようにね。」
「え゛。」
固まるアリシア。...あれだけ苦労したのを繰り返すんだ。当然だな。
「大体の手順は覚えているでしょ?優輝も術式をできるだけ書いてくれたのだから、後は想いを込めながら作ればいいのよ。」
「あうぅ....確かにフェイトやママ達にもあげたいけどさぁ~....。」
「まぁ、休んでからでいいわ。さすがにね。」
さすがに見かねてアリシアを休憩させる。
そして、ふと葵と久遠の方に目を向けると....。
「くぅ....!」
「ちょっ、速っ、速いよくーちゃん!?避けきれな...危ないっ!?」
なんと、攻撃を当てる特訓とはいえ、葵を追い詰めていた。
司と奏もそれを見て呆然としている。
「そういや、久遠も才能あったっけな...。」
「くっ...終わり!終わりだよくーちゃん!」
「くぅ。」
葵の言葉と共に、久遠は少女の姿から子狐の姿に戻る。
最後は葵がレイピアを避雷針代わりに使わなければ被弾していた程だった。
「久遠は人を傷つけるのは苦手...けど、模擬戦は別だからここまでの力を発揮するのか...。相当な強さだな...。」
「本来なら五尾の狐ぐらいの力量を持っているのだから、当然よ。式姫でもない、純粋な妖狐なら...ね。」
「だとしたら九尾とかどれだけなんだよ。」
以前に聞いた話じゃ、式姫にも九尾はいたらしいが、それでも純粋な妖狐での九尾よりは劣るらしい。...そんな大妖怪を封印した安倍一族って...。
「...私たちも負けてられないなぁ...。」
「...司さん、一戦、どうかしら?」
「...オーケー、受けて立つよ。」
それに触発されたのか、司と奏が霊術での模擬戦を始める。
まぁ、なにはともあれ、順調に皆強くなってきてるな。
後書き
徐々に強化されていくアリサ達。
この時点では、まだなのはやフェイトには中々勝てません。
初見殺しな技を連発すれば何とか...って程度です。
なお、久遠の場合は既になのはやフェイトも倒せるレベル。やっぱり本編に登場させたらバランスブレイカーになると言われるだけあります。
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