グランドソード~巨剣使いの青年~
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第2章
1節―旅の中で―
レーヌとの出会い…勇者の召喚
ソウヤが足音が聞こえるところへ向かうと、突然目の前に1人のウォルフの美女とそれを追いかける『魔族の骨』の姿が見えた。
それでソウヤは、あの魔物が美女を追いかけていると瞬時に判断して刀――サイレンを鞘から抜き、追いかけっこしている魔物と美女のもとへ向かう。
「大丈夫か…!?」
「えぇ……私”たち”が逃げるために囮できるかしら…?」
「分かった…信用していいんだな…?」
「任せときなさい」
ソウヤと美女は走りながら短く簡単に会話をして、そして次の瞬間ソウヤは魔物に突っ込んだ。
すでに刀には風の魔法が付加されており、もともと切れ味の良さが売りの刀がより一層切れ味が鋭くなっている。
ソウヤを先に倒そうと決めたのか魔物はソウヤの方へ向かって、手に持っている長剣を振り下ろす。
しかし、それをソウヤは刀で受け流して体制が崩れた状態の魔物の懐を斬り付けて魔物を後ろへ吹っ飛ばした。
「キィイイィィィィイイ!!」
後ろの壁に激突した衝撃と切りつけられた痛みで、魔物は生き物ならぬ声を骸骨の口から吐き出した。
ソウヤは一旦下がり、刀を真正面に構えて隙を作らないように集中を途切れさせないように気をつける。
するとそこでソウヤの後ろから美女の声が通路に響き渡った。
「どいて!幻よ溶岩で埋め尽くせ…『幻夢溶岩《シュレオ・メレン》!!』」
その言葉が聞こえた瞬間は、ソウヤはここにいるとやばい様な気がしてすぐさま飛び退いてさきほど立っていた場所を見てみると地面が溶岩に満たされていた。
魔物の方も見てみるとそこも溶岩に満たされておりそこのなかに魔物が立っているのが目に入る。
「――――――――――――――――――!!」
次の瞬間、超音波のような音が魔物の口から放たれた。
停止の機能を持っているようで、それをもろに食らって美女は固まってしまいその瞬間あたりの溶岩は消え去る。
あの音を聞いても停止されなかったソウヤは頭の中で、幻の魔法か…と検討を付けた。
その幻を発現させること自体は簡単で、ただ単に火魔法と水魔法を使い水蒸気を発生させ光を屈折し幻を見せるだけなのだ。
だが、今回ソウヤは本能が危ないと告げたことがソウヤは疑問に思っていた。
「しかも普通の幻ならその前にあたりが霧で見えなくなるわけだしな…」
ソウヤはう~んと心の中で唸る。
現実はしっかりと美女の声さえ聞いていればソウヤでは納得出来たのだろうが、それはかなわなかったことだった。
と、そこでソウヤは思考の海から現実に魔物の音で戻ってくる。
「まぁ、まずはこいつを倒してからだな」
ソウヤはそう言うと殺気を周りから放出させて、さきほどとは全く違う静かな瞳で魔物を見据える。
そして、風の魔法でサイレンに風を纏わせると魔物に向かいソウヤは飛び出した。
ソウヤの動きに反応して魔物は長剣で守ろうと防御の姿勢を取ろうとするその時――
「っ…!」
――ソウヤは鋭く息を吸い込んで魔物の懐に潜り込み、ちょうど防御の姿勢の中のがら空きの所に入り込んだ。
そしてソウヤはサイレンを腰に当ててから前かがみになり…ちょうど居合切りの構えをする。
「はっ…!!」
小さく、しかし凄みを含んだ気合の声を発すると同時に居合をソウヤは放った。
スパンッと綺麗に斬れる音がして魔物にダメージを負わせることに成功したことを告げる。
そしてすぐさまソウヤは倒し切れていないことを知り全力で横に吹っ飛ぶ。
「キィヴァヴァアアア!!」
魔物が意味不明な声を周りに大きく響き渡らせて、怒りに落ちていることを語る。
ソウヤは、それを見て苦い顔をした。
「…あれ使うしかないかな…?いや、あれでいいか」
ボソっとソウヤはそう言うと、炎の魔法と風の魔法を同時に使い長い間ソウヤが愛用していた技を使う。
青い炎が剣を纏うとソウヤは足に風の魔法を纏わせて一気に突っ込む。
それと同時に魔物は剣に巨大な風の魔法を纏わせて突っ込んでくる。
「キィィィィィ!!!」
「うらあッ…!」
魔物は巨大な鳴き声を響き渡らせて剣を上段から振り、ソウヤは気の抜けるような気合を口から発して中段から横に振る。
巨大な風と青い炎が混じり合い、また互いを削り合っていく…。
そしてその鍔迫り合いに勝ったのはソウヤだった。
剣はあまりの高出力の高密度の炎に、簡単に砕け散り魔物の体制を崩させ、追い打ちのようにソウヤは魔物と交差するその瞬間にその青い剣を振りぬく。
「…『地獄炎剣』」
その言葉をソウヤが呟いた瞬間に、魔物は一瞬で焼け屑と化した。
ウォルフの美女…レーヌは硬直したままの姿で大きく驚いていた。
レーヌは自分が硬直してしまったとき、これ以上犠牲を出さないためにも運よく硬直を免れたソウヤに逃げて欲しかったのだ。
…本当はソウヤの状態異常が達人級にまで達しているのが理由なのだが。
だがしかし、レーヌの思いは伝わらずソウヤは魔物に対して殺気を向けたのだ。
レーヌも一応長らくやっている冒険者と自称している―本当はもっと凄い―のでソウヤの曲がった片刃の剣らしきの武器や防具もとても良い品だとわかっていた。
しかし、相手は死んでいるとはいえ魔族の骨なのでたった1人だけで勝てるわけがないのだ。
だがそのレーヌの予想をソウヤははるかに超えて、簡単に、いとも簡単に倒してしまう。
レーヌはあまりにソウヤが見た目に反して強いことに混乱して、硬直が溶けた後もその場で固まってしまっていたのだった…。
「なぁ…もう硬直解けているんだろ?お~い」
ソウヤはその場で未だ固まっているレーヌに声をかける…が全く反応せずその場で固まっているだけだった。
そのままソウヤはレーヌに顔を近づけて少しの間声をかけ続けていると、いきなりレーヌがビクッと震える。
そしてその直後にレーヌは口を大きく開けると――
「きゃああああッ!?」
――と巨大な叫び声を周りに響かせる。
その叫び声に耳を押さえながらソウヤはうずくまりながら悶えていると、叫び声が「あ…」と気が抜けるような声と共に消え去った。
しかし、あまりに巨大な声で未だにソウヤは耳を押さえてうずくまりながら悶えていると、レーヌ焦った様子でその場でしゃがんだ。
「だ、大丈夫ッ!?」
「大丈夫だ…うぅ」
ソウヤはそう言いながら悶えていると、レーヌはソウヤに淡い紫のオーラを纏った水の魔法をかけてやる。
すると、ソウヤは耳の痛みが段々と消え去っていくのが分かった。
ソウヤは耳の痛みが消え去ると、その場に立ち上がりレーヌに問いかける。
「そっか、お前ウォルフだから水の魔法をつかえたんだな」
「えぇそう。あと私の名前はレーヌよ、呼び捨てで構わないわ」
「あぁ、俺の名前はソウヤだ」
ソウヤの「水の魔法をつかえたんだな」という言葉には水の魔法が使えるから回復も出来るんだったな、という意味で言っていた。
魔法にはそれぞれの特性があり、水なら『治療』、火なら『炎熱』、木なら『増殖』、地なら『変化』、風なら『速力』、鋼なら『硬化』などある。
ほかにも特殊能力もあり雷魔法なら『斬切』、業火魔法なら『爆熱』、青火魔法なら『炎斬』、月文字魔法なら『付加』などがあった。
さらに無魔法もあり、特性が『創造』というものである。
「そういえば、最後のあの剣を纏った青い何か。あれ何かしら?特殊魔法?」
「あぁ、俺は異世界人だからな」
もともとソウヤはこのことをあまり言いたくはなかったが、見られた以上もう白状するしかないことを理解していた。
だから、この後すぐにソウヤは「誰にも言うなよ…」と言葉を足しておく。
そのソウヤの言葉に絶句しながらもレーヌは頷くと、言葉を発する。
「分かったわ、あと、言い忘れていたわね。ありがとう」
「あぁ…どういたしまして」
レーヌは美人な顔をニッコリと笑顔に変化させて礼を言うと、ソウヤは一瞬呆けた後に笑みを浮かべて言葉を返した。
そして、レーヌが腕を差し出してきたのでソウヤもその意味をすぐに理解すると腕を出して握手する。
これがウォルフのレーヌとの忙しい出会いだった…。
「それじゃあ、また会おう」
「えぇ、また会いましょう」
ソウヤたちは遺跡―さきほどいた場所―から外に出ると、セランスへと向かって行く。
そしてセランスにつくと、ソウヤとレーヌは別れのあいさつをして各自の場所へと向かって行った。
ソウヤは宿に向かっていき、部屋に戻ろうとドアを開けるとそこには2人の人物が居たのが分かる。
1人は用意されていた椅子に座りながら苦笑いをしているルリと、ドアの前で腕を組みながらいっそ清々しいほどの笑顔を見せているエレンが立っていた。
その姿にソウヤは死んだな…と現実逃避しながら「ただいま…」と2人に向かって言葉を発する。
「おかえりです」
「おかえり…さて、なにか言うことはあるかソウヤ……?」
その言葉を聞いた瞬間ソウヤは、ここで謝らなければ死にそうな気配がするのを感じて即座に行動に入る。
まず正座をして両手を前方の地面に置いてそのまま上半身を両手の所まで下げる…簡単に言うと日本流謝り方、つまり土下座だった。
「す、すまない…!俺にもいろいろあったんだ…!」
「え…?あ、いや、その…頭を上げてくれ頼むから…!」
さすがのエレンもいきなりそこまでしてくるなんて思わなかったらしく、エレンも焦り始める。
頭を上げてくれの声を聞いたソウヤはしぶしぶと頭をスッとあげて正座のままでエレンが話を続けるのを待つ。
エレンは右手で頭を抱えながら口を開ける。
「…で何があったんだ?」
「あぁ、それは――」
ソウヤはエレンが言った後の事を無魔法のことも含んですべてしゃべった。
そのことを聞くとエレンは「はぁ…」と大きくため息をついて備え付けられたもう1つの椅子に静かに座って頭を大きく抱える。
「…なぜソウヤはそう色々な厄介ごとに巻き込まれやすいのだ…?」
「小説の中なら主人公だからで説明が着くんだけどな…」
「ショウセツ?シュジンコウ?」
「あぁ、異世界の話だから意味はない」
ソウヤはそう言って苦笑いを浮かべると、正座の体制を解く。
説明を初めて優に30分ほど経っているがさすがは日本人なのだろう、足がしびれた様子はなかった。
ソウヤは「んーっ」と大きく伸びをするとエレンとルリを同時に見る。
「エレンとルリはもう依頼を完了してきたのか…?」
「はい、この街に到着してすぐに」
「そっか…てかもうすぐ夜だな。時間が分かり難くてつらいな」
ソウヤは辺りがすっかり夜になり始めていることに気付いて、思わず小さくため息をつく。
当然のごとくこのファンタジーな世界では時間を調べるすべはなく、大体は太陽や月の位置で時間を決める。
ソウヤはエレンとルリを見ると「夕食どうせまだだろ、行こうか」と言って、2人に笑いかけた。
「ん…?ここはどこだ……?」
ソウヤがご飯を食べている同時刻、少年が目を覚ますとそこには白い空間が存在しており、少年は魔法陣の中心に横たわっていた。
その少年の姿は日本人のような格好をしており、見た目的に14歳だろうか、綺麗な筋肉を纏った腕が服から覗いている。
顔的にもかなりのイケメンで、よくモテるであろうと容易に想像出来る姿をしていた。
その白い空間に入ってくる影が数人見え始める。
その影は1人は豪勢なドレスを着た美人の見た目15歳ほどのヒューマンの女性と周りに配置された、重鎧を着た兵士がいた。
その女性が口を開ける。
「お待ちしておりました…”勇者様”」
「…は?」
この世界…『FTW』の世界に人間の勇気が勇者として召喚されたのはこの時だった…。
後書き
勇者はNPCだったはずがソウヤたちと同じ日本から現われました。
ですがそれは歯車が狂ったとは違います。
ゲームの時でもNPCでしたが勇者は人間でしたので異世界化となり、召喚される形になっただけです。
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