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風魔の小次郎 風魔血風録

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79部分:第八話 聖剣伝説その二


第八話 聖剣伝説その二

「次の試合は将棋」
「将棋ですか」
「こちらからは二人、補佐として攻介を出します」
 そのことを今決定した。
「それで宜しいですね」
「それで宜しいかと」
 陽炎は夜叉姫のその指示に小さく礼をして応えた。
「では早速」
「風魔の奴等を切り刻む準備をしておきます」
「頼みますよ。近頃制圧した地域での不穏な空気がさらに高まっています」
「確かに」
 陽炎は夜叉姫の今の言葉にも頷く。
「ただ。それですが」
「何か?」
「考えようによっては時期かも知れません」
「時期とは」
「これはまだ私の憶測に過ぎませんが」
 一応はこう断る。そのうえで言葉を続ける。
「近頃各地達の忍がその本拠地を何者かに襲われ壊滅していっています」
「それですか」
「それを考えれば一旦この誠士館に戦力を集中させるべきかも知れません」
「この誠士館にですか」
「そうです。確かに我等八将軍のうち六人が負傷」
 これはどうしようもない事実であった。
「しかし同志達の数は健在です」
「彼等もここに呼び戻すのですか」
「必要とあらば。そうするべきかと」
「必要とあらばですか」
「そのうえで。黄金剣と風林火山以外の聖剣のことも調べておくべきかと」
 陽炎はこのことも提案してきた。
「確か聖剣は十本あった筈」
「はい」
 夜叉姫はそのことを知っていた。
「後の八本がどうなっているか。そして機会があれば」
「それを我々が手に入れるべきというのですね」
「その通りです。如何でしょうか」
 ここまで述べたうえで夜叉姫に対して問う。
「これは」
「それにです。姫様」
 今度は妖水が夜叉姫に述べてきた。
「何ですか、妖水」
「あの連中の目撃例がさらに増えています」
「あの連中!?まさか」
「そうです、銀色の髪と目を持ち白い超長ランの男達です」
 彼はその者達のことを報告するのだった。
「我等の制圧地域にも頻繁に」
「そうですか。一体何者なのか」
「そのうえ伊達総司も動いています」
「あの男も」
「この前は白霊山の麓にいたそうです」
「白霊山」 
 その山の名を聞いて夜叉姫の顔がいぶかしげに歪んだ。
「確か魔物が宝を守っているという」
「そうです。その白霊山にです」
 そのことを夜叉姫に教える。
「あと。あの男を北の氷の世界で見たとの話も」
「伊達総司。一体何を」
「そういえば姉上」
 壬生が夜叉姫に対して問うてきた。
「あの男は忍ではありませんでしたね」
「ええ、そうです」
 壬生に対してこう答えた。
「そこにいる武蔵と同じです」
「そうですか。同じですか」
「ただ。何か特別な剣を持っているようですが」
「剣を」
「それを見て生きていた者はいません」
 こうも言う。
「剣を」
「そうです。ですがあの男がそれを抜く時はかなりの時でしかもそれを抜いたならば相手は必ず倒れるので」
「見た者は生きていないのですか」
「はい。そうなのです」
「よくわからぬ男だ」
 武蔵が言ってきた。
「俺も噂に聞いているだけだしな」
「武蔵、御前もなのか」
「そうだ。ただ、これもまた噂だが」
 武蔵は壬生に応える形で言葉を続ける。
「伊達一族で生き残っているのはあの男一人らしい」
「一人だというのか!?」
「詳しいことはわからない」
 彼でさえ知っていることはここまでであった。
「あまりにも謎の多い男だからな」
「そうか」
「謎が多いのは聖剣も同じ」
 夜叉姫は聖剣に話を戻してきた。
「では陽炎」
「はっ」
 そのうえでまた陽炎に声をかける。陽炎もそれに応え小さく一礼する。
「貴方には聖剣に関する情報収集も命じます」
「お任せ下さい」
「果たして何本あるのか。それに」
「どういった存在かです」
「それがわかることを期待します」
 夜叉姫のこの言葉で話は終わった。彼等は散開しそれぞれの任務に就く。小次郎はこの時柳生屋敷において一人素振りに励んでいた。学ランを脱いで黙々と素振りをしている。時折石の灯篭を木刀で割ろうとするがそれはかなわず木刀を壊してしまう。だがそれでも次の木刀を出してそれを続けるのだった。
 
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