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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百十一話 お風呂でその十五

「人が結構入ってますね」
「そうですね」
「人気あるんですね」
「お風呂はです」
 この施設自体がというのだ。
「人に人気がありますので」
「だからですね」
「こうした場所にもありますし」
「人気があるんですね」
「心身共に清らかになります」
 だからこそというのだ。
「ですから人気があります」
「そういうことですね」
「私もです」 
 畑中さん自身にしてもというのだ。
「大好きですし」
「日本人の伝統の中にあるんですね」
「そうです、文化の中に」
「だから好きな人が多いんですね」
「私もそう思います」
「そうなんですね」
「先程入ったサウナにしても」
 畑中さんはこちらのお話をまたしてくれた。
「日本にも昔からありますし」
「あっ、蒸し風呂ですね」
「そうです」
「あのお風呂もですね」
「昔からありました、むしろ」
「むしろ?」
「あちらのお風呂がです」
 蒸し風呂がというのだ。
「昔はお風呂屋でした」
「じゃあお湯の方は」
「湯屋でした」 
 そう呼ばれていたというのだ。
「その様に」
「そうだったんですね」
「そうした意味で日本にも昔からサウナがありました」
「そうだったんですね」
「源義朝公は確かお湯に入っていた時にでしたか」
「暗殺されたんですね」
「そうだったかと」
 蒸し風呂ではなく、というのだ。平治の乱に敗れて東国まで落ちる途中で尾張で殺されたと歴史にはある。
「あの方は」
「お風呂で、ですね」
「そうだったと記憶しています」
「お風呂に入っている時は」
「裸ですし」
「はい」
 まさにだ、今の僕達にしろそうだ。
「それに安心して入っているので」
「どうしても油断しますね」
「そこを襲われてですね」
「義朝公も命を落としました」
「信頼している相手に」
「そうでした、ただ」
 ここで畑中さんは悲しい表情になってこうも言った。
「源氏の因縁を考えますと有り得た死でしょうか」
「源氏の、ですか」
「義朝公のそれも」
「それはどういうことですか?」
 源氏の因縁と聞いてだ、僕は気になって畑中さんに尋ねた。
「一体」
「はい、それは」
 畑中さんは僕に応えて話してくれた、源氏のその因縁のことを。そして僕はそのお話をしっかりと聞いた。お酒が抜けた中で。


第百十一話   完


                          2016・10・7 
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