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その日はいつかやって来る

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03

「ヨコシマーーっ!」

『ご来客です、神無様がいらっしゃいました』

 月神族か? 一足遅かったようだな、奴らは中立だが地理的には一番近い。 こいつがこんな辺鄙な場所に住んでいるから、私も神族も到着が遅れたのだ。

「神無…」

「カオスが亡くなったそうだな。 何故我々に何も言わなかったのだ、こんなにやつれて可哀想に…」

 私なら触るのも戸惑うような小汚い男に抱き付き、背中を撫でている月神族。 そうか、こいつが例の通い妻「新月の君」か。

「もう私と一緒に月に来い、お前ならきっと女王も許してくれる」

「月神族には私が見えないのか? そいつから離れろ、その男は私と契約した」

「何だと?」

「ああ、魔界にいるタマモを迎えに行って来る」

「嘘だっ! 魔族が約束など守るはずが無いっ!」

 可愛いものだ、この男を私に奪われるとでも思っているらしい。

「ワルキューレなら大丈夫だ」

「嫌だっ、お前がどこの誰とも知れない魔族に殺されるぐらいなら、今ここで私が殺してやるっ!」

「それもいいかもな」

「心配するな、一人で行かせたりはしない、私もすぐに後を追う」

「じゃあ、だめだ」

「どうしてっ? 私では嫌なのかっ?」

「お前は死なないでくれ、頼む」

「……もう」

 以前は気付かなかったが、こいつは自分の状況を知っていたのだろう。 戦友のこんな悲壮な表情は見たく無いものだ… 戦友? こいつと一緒に戦った覚えは無い。


「さあ、ラブシーンはそのぐらいにして、荷物をまとめろ」

「嫌だ、行かせないっ! 例えお前を倒してでも」

「できるのか? 小娘」

 退屈な任務だが、この程度の座興は許されている。 お前の斬撃と私の抜き撃ち、どちらが早いかな?

「やめろっ、やめてくれっ、もう誰かが死ぬ所なんか見たくないっ、頼むっ、頼むから」

「分かった」

 この月神族は簡単にこいつに服従するようだ。 任務を遂行する上での障害は排除しなければならないが、月神族を殺せば、こいつは私に襲い掛かって来るだろう。 いざとなれば一緒に連れて行くか。


『警告、高速の飛行物体が接近中! 人間型の物体です、撃墜しますか?』

「いや、いい」

 また邪魔が入ったか。 だがこんな事をする奴は二人だけ、一人は死んだ。

『防御シールド展開、衝撃に備えて下さい』

「俺に用があるんだろ、衝突はしな…」

 ドムッ!

 馬鹿だ、シールドを使って減速したな、これで奴の戦闘力は無い。

『船内に侵入されました! 警戒して下さい、船内装備で迎撃の許可を!』

「会ってからでいい」

『了解』


 シュウウウウウ……

「久しぶりですね、小竜姫様」

 加速を解くと、すっかりボロボロになった小竜姫が現れた。 ここで戦う事を考えていなかったのか?

「横島さん、魔界に行ってはいけません……」

「ご苦労な事だな、その様子だと月の周回軌道から超加速で飛んで来たんだろう? 神族はレンタルボートも借りられないのか?」

「違います、それでは間に合わなかったのと… この船がどの港からも一番遠くなるよう、移動しているからです」

「当然だ、腐った人間からも、罰を与える事しか知らない、お前達神族からも逃げるためだ。 あれだけこいつを苦しめておいて、どの面下げてここに来た?」

「あれは自然の摂理ですっ、死者を復活させるなど、あってはならない事です。 私も警告はしました」

「それを決めたのは、お前達神だ。 これだけ神族に貢献した奴に、一人や二人、一生を共にする女をくれてやっても罰は当たるまい。 それともこの月神族のように、お前自身が禁忌を破って体を捧げるか? それなら話だけでも聞いてやろう」

「何ですって、貴方は?」

「私は罰など恐れないっ、例え女王が許さなくとも、私は横島に対する… 感謝を忘れない」

 ふっ、そんなに赤くなって感謝だと? 笑わせるな。

「月神族ですら、感謝の気持ちだけで体を許すのだ。 さあ、お前も服を脱いで足を開いてみろ」

 2つ目の任務として、こいつの数少ない知人である神族の勧誘や誘惑も指示されている。 まあ、お堅いこいつは無理だろうが、ここまで言えば冷静ではいられまい。

「そんな事、できるはずがありませんっ」

「そうか、人間と交尾すれば、お前が人間界か魔界に堕とされるんだったな、魔界に来るなら歓迎するぞ」

「くっ… 貴方ならできるとでも言うのですかっ!」

「ああ、契約の印に抱かれてもいいな、見せてやろうか?」

「下品な話はやめなさいっ」

「では帰れ」


「小竜姫様、ボートで好きな所までお送りしますよ、お別れに治療の文珠も差し上げましょうか?」

「駄目です、貴方をあんな危険な場所には行かせませんっ」

「ここまで来て、まだそんな綺麗事を言うんですね… 俺の方が危険なんでしょ? 死んだ方が安全なんでしょ、正直に「殺しに来た」って言って下さいよ」

「違いますっ」

「神族がそんな事をするのかっ!」

 三人とも任務の内容は同じか? 「手に入らなければ殺せ」だ。

「ワルキューレみたいに、「タマモを人質に取ったから、来なければ殺す」ぐらい言って下さいよ… あ、パピリオ人質にしたって事でどうですか?」

 何もそこまでは言っていないぞ。

「そんな卑劣な真似はしませんっ。 パピリオさんと話したければ、ここに呼んでも構いません。 通信を遮断していなければ、今までも話せたはずです」

「いいえ、もしパピリオまで、貴方達みたいな薄汚い二枚舌になってるなら、二度と会いたくありません。 さようなら、小竜姫様」

 随分と嫌われた物だな、小竜姫よ。


「まだ話は終わってません、貴方は…」

「Gマザー、アクティブ」

『了解』

 マザー? 何の事だ、まさか…

「ちょっとアンタ、神様か何か知らないけど、うちの息子あれだけ泣かせといて、よくこの家の敷居跨げたねえ」

「ヒッ!」

 速いっ、アンドロイドか? 消耗しているとは言え、一瞬で小竜姫の後ろを取るとは。

「まあ事務所でゆっくり話でも聞こうか? こっち来なさい」

「ま、待って下さいっ、まだ話し…」

 ボコッ!

 一発か? 小竜姫でも一発なのか? 一体何千マイトあるんだ? 確かにこんな物が何体か降下すれば人類が滅びる… 量産されれば神界も魔界もただでは済まんぞっ、この任務はこれが目的だったのか?

《アンドロイドが小竜姫を一撃で倒した、こいつの捕獲は不可能だ》

《了解、標的のみを連れて速やかに脱出せよ、追撃を受けた場合、安全は保障できない、我々も撤退する》

 そうか、下らない任務かと思ったが、中々危険な任務じゃないか、ゾクゾクするな。


「まあ、こんなのは、こっちに置いといてと」

 言葉通り、通路にゴミと一緒に放置される小竜姫… 無様だ。

「おふくろ、それ神様だからな、罰当たっても知らないぞ」

「罰が怖くて母親やってられるかっ、着払いで送り返してやるよ。 それより神無ちゃん、よく来てくれたね」

「はっ、ドクターカオスが亡くなられたと聞いて、飛んで来ました」

「そう… でもあの人も「早くお迎えが来て欲しい」って言ってたから、お祝いしてもいいぐらいなのに、このバカがビービー泣いて。 それよりお前はシャワー浴びて、髭剃って来いっ!」

「ギャッ!」

 こいつが横島専用お仕置きアンドロイドか、さすがに自分より強く作ったと言われるだけの事はある。 私もこれ以上余計な事を言えば、小竜姫と同じ運命だ。

「このバカッ! また布団の上散らかしてっ、マリアちゃんバラバラじゃないのっ、さっさと片付けないと、シーツと一緒に洗濯するよっ」

「そんなすぐに治ったら苦労しないんだよっ! 絶対触んなよっ!」

 風呂場のドア越しに、わめき合う一人と一台。 この哀れな親子ごっこも延々と続けられて来たんだな、何百年と…


「それで? そっちの目付きの悪いお姉さんは、タマちゃん人質に取って、息子を悪い遊びに引き込もうって魂胆だね?」

「はっ?」

 あいつが風呂場に入ったのを確認すると、グレートマザーの視線がこちらを向いた。 考えろ、小竜姫のように建前を並べたら即退場だ。

「人質とは言いませんが、二人共、戦力として欲しい人材です。 条件面でも彼の望む、友人や恋人の復活に協力できます」

「復活? 私みたいな木偶人形かい? それとも人間の体かい?」

 自分の今の状況を理解しているのか? 知能と感情が有り、この状態で自殺せず、造物主を破壊しようともしない。 これなら魔法生物として、すでに完成しているのではないか?

「人間よりも、彼に合わせた長命な魔族の体になると思いますが、貴方達の体の方が性能も良くて、寿命も長そうですね」

「いいや、私達の霊的質量はゼロだよ。 他のアンドロイドも、生き人形にならないよう、徹底的に魔除けがしてある」

 確か、親友の体が暴走して、自分で倒して以来、霊的物質は一切使わなくなったはずだな…

「そうですか、しかし彼は才能が有りますから、魔法を極めれば、魂の召還でも肉体の作成でも、何でもできるようになるでしょう」

「魔法ねえ… 何か胡散臭そうだね」

「まあ、そう仰らずに、そうなればもちろん、貴方自身の復活も可能になります」

「やめておくれ、またあんな男と夫婦になるなんて御免だよ」

「では息子さんの妻として復活してはどうですか? 魔界にはタブーはありませんから」

「貴様っ! 何を言い出すかと思えばっ!」

「いいんだよ神無ちゃん、こいつらはこうやって、誘惑するのが仕事なんだから。 あんまり目くじら立てると皺になるよ」

「…はい」

「じゃあ、神無ちゃんはどうしたいんだい?」

「えっ? はい、あの… 横島、いえ、忠夫さんと一緒に暮らしたいです。 例え短い時間でも構いません……」

「そうかい、よく言ってくれたね。 ふふっ、あんな馬鹿のどこが気に入ったのか知らないけどね」

 それからは下らない女同士の会話が続いていた。 奴の特性、扱い方、浮気の発見方法… いかん、月神族の方が明らかに有利に交渉が進んでいる。 そこで風呂場から奴が出て来た。


「おふくろ、俺がいない間に、余計な事言わなかっただろうな?」

「ああ、お前はこのまま、神無ちゃんと月に行きなさい」

「勝手に決めるなよっ、タマモはどうするんだっ!」

 条件面では月神族の勝ちか、それが愛の生活になるのか、愛の逃避行になるかは知らないがな。

「お前だって分かってるだろ、タマちゃんも、こっちのお姉さんも待てる、でも…」

「言うなっ!」

 そう、こんな簡単な事をなぜ黙っているのだ? こいつは確かに任務の邪魔になる、しかしそれ以前の問題だ。 こんな偽りの生活がそんなに大切か?

「八百比丘尼」

「「…………」」

「この女が嫌がっているのはそのせいなんだろ? 地球なら800年、負担の軽い月でも、千年以上生きれば月神族としては長寿な方だ、本当の神や魔族とは造りが違う」

「言うなっ、それ以上言うなっ!」

「それにその外見、少し違うようだな、言っておかないと後悔するぞ」

「言うな~~っ!」


「そうだ… 私もお前に嘘をついていた、この体は朧なのだ……」

「聞きたくないっ! もうやめてくれっ!」

「いや、聞いてくれ、お前に抱かれ、思いを遂げた後、私は死んだのだ… 罰ではないぞ、寿命だったのだ」

「神無っ!」

 月神族の体が光っている、もうすぐ消えるのだろう。 こいつの指令だけは「殺せ」では無かったようだ。

「それから朧は冬眠に入り、月に一度だけ目覚め、体は私に貸し与えられた。 長命なお前に合わせるためだ。 おかげで私はお前との逢瀬を重ねる事ができたが、それは朧の願いでもあったのだ。 こうして一つになってやっと分かった、朧もまたお前を愛していたのだと」

「そんな… 消えないでくれっ! これも罰なのか?」

「違う、この術は見破られ、全てを告白した時に解けてしまうのだ。 朧の命数もすでに尽きた… さあ、この体を抱き締めてくれ、そして「朧」と呼んでやってくれ」

「でもお前、神無じゃないかっ!」

「もう時間が無い、頼む…」

「お……… 朧……」

 シュウウウウウッ

 薄いベールが剥がれるように、月神族の術が消え、神無は別の女の姿になった。

「「私達はこうなりたかった、またお前を悲しませる事になるが許してくれ。 体は月を離れられないが、せめて魂だけでも共に連れて行って欲しい」」

「分かった、分かったから消えないでくれっ!」

「「数多い月神族から、私達を選んでくれて嬉しかった… 今度は人間でもいい、道ならぬ恋では無く、ずっと一緒にいて、もっと固く結ばれたい……」」

「ああっ、そうしようっ、絶対そうしようなっ!」

「「あり、がとう… 私達の… 最後の…… 願いは…………」」

 月の光に照らされて、月神族が帰って行く。 白い光の粒が部屋の中を舞って、儚く消えて行った。 魔族でも人間でも、この美しい光景を見た者は少ないだろう。


「神無っ! 朧っ!」

 こいつは何も無くなった空間を、魂でも抱き締めるように、そのままの姿勢で動かなかった。

《生命反応が一つ消えた、月神族を始末したのか?》

《奴はここに来る前から死んでいた、別れを言いに来たらしい》

《了解》

 その後、暫く私までその余韻に浸っていると、この船にいるアンドロイド達が、部屋にぞろぞろと入って来た。

「? 何のつもりだ」

「忠夫、あっちに行ったら、神無ちゃんと朧ちゃんのためにも頑張るんやで」

「おふくろ… 関西弁はプログラムしてないはずだぞ…?」

《そちらの生命反応が急激に増加している、何が起こっている? 報告しろっ!》

「男だったら行って来い、それにしてもナルニアどころか魔界か、時代も変わったもんだな」

「親父…」

 そうか、こいつらには、今だけ本当の魂が宿っているのだ。 月神族が呼び寄せた、この別れの瞬間にだけ…

「これも青春よね」

「ああ… また会おうな、愛子」

「しばらく私の店も休業ね」

「またいつか… 魔鈴さんの料理、食べさせて下さい」

《奴の仲間達が別れを告げている。 アンドロイド達に…… 今だけ魂が宿っている》

「横島さん、また会いましょう、お母さんと一緒に待ってます」

「小鳩ちゃん、おばさん…」

「横島く~ん、最後にショウトラちゃんでペロペロ~~」

「ありがとう、冥子ちゃん、式神のみんな」

 弱々しい人間達が、月神族の力を借りて、一瞬の奇跡を起こしている… やめろ… なぜ涙を流す、こんな田舎芝居で泣くなど無様な事だ……


「横島君、分かっているとは思うけど、魔界は危険な場所よ。 まず自分を守る組織を作りなさい、それまでは一瞬たりとも油断しない事。 その後も味方こそが一番危険な敵だと思いなさい」

「はいっ、隊長っ! その間、地球をお願いしますっ」

 これが現在の人間界のパワーバランスを保っている「隊長」か、 こいつが作ったアンドロイドだったとはな。

「横島君、荷物をまとめておいたよ。 私にできるのはこれくらいだが、良かったらこのロザリオを受け取ってくれないか? 何かの役に立つかもしれない」

「ありがとうございますっ、神父… 様…」

「さあっ、行って来い、親不幸もんっ。 まさか身内から魔族出すとは思わんかったなぁ」

「ああ、分かった… 分かったよ、みんなっ… 俺、探してくるよっ、またみんなに会える方法をっ!」

 涙を流し、一瞬の再会を喜んでいるヨコシマ。 先程の死人のような顔とは別人のようだ、ようやく生きる力を取り戻したらしい。


「横島君、彼らからもメッセージが届いたよ」

「え?」

 ウィンドウが開くと、魔装した男が現れた。

「横島、お前とは決着がついてないな、今度会う時も敵がいい」

「雪乃丞…」

「ワッシは味方がいいですジャー、また合コンしたいですノー」

「タイガー」

「横島君、僕のために色々してくれてありがとう、君を悲しませてすまないと思っている。 だけど今度も自然な形で出会いたい、無理はしないで欲しい」

「分かったよ、ピート」

「さあ小僧、ワシの錬金術が魔界でどれほど通用するか、しっかりやって来い、マリアと一緒に見ておるぞ」

「またお会いしましょう、魔女のミカミどのも御一緒に」

「ああ、カオスのおっさん、マリア姫…」

「先生っ! 早く会いたいでござる、それに(ポッ)また可愛がって下され」

「ああ、すぐに会えるさ、また一杯散歩しような」

「はいでござるっ!」

「あなた、私達の子孫ってどうなったんでしょうね? あ、時間が経ちすぎて、もう他人と一緒ですよね…」

「血は薄くなったけど、みんな幸せに暮らしてるよ。 お金とか、ボディーガードしか送れないけど、甘やかしすぎないようにしてるから、心配しないで」

「はい、待ってます。 わたし、今は幽霊じゃないんですよ、生贄にもなってませんから」

「ああ、知ってるよ」


「………」

 最後に出て来た女は何も言わず、じっと奴を睨んでいた。

「どうした? 何も言ってくれないのか?」

「じゃあ言ってやるわっ! この浮気物っ! 宿六っ! ろくでなしーーーーーっ!!」

「ぐはああっ!!」

 ウィンドウから手が伸びて奴を殴り倒した。 召還術は構わないとしても、物理法則は無視しないでくれ。

「よくも私の知り合い全員と浮気してくれたわねっ! それも、おキヌちゃんには、2人も子供産ませてっ!」

 ドカッ! ガスッ! バキッ!

「令子さん、ちょっとやり過ぎやないの? それにおキヌさんは、あんたが勝手に死んだ後の後妻や、どうこう言う権利は無いで」

「あれは任務でタイムポーテーションしただけですっ! 人類のためにやったのにっ!」

「せやかて金に目が眩んで、離婚届に判突いて、念書まで書いたんはあんたや」

「うええ~~~んっ! ママ~~~~ッ!」

 ウィンドウのまま、母親に抱き付いて泣いているミカミ、器用な奴だ。

「なあ… このままお別れなのか?」

「ふんっ、あんたが今ぐらい金持ちなら、また結婚してやってもいいわよ」

「ああ、そうしよう…」

「バカッ、グスッ」


 全員に見送られて玄関まで来ると、背景の全体写真と同じ顔が同じ配置で並んでいた。 そろそろ、こいつらの存在も希薄になって来たようだ、転生先か何処かへ帰るのだろう。

『それではマスターの退出後、内部のエアーをパージして、最小限のエネルギーで待機します。 スペースデブリに破壊される可能性は極小、万一の場合「断末魔砲」で排除します』

「ああ、まかせたぞ、逆天号」

『行ってらっしゃいませ』

 断末魔砲…? 逆天号…? やっぱり連れて行った方が良かったかも知れない……

「じゃあ、行って来るよ」

「「「「「「「「「「「「「行ってらっしゃい!」」」」」」」」」」」」」

 奴の背後で次々に機能停止して行くアンドロイド達… こうして私達は魔界へと旅立った。 この小さな事件は特に明記される事は無かったが、私の記憶に深く残る、興味深い出来事だった。

 弱い人間達と二人の月神族、この男を中心とする特異な空間が、何かを引き起こすのだろう。 これからの私の任務は、この男の監視と教育になる。 今後も様々な事件が起こる事を期待する、レポート終了。
 
 

 
後書き
この当時は掲示板の制限もあって、15キロバイト程度で長くて謝っている書き込みが残っていました。
文字数の制限なんかもあって、他の話でも(笑)(泣)などを多用して感情表現をしたつもりになっていました。 
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