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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百九話 観覧車その十三

「青くてきらきらとしてて」
「そう言うか」
「あれっ、違うの?」
「ここから見える海は確かにそうだが」
 井上さんはニキータさんに自分も海を見ながらこうしたことを話した。
「そうとも限らない」
「そうなの」
「この近くには泥の様な海もあるのだ」
「そうなの」
「そこではムツゴロウという特別な魚が漁れるがな」
「ムツゴロウっていうの」
「そうした魚もいる」
 この話をだ、井上さんはニキータさんにも話した。
「そして海もだ」
「青い海ばかりじゃないのね」
「そうなのだ」
「泥みたいな海もあるの」
「日本では数少ないがな」
「ううん、てっきり青い奇麗な海ってばかり思っていたわ」
 ニキータさんは日本の海をそう認識していた。そのことが言葉に出ていた。
「そうした海もあるのね」
「そうなのだ」
「それもこの近くに」
「何なら行ってみるか」
 その海にというのだ。
「明日にでも」
「いや、僕は青い海が好きだから」
「だからか」
「いいよ」
 行く気はないというのだ。
「別にね」
「そうか」
「そのムツゴロウも多分ね」 
 ニキータさんはこの魚についても言及した。
「泥臭いっていうか癖の強い味よね」
「実際にそうだ」
「美味しいにしても」
「癖の強い味であることは否定しない」
 僕もそう思う、僕はムツゴロウも好きだけれど癖の強い魚であることは否定出来ない。泥抜きも必要だと聞いている。
「他の魚とは違う」
「それじゃあね」
「いいか」
「うん、別にね」
 こう井上さんに答えた。
「いいわ」
「そうか」
「癖の強い魚はブラジルに多いしね」
「アマゾンにか」
「これが結構多いのよ」
「そうだろうな、あそこはな」
 アマゾンの魚についてだ、井上さんは当然といった口調で述べた。
「大河だからな」
「泥も多いし」
「それが河の色にもなるな」
「こんなに青くないから」 
 佐世保のその青いきらきらと輝く海を見下ろしながらだ、ニキータさんは井上さんに話した。
「とてもね」
「その分だな」
「お魚の味も癖があるの、それに」
「虫か」
「あっ、わかるの」
「川魚は虫が多い」
 井上さんは腕を組んだ姿勢で答えた、そうしつつも座っている場所は窓際で景色を見続けている。実は僕の隣の席だ。ニキータさんは井上さんの向かい側の正面の席にいる。 
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