八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百九話 観覧車その十四
「特にアマゾンの様な熱帯の河にいるとな」
「うん、だから生で食べるとね」
「後が怖いな」
「皆生で食べないわよ」
アマゾンでは、というのだ。
「冗談抜きで危ないから」
「それが賢明だな」
「日本のお刺身は美味しいけれど」
「大抵海の魚だな」
「川魚はそうしないの?」
「いや、する」
川魚のお刺身もあるとだ、井上さんはニキータさんに明言した。
「それもな、しかしだ」
「それでもなの」
「注意してそうしないと危ない」
「虫のせいで」
「だから信頼のある店以外では食べないことだ」
川魚のお刺身はというのだ。
「迂闊しては後が怖い」
「やっぱりそうなのね」
「鯉にしてもだ」
実は僕も鯉は好きだ、あの味は一度食べると病み付きになる。鯉のお刺身も親父がさばいてくれたのを食べたことがある。
「気をつけることだ」
「というか鯉って食べられるの」
「これが美味い、しかしだ」
「生で食べるにはなのね」
「注意することだ、まあ刺身は海の方がいい」
「海のお魚ね」
「そうだ」
海を見つつだ、井上さんは言った。
「出来る限りな」
「まあ海はね」
ニキータさんもその海を見て言う。
「奇麗だしね」
「そこにいる魚達もだな」
「美味しいと思えるから」
「そうか、ではまたな」
「うん、海のお魚をね」
「食べよう、そして今はだ」
井上さんは微笑んでニキータさんにあらためて言った。
「こうしてだ」
「海を見て」
「他の場所もだ」
観覧車の上からというのだ。
「見て楽しもう」
「それじゃあね」
「海はいい」
井上さんは目を細めさせてこうも言った。
「上から見る海もな」
「こうしてですね」
「そうだ、観覧車から見る海もだ」
僕にもその細めさせた目で話してくれた。
「実にいい」
「それじゃあまずは上にまでいって」
「頂点からも海を見よう」
「そうしましょう」
僕は井上さんに応えた、そして。
三人で観覧車に乗ったうえで上がっていった、観覧車はゆっくりだったけれど確実に頂点に向かっていた。僕達が見たいものを見せてくれる場所に。
第百九話 完
2016・9・25
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