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夢幻水滸伝

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第十話 関ヶ原の夜戦その八

「貴方と手合わせを願います」
「二対一か、わかった」
 中里は二人を前にしても不敵な笑みで言うだけだった。
「ほな今からやろか」
「中里さん、ほなここは」
 関西の武将の一人が後ろから中里に声をかけてきた。
「攻めますか」
「ああ、後は任せた」
 中里も部将に返した。
「采配はな」
「これまで通りですか」
「そうしてくれや」
「ほな棟梁の采配で」
 綾乃というのだ。
「させてもらいます」
「そや、やってもらうで」
「わかりましたわ」
 部将達は中里の言葉に頷いた、そうしてだった。
 彼等は実際に綾乃の采配の下で攻め続けた、綾乃は軍勢全体の采配を執っていたがそれは空から見たうえでのことだった。 
 空に浮かぶ八岐大蛇の背から山もその麓も見てだ、彼女は采配を出していたが彼女だけが考えているのではなかった。
 その彼女を乗せている八岐大蛇がだ、彼女に話していた。
「山の方はこのままでええで」
「どんどん攻めていくべきか」
「刀とか槍でな」
「もう山から突き落とす感じでやるんや」
「そやな」
 綾乃も大蛇の八つの頭に頷いて言った。
「そっちはそのままやな」
「それで麓の方やけどな」
「そっちは芥川の大将がおるけどや」
「星が二人行ったわ」
「そやから芥川の大将はそっちに行くさかいな」
「そっちの采配も執ることになるで」
「山の方は木が多いうえに登って攻めてるから鉄砲や弓矢は使えへんけど」
 綾乃は右手を自分の口元に当てつつ述べた。
「麓はちゃうな」
「そっちは鉄砲も弓矢も使えるで」
「大砲も持ってくか?」
「大砲はまだ後ろにあるけど」
「使うか?」
「今のうちに動かすわ」
 大砲についてもだ、綾乃は答えた。
「そんで射程に入ったら敵の後ろの方に撃つで」
「そうして敵の後ろを叩くか」
「そうするか」
「それでそのうえでか」
「音でもやな」
「そや、音でも驚かしてくで」
 敵の方をというのだ。
「そしてうちもやな」
「術使ってこか」
「折角の状況やし」
「使える状況やったらな」
「ここから放ってこか」
「そうするわ、うちは全体の采配執ってるけど」
 それでもとだ、綾乃はまた大蛇に応えた。 
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