その日はいつかやって来る
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07
『魔体から反撃開始。 マジックミサイルの射出を確認!』
「シルクッ!!」
魔体から無数のマジックミサイルが発射された。 人間はあれ程の攻撃には耐えられまい… さっき言っていたな、「シルク(おキヌ)を巻き込むなら本気で戦争する」と… これが終末の始まりなのか?
「軌道リング! シルクだけを守れっ!」
『イエッサー』
魔法力の全てを使って、シルクと言う娘だけを守っている軌道リング。 これもこいつの支配下か? 当面の危機は去ったが、地球はどうなってもいいのか?
「魔体に向けて砲撃! チャージ完了次第、断末魔砲発射っ! 攻撃をこっちに引き付けろっ!」
『魔体への攻撃は禁止事項です』
「お前が壊されたくなかったら撃てっ!!」
『了解、左舷砲塔制圧射撃開始』
随分な慌てようだな、さっきまでの薄ら笑いはどこに行った? まるで自分の命より大切そうじゃないか… それにしても、この胸の苦しさは何だ? まさか私がその小娘に嫉妬しているとでも言うのか?
「稼動するドロイドを射出っ! 断末魔砲でこじ開けた所から突入させろっ!」
『了解、「隊長0号」「グレートマザー」「チープファーザー」「唐巣神父」「魔鈴とホウキ」「冥子及び式神」「愛子と机」「小鳩親子」射出位置へ。 警告! 断末魔砲発射!!』
ギャアアアアアアアアッ!!
相変わらず嫌な音だ、特に自分が砲撃を受けた覚えのある発射音は聞きたくない物だ。
『続いて警告! ドロイド全機射出! 衝撃に備えて下さい!』
フォンフォンフォンフォンフォン!!
「うおっ!」
砲撃よりこっちの方が反動が大きい、一体どんなスピードで撃ち出したんだ?
『…断末魔砲、魔体に直撃しました。 魔体からの反撃が来ます! アンチミサイル展開! 被弾します!』
あれだけの規模の軌道リングなら守れた。 しかし船一隻であれを止められるのか?
ドムッドムッドムッドムッ!
『続いて主砲の吸引を受けます! 回避不能!!』
「ぐわあああっ!」
霊力が、吸い取られる… 体が… 縮んで行く…… こいつは何とも無いのか?
「大丈夫かワルキューレ? 力を分けてやろう、今お前に死なれたら困るからな」
小さくなった私の頭を撫でて、力を与えてくれるヨコシマ。 苦しいのになぜ私はこんなにも喜んでいる? 胸や体の芯がキュッとなって、顔が火照って来る。
『吸引停止、左主翼損壊、異界潜行装置損傷、しかし船体の損傷は軽微』
「よくやった、あっちの状況は?」
『ドロイド戦闘中、既に主砲の破壊に成功した模様です』
「小鳩ミサイル!」
「机クラーッシュ!」
「親父キャノン!」
『ドロイド退避、魔体が崩壊します。 これにより霊破片の修復には失敗しました。 最終カウントでは… カオス式予測機と同数の被害です』
「そうか、さすがカオスのおっさんだ、いい仕事してるな」
これが本当の被害… あの小娘が3億7千万の魂の救済を邪魔したのだ…… いや、それとも、神と魔を敵にしようとしたこいつを救ったのか? 今は全てが儀式通りに進んでいると信じよう……
『魂の放出に注意して下さい…』
魔体が崩壊すると、中から膨大な量の魂が溢れ出して来た。 大半がその故郷である地球に降り注いで行く…
中には月や火星に向かって飛ぶ者もいたが、地球の夜の部分に降って行く燐光は、とても美しかった。
アシュタロス達に結晶にされた者だけでは無い、この数千年の間彷徨っていた者も全て赦されて、この時を迎えたのだ。 僅かな脱落者を除いて……
『回収精製された魂により、今後数百年の安定供給が保証されました。 おめでとうございます』
「めでたくないっ! でもシルクのお陰で、俺は何億人も救わずに済んだ、感謝したいぐらいだ。 やっぱりあの子は俺に幸運を授けてくれる天女だよ」
そうだ、あの娘は、お前の命を守るために用意された歯止めだ。 お前が破滅に向かおうとした時、行動を起こして… 私は何故こんな事を知っている…?
『ドロイドの被害を確認、「式神5機」「机」「ホウキ」撃墜、「魔鈴」大破、「冥子」「小鳩」中破、残りは損害軽微です』
「そうか……」
魂の被害より、無機物の損害に落胆して、頭を抱えるこいつ。 本当にカオスの灰やマリアの残骸に手を出せば、何をするか分からんな。
「霊力を吸われて気分が悪い、部屋に戻って休ませてくれ」
「ああ、まだ足りなかったら「注射」してやろうか?」
「ば、バカッ!」
顔を真っ赤にしながら、ブリッジから走り去り、原隊と連絡を取るために「ポチ」の部屋に戻った私。 体の大きさと一緒に、本当に小娘になったような気分だ。
だがもう認めざるを得まい、支配されたせいなのかは分からないが、私はあいつを好きになってしまったのだ。
《本隊へ、聞こえるか? 現状を報告したい》
《……生きていたのか? 何が起こっている?》
《奴は千年前のアシュタロスの事件を逆に再現しようとしている、結果は見ての通りだ。 だが、さっきの小娘のように、余計な手出しをすると被害が出る仕組みになっているらしい。 「隊長」との通信を傍受していたなら知っているだろうが、あの犠牲者の数は、魂の精製に失敗した人数だ》
《…了解。 だがなぜ通信が許された?》
《これも儀式の一つらしい、当時の奴は前の逆天号に、パピリオのペットとして忍び込んでいた。 私も同じようにスパイとして活動するよう言われた》
《そうか、引き続き報告しろ》
《さっきの月神族は儀式のため、ルシオラ、ベスパの役として体を与えられている。 戦闘力は不明だが、この船には私を含め現在4人。 アンドロイドは全機出撃中、魔体との戦闘で左主翼を損傷、異界潜行装置も破損したらしい》
《了解、こちらももうすぐ「贈り物」が届く、修復にはどの程度かかる?》
神族との調整が上手く行ったのか。 こいつを止めるために待機していた奴らが来る、ベスパと、もう一隻の逆天号が……
《現状では不明だ。 だが奴自身は戦いたがっている。 自分の計画や人類の救済が失敗する事を願っている。 上からの指令は知らないが、破滅を望むなら戦ってやれ… それと、さっきのヒムロ・シルクを言う小娘を殺したら、奴はその陣営を破滅させるだろう。 …奴らに気付かれる、通信終了》
別に気付かれても構わないのに私は通信を切った。 これ以上喋ると全てがあいつを弁護する言葉になったからだろうか? いや、単にあいつと「隊長」の話を聞きたかったのかも知れない。
『地球からの通信回復、隊長からの呼び出しです』
「繋いでくれ」
「横島君、この時代にいないはずのゴーストスイーパーが、貴方の所から出て来るとは思わなかったわ」
「ええ、まさか俺も、こんな下らない結末で、自分が「失敗」するとは思いませんでしたよ。 でも言いませんでしたか? シルクを巻き込むなら本気で戦うって」
「私は神社から絶対に出ないように言ったわ。 でもあの子がそんな言い付けを守ると思う? 「弟や妹」のためなら何をするか、貴方が一番良く知ってるはずよ」
「そうですね、先に「球根」でも使って、安全な所に閉じ込めておけば良かった」
なぜ何も言わない。 この隊長のせいで、シルクと言う娘のせいで、数億の魂が救済されずに終わったんだぞ。
「でも貴方らしくてとても良いわね。 まだ人間の心が残っていると分かっただけでも収穫があったわ」
「この感情は、たった一人に対する物です。 残りのクズは容赦しませんから」
「そう… でも貴方って、いつも女の子で失敗するみたいね」
「ええ、この欠点だけは直りそうにありません。 さあ、次は第2ラウンドですよ、どうします?」
「南極で戦うなら、ドロイドが何千機もあるこちらの方が有利よ。 どこでやるのかしら?」
「到達不能極ですか、懐かしいですね。 そこが今回の極移動の予定場所ですから、色んな縁があるんでしょうね」
隊長の横に現れた別のウィンドウで誰かが話している、小竜姫とヒャクメだ。 こちらと同時に会話しているのか? さすがアンドロイド、器用な事だ。
「神族から連絡があったわ、地球上から地縛霊と浮遊霊が全ていなくなったそうね。 地球がこれほど霊的に浄化されたのは、3千年前のキリスト昇天以来よ。 これでも何か言い訳できる?」
「さあ? 昔のバカな俺が作らせたみたいですから、神父やピートの遺言に従ったんでしょうね」
「これだけの規模で? あの魔体は霊破片から魂を修復する装置なんですってね。 この事実をバチカンに報告したら、貴方も聖人の一人よ。 それとも本当に救世主なのかしら」
「そうですか? さっきぶっ壊したのを見たでしょう? たった一人を救うために、3億7千万の魂を捨てたんですよ。 隊長とシルクのお陰でノルマ達成です、おめでとうございます」
「何ですって、それじゃあっ… ピー、エラーによりテイシ。 ワタシはこのジジツにカンするシコウをキョカされていない、サイキドウゴ、このキオクはショウキョされる……」
急に機械に戻った隊長は機能停止して、神族からの通信を切った。
『再起動後、隊長に対する命令変更はありますか?』
「そうだな、俺を殺すつもりで掛かって来るように言っといてくれ」
『基本動作と変更ありません』
「シルクを回収に行くぞ、一人で放っておくより、ここに置いた方がまだましだ」
『了解、コース変更によりドロイド回収が遅れます、現在、周囲に脅威は認められませんが、異界潜行装置の破損と、艦載機の不足により撃沈の可能性が上昇しています。 隊長に委譲したドロイドを回収しますか?』
「いや、パピリオかベスパが来た時の邪魔になる、直接戦いたい」
何故ベスパが来るのまで知っている… 私の通信を聞いていたのか? いや、逆天号が来れば、直接対決は無理なはずだ。 それにしても、我々や神族の部隊、人間の艦隊は脅威の内に入らないのか…
『ヒムロ・シルクを確認、こちらに接近中です』
逆天号がリングに接近すると、シルクが奇妙なボートに乗って近付いて来た。
「あれは何だ?」
「カオスフライヤー87号。 300年ぐらい前、カオスのおっさんとピートでレースに出た船を、氷室神社に奉納してたんだ、良く動かせたな」
「ほう…」
《検索、カオスフライヤー 87号》
《現在の宇宙船の原型、月地球間レースで優勝2回。 チームカオス所属、搭乗者、ドクターカオス、ピート・ブラドー、ヒムロ・タダオ》
デッキに出ると、カオスフライヤーが誘導され、羽衣を纏ったシルクが舞い降りて来た。 しかし、何が「甘やかしていない」だ、一人で神、魔、月、人の最高級の装備を持っているじゃないか。 それでも魔体に挑むのは無謀すぎる。
「叔父様っ! また会えるなんて思ってませんでしたっ!」
「どうしてあんな無茶な事をしたんだっ!」
「だって、苦しんでる弟や妹達を放っておけませんでしたから。 竜神の装備で神社を守って、上まで登って来たんです」
では、そいつらも救われなかった。 穢れ、つまり他人の霊破片や、怨念が取り除かれず、浄化されなかったのだ。
「君はいつもそうだ、誰かのために自分を犠牲にしようとする。 もっと自分を大切にしてくれっ、頼むからっ」
「はいっ、グスッ、でも危なくなったら、きっと叔父様が助けに来て下さるって、信じてましたからっ」
「ああ、君のためなら俺はどんな事でもする。 俺には人類全部より… 地球よりも君の方が大切だから」
「えっ……」
そう言って抱き締められ、頬を赤らめて、震えながら奴の顔を見上げているシルク。 こんな年の小娘が、これだけのセリフを言われて、普通でいられるはずがない。 そして私も…
「わ… 私もです、叔父様」
私はまた銃を抜こうとしたが、手も動かせなかった。 何故この女がこうも憎い? 私はこんな小娘に嫉妬しているのか…
「叔父様、私も連れて行って下さい。 泥棒はまだできませんけど、きっと覚えます」
「いや、そうじゃなくて」
嫌だ、私は「奴は大変な物を盗んで行きました」とか「貴方の心です」とも言わないぞ。
「さっき井戸の水を止めて来ました… 神社にある腐海の植物も、もう枯れると思います。 汚染されているのは植物じゃないんですっ、大地の方なんですっ!」
「そ、そうなんだ… でも、そう言う話じゃ無かったと思うんだけど?」
シルクは人々を清浄な大地に導く、「青き衣の人」らしい… こいつも天然娘の前では、いつもの調子が出ないようだな。
「さあ、危ないから中においで」
「はい……」
この顔は絶対勘違いしている。 私の時と同じで、部屋に通されて、そのままいかがわしい事をされると思っている。 こら、私を睨むな。
「叔父様、あの人、誰なんです? 人間じゃありませんね、まさか叔父様の…」
「ああ、魔族の捕虜だ、首輪がついてるだろ、ポチって呼んでやるといい」
「始めまして、「ポチ」さんっ」
ヨコシマに言われると、何故か嬉しいあだ名も、こいつに言われると非常にムカツク。 やがてシルクは「ペス」と書かれた部屋に案内され、私とは比べ物にならない厚遇でもてなされた。
「わ~、わたし、こんな豪華な部屋、初めてです~」
待てよ、当時の「ペス」ヒャクメは、ヨコシマと同じ檻だったはずだ… アクセスポイントも閉じられて、弱った所でこいつに会って、心細さから、つい男と女の関係に…… いや、今はそんな昔の事を考えている場合じゃない、それにこいつは神族嫌いじゃないかっ。
「毎年、誕生日とクリスマスと、ホワイトデーと……(中略)……盆暮れ正月には色々と送ってたと思うけど…」
甘やかし過ぎだっ!
「家具や装飾品は、全部弟や妹に取られちゃいました。 残ったのは、みんなに装備できなかったこれだけなんですよ~」
確かに魔力の篭った装具は普通人には無理だろう、こいつにだけ霊力があるのか、それとも、アンドロイドなのか……
「そう、お腹すいてないか? 何でもあるから好きな物頼んでいいよ」
「はいっ、じゃあまた、魔鈴さんの料理食べたいですっ」
『了解、「出前」を取ります』
「ああ… 頼んだぞ」
あれはまだ帰って来ていないはずだな、それに大破と言ったら残骸同然か? そこで「非常事態」に気付いたのか、魔体が壊れるまで寝ていた奴らが起きて来た。
「あの女は誰だ?」
「私もとっても知りたいな」
「シルクちゃんなら俺の子孫で…」
「子孫に普通あんな事言うかっ?」
「そうそう、「俺には人類全部よりも、地球よりも君の方が大切だから」なんて、私、言われた事無い~~っ」
聞かれていたようだな、それとも逆天号がサービスして知らせたのか? ふんっ、懲らしめてやって、ついでにシルクとやらも追い出してくれ。
「じゃあ、今言ってやるよ、俺にはお前達の方が、宇宙よりずっと大切だ」
馬鹿め、今時そんな心無い言葉で騙される女が…… いた。 二人共、目に涙を溜めて喜んでいる、月神族と言うのは元から馬鹿なのか?
「「嬉しいっ」」
「それにワルキューレにもシルクにも、俺は殺せない。 だけどお前達にはできる」
「いやだっ! そんな自由などいらないっ!」
「私だって…」
「でも、一つだけ禁止する、俺を助けるために自分を盾にするな」
「この体は使い捨てなんだろ? だったら…」
唇を塞がれて黙る神無。 目で語り合って、朧も背伸びして同じように黙ると、その後はすすり泣きながら抱き付いていた月神族。 女の騙し方は上手くなったようだな。
「逆天号、月の女王様と回線を繋いでくれ」
『了解、月神族へのホットライン、コール』
やがて、テーマソングと共に、メインモニターに月の女王が現れた。
「私は月の女王、香倶耶。 もっとも今では、「機械の体をただでくれる星」の女王として有名ですが」
奇妙なメーター群の前に立ち、衣装の中が宇宙になっている女王。 間違いなく月神族は馬鹿の集まりだ…
「「女王様…」」
「お久しぶりです女王様。 神無と朧を来させて頂いて、ありがとうございました」
「いいえ、月神族が横島殿に救われたのは、二度や三度ではありません。 我々は貴方への恩返しが終わったとは思っていません。 例え天が敵になったとしても、月神族は貴方の味方です」
「それはお言葉だけで結構です。 ただ、神無と朧の魂はお返しできなくなりました」
「二人は横島殿に嫁がせた娘、どのように使って頂いても構いません。 それよりも、神無が亡くなった事を隠すため、貴方を騙すような術を使ってしまいました、お詫びします。 もっと若い志願者もいたのですが、見ず知らずの娘が神無の姿で現れても驚かれると思い、寿命が短い朧を通わせました、横島殿を二度悲しませる事になってしまいましたね」
「いえ、お陰様で救われました。 二人の最後の願いが、俺に掛かった呪いを解いてくれたんですから」
月の女王にだけは礼儀正しく喋っているこいつ、「隊長」には敵対行動を取っているから、交渉先として有効なのは月の女王しかいないようだ。
「そうでしたか、二人とも、良くやってくれました」
「「はっ」」
「他にも、私達に出来る事があれば、遠慮なく仰って下さい」
「はい、それでは一つ。 地球は魂の無い子供や、機械の体になった者が生きて行けない世界になりました、治療のために月に登って来た時は、体を与えてやって下さい」
「わかりました、横島殿に頂いた工場や警官達が、これまで通り上手くやってくれるでしょう、ご安心なさい」
「ありがとうございます。 これでお別れになると思いますが、神族や魔族から脅迫を受ければ、蹴散らしてやりますのでお知らせ下さい」
お前は月神族になったのか? しかし、懐柔するならこれが正しい手段だったのだ。 パピリオでも誰でも良い、生涯を共にする女を送っていれば今頃… いや、もっと上層部では、こうなる事を見越していたのだろう。 アシュタロス同様、何も見ない振りをして準備させていたのだ。
「それでは最後に、神無、朧。 私からの願いを聞いてくれますか」
「「はい」」
「横島殿が魔界へ行かれるならば、どこまでも付いて行きなさい。 魔族になられるなら貴方達も魔族となって、生涯添い遂げなさい、わかりましたか?」
「「はいっ……」」
「それではごきげんよう、またお会いしましょう」
その場に膝を着いて、泣きながら女王に向かって頭を下げる二人。 女王もこいつも深く礼をしながら通信が終わった。
「お前達… 俺に付いて来てくれるか?」
「当たり前だ、来るなと言っても付いて行くぞ」
「私だって」
「そうか、ありがとう。 じゃあ第2ラウンドだ」
今度は何を仕出かすつもりだ?
「神無、シルクは危ないからな、「機械に触っただけで壊す」タイプの子だ。 ブリッジに来ないよう、部屋に閉じ込めておいてくれ」
「わかった、恐ろしい奴だな」
「朧、蛍になって隊長を呼んで来てくれるか? 俺も分身使って、あっちに行くから」
「うんっ」
「私は居残りか?」
「そうだな? 蜂になっても刺すような相手がいないけど、誰か刺しに行くか」
「ああ」
「じゃあポチも一時開放してやろう。 本当に俺の役をやってもいいぞ、文珠やるから小竜姫と同期して合体するか?」
「神族とそんな事ができるかっ、それにこれは人間の問題だ、我々は介入できん」
「そうか? 魔神か天使が暴れてるとしても介入しないのか?」
確かに… もうこいつはアシュタロスと同等だ。 だがこれが「被害」ではなく「回復」だから、どちらも余計に混乱しているのだ。
「さあ、周りを包囲している艦隊を支配するぞ。 逆天号、地球に反物質弾の雨を降らせてやるって脅してやれ」
『了解』
「出でよっ、我が眷属達っ「でちゅ」…」
こいつは残っていたパピリオの帽子を被って、指を高く掲げた… 反物質弾? 今度も人類のためになる事だと信じよう… こんな時は手のひらに「人」と書いて、飲み込むんだったか? また部屋に戻って倒れたい……
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