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グランドソード~巨剣使いの青年~

作者:清弥
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第2章
1節―旅の中で―
  6回目の『軍勢の期』に向けて…

 あれから数日経った日、ソウヤたちはいつものようにギルドへ向かっていくとギルド内はざわついているのが目に入った。
 人々の目は欲を求めた眼が3分の2ほど占めており、残りの人々は恐怖などを抱え込んでいる。
 それを見たソウヤとエレンは瞬時にあることが始めることを察知した。

「…もう『軍勢の期』が始まるのか」
「そうみたいだな」
「…みなさん、私が予想していたよりすごいですね…『軍勢の期』の影響は…」

 ソウヤとエレンは『軍勢の期』が来ることを早く感じていた、このごろ忙しかったせいだろう。
 今回『軍勢の期』の前の状況をしらないルリは感嘆の声を出して、そしてなぜそこまで欲に満ちた眼をするのかわからない。
 理由は人それぞれであるが、その多くの欲というのは奴隷を手に入れて自分の欲望を満たすというこだった。
 奴隷は法的に裁かれた者がなる、いわゆる労働力であり衣食住の安全は保障されなければならない。
 しかし、やはり男の欲望を満たすための法で許されていない奴隷も存在し、この世界の人々もそれを黙認している、というか利用している人が多いのだ。
 そういうことをされることが許される奴隷は合法ではないのであっけにとられるほど高い。
 しかし、『軍勢の期』で活躍してしまえばその奴隷を買ってまだおつりがくるほどまでに報酬が与えられるのだ。

「生き物は欲に従順だからな、それは性欲として男を刺激しているんだろう…」

 エレンが吐き捨てるようにそう告げる。
 それを見たソウヤは、やはり騎士なのだから野蛮な奴らに身体目当てで襲われたことがあるのだろうと悟った。
 この話題を変えるべく、ソウヤは口を開ける。

「…それにしてももう1ヶ月なんだな」
「そうだな、今月は忙しかったからが大きいだろう」
「今回で何回目だったか…?」
「たしか5回目だった気がする」

 ソウヤはもうそんなに経ったのかと改めて驚き、時間が経つのは早いなと思い直す。
 それと同時に、あと1ヶ月で第二のボスが現れることを思い出し、顔にきつい表情を見せる。

「今回の『軍勢の期』には出ないでおこう、次に備える」
「そうだな…次の魔族が現れる大陸は知っているのか?」
「あぁ…」

 魔族が現れるのは3ヵ月に1回、その魔族が現れるのは1つの大陸だけで、他は普通の『軍勢の期』とほぼ変わらない。
 そして次に現れるのはこの大陸…シルスの王都付近に現れることはソウヤは知っていた。

「この大陸だ、なので俺たちは6回目の『軍勢の期』が始める1週間前にここを発つが良いか?」
「あぁ、ソウヤが決めたことなら異論はない」
「私もソウヤさんに着いて行きます」

 2人の許可をもらったソウヤは頷き、ギルドの受付嬢に入っていく。
 なぜさっさと王都に行かないかと言われたら、それは王都周辺の敵が圧倒的に弱いからだ。
 熟練度は強い敵であればあるほど効率よく上がりやすく、ソウヤもこの世界に来てばかりの時は急激に熟練度が上がっていた。
 ほとんど熟練度が広範囲に比べておかしいほど上がっており、この周辺でも熟練度はとてつもなく少ないが、しかしエレンとルリのスキルの熟練度の上りは効率はいいのだ。
 エレンとルリはこの世界の住民でステータスも見れないが、それでもスキルの熟練度は存在する。
 2人は両方特殊能力(エクストラスキル)を持っており、ソウヤほどではないがチートの力を保有していた。
 その特殊能力の熟練度上げは必須なのだ。
 討伐系の依頼を数個受けたソウヤがギルドから出ると同時に口を開ける。

「次の魔族は1人目のあいつよりも格段に強くなっている。正直俺1人では倒せる気がしない」
「やはりソウヤでも無理か…?」
「あぁ、まず1人目を倒せたこと自体が奇跡に近いんだ、64人でやっと倒せる相手だったからな」
「…どれだけソウヤがこの世界のバランスを壊しているかがよく分かった…」
「まぁ、だからこその『均等破壊(バランスブレイカー)』だしな」

 ソウヤの言葉を聞いて完全に呆れているエレンに、ソウヤは厨二病な2つ名をだして納得させる。
 エレンは自分の大陸の王に本当に2つ名の通りなソウヤを見て、感嘆と呆れが混じった感情を感じていた。
 そして、それと同時にソウヤがこの力を持ったことをどうしても”偶然”だとは思えなかった。
 本当に何億分の1の確率の力を”偶然”手に入れたのだが…。

「…さて、行くぞ」
「了解した」
「分かりました」

 ソウヤとエレン、ルリは再び命の綱渡りを始めたのだった…。




 あれから数日経ち6回目の『軍勢の期』が後3週間に迫った日、ソウヤとエレンとルリは再びエレースに居た。
 それはなぜかというともちろん武器の製造が目的である。
 ジグドも変えたかったし、なにより急遽ここに現れた理由は長いことルリが使っていた鋼の武器が真っ二つに折れてしまったためだった。
 どうせならまた鋼を使うのではなくて一気に強い武器にした方が良いと思ったのだ。
 さらにソウヤの防具は良い品だが、エレンの防具はもうダメージを食らい過ぎてボロボロで、ルリなどまだ『麻の服』だった。
 なので防具もついでに作りに来たのだ。

「おい、ルグドは居るか…?」
「ん…?あ、ソウヤじゃねぇか…!久しいな」
「あぁ、今回は依頼数が多いが頼めるか…?4日ほどで作ってほしいんだが」
「そうだな…4日ほどなら4つがギリギリだな」

 ソウヤはそれにうなずくと、エレンとルリを見てルグドを見直しアイテムストレージから『瞬死の森』の素材とずっと狩り続けてきたおかげで出てきたレア素材を机の上にドサリと置く。

「まず、これで魔法が流れやすい大剣と俺が持っているこんな剣を出来るだけ丈夫に切れやすいので頼む。あとは頑丈な長剣を1つ、最後に魔法が流れやすい短剣を1つだ」
「ずいぶん多いな…それにソウヤが持っている武器はカタナじゃねぇか、どこで手に入れたんだ…?」
「敵のドロップ品だ」
「なるほどな、了解だ」

 ルグドはそれにうなずくと奥に引っ込みそうになるが、ソウヤはあわてて引き留める。

「待ってくれ、料金と聞きたいことがある」
「料金は20万Rでどうだ?それと聞きたいこととはなんだ?」
「腕がよくてお前が信頼出来る防具をつくる鍛冶屋は居ないか?」

 それを聞いてルグドは腕を組みしばらく悩むが、不意に顔を上げて口を開ける。

「ここから北に向かって12個目の路地裏の奥に俺が信頼している防具屋が居る。ただ、ぼったクラレ愛用に気を付けろよ」
「分かった」

 ソウヤはそういうと、『金結晶』に20万Rを入れてルグドに渡すと外に向かった。
 外に出ると終始沈黙だったエレンが急に声をだす。

「ソウヤ、その防具鍛冶屋は私は知っているぞ」
「本当か…?」
「あぁ、その”女”はかなりの守銭奴でな。1回普通の4倍ほどで防具を売りつけられた」

 それをソウヤは聞いて、エレンも昔利用していたのだと理解すると同時に普通の4倍とかあまりのおかしさにソウヤは思わず苦笑いをした。
 そのあとにソウヤはエレンに「気を付ける」と告げて歩き出し、2人もそれに付いて行く。
 そしてあまり苦労も掛けずにソウヤたちは目的の防具鍛冶屋にたどり着いた。

「ここで合っているのか…?」
「あぁ…おい、アケノ!ドアを開けろッ!」

 エレンはソウヤの問いに答えると、いきなり大声を張り上げて思いっきりドアをノックした。
 その名前を聞いてソウヤはあまりこの世界には似合わない名前だな…と思う。
 こうしていること約1分後、ようやくボロボロの扉は開けられて人が現れる。
 中にいたのはもともと艶やかな黒髪だったであろう髪をボロボロにして、服もいい加減に着ていたようで漆黒のネグリジェも今はだけそうな女性だった。
 その女性はエレンをじっと見つめると、いや、睨みつけるとめんどくさそうに「なに…?」と告げる。

「アケノ、お前に客だ。ついで言うとお前と同じ”異世界人”だ」
「へぇ…?その異世界人さまはどこにいらっしゃるのかしら?」
「私の横にいる」
「ほぅ…こいつがねぇ…?」

 アケノはエレンからソウヤをにらみつけると、身体のあちこちジロジロとみて最終的に髪と瞳をにらみつける。
 そして、アケノははぁ…とため息をつくとエレンを再び睨みつけた。

「こいつのどこが異世界人よ、髪の色とか完璧こっち派じゃない」

 ソウヤはそうだったと思い出して、アケノに見えないように月文字(ルーン)魔法を解いて、口を開ける。
 それは日本人にしかわからない、つまり現代語だった。

「…そんな装備で大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない…え?」
「ザ・」
「ワールド…えっ…ちょっとまって…?」
「神は言っている」
「ここで死ぬ定めではないと…って、本当に…?」
「リア充」
「ばくはつしろぉおおお!って、やっぱ日本人…?」

 ここまで話すとさすがにソウヤを日本人と思い始めた、だから最後にソウヤは決定的な言葉を吐く。

X(イクス)…」
「バアアアァッァァァァナアアアアアア!!って、なんで私が好きな技の名前を…ってまさか…あなたって…」

 ここまで来るとアケノはソウヤの事を思い出してきたのか、暗闇でよく見えないが肌に汗が滴りに偽笑いをみせる。
 ソウヤはアケノには悪魔にしか見えない笑みを浮かべてこう言い放った。

「よう、懐かしいな。アケノ…いや、明乃(あけの)
「は、はいッ!おかげさまで先輩ッ!」
「し、知り合いなのか…?」

 ソウヤとアケノ…明乃の会話の意味不明な言葉で放心状態だったエレンは、ソウヤにそんなことを訪ねる。
 ソウヤは苦笑いを浮かべると、明乃に顔を向けて口を開ける。

「まぁ、な。それより明乃、俺たちは防具を作ってほしいんだ。もちろんやってくれるよな、適正価格で…な?」
「は、はいッ!も、もちろんですッ!この『防具匠(レーストル・パラズ)』の命を変えましても…!」

 ソウヤはそれにうなずくと、アイテムストレージからアイテムをどさりと置き、エレンには騎士鎧、ルリにはスピード系の服を頼んで13万払いソウヤたちは後にした。
 そして1週間と5日後、ソウヤたちは再びシルスの地面に足を踏んだ。
 ソウヤは腰には『サイレン』と新しく作った漆黒の刀『黒鏡破』を背負っていた。
 エレンは『騎士鎧(サームゼクト・ロクェン)』という純白の重鎧を着て、鎧と同じ純白の大剣『天使雷鳴(セルンス・スレミルト)』を背負っている。
 ルリは『俊服(セミノ・フゥル)』という茶色の服を着てその上に素早さを高める『瞬衣(ミセノ・ファル)』という焦げ茶色のフードを着ていた。
 武器には『黄金固地(ウォポルグ・ビプドミズ)』という黄金色をした長剣に『音速白銀(サイレント・ミニット)』という白銀の短剣が携えられている。
 と言ってもソウヤは目立つからと言いみんな普段の防具にもどっているが。

「…急いで王都へ向かうぞ」
「了解だ」
「わかりました」

 こうして、ソウヤたち一行は休む暇もなく王都へ向かっていくのだった…。 
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