風魔の小次郎 風魔血風録
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78部分:第八話 聖剣伝説その一
第八話 聖剣伝説その一
第八話 聖剣伝説
「そうですか、黒獅子は」
「はい、見事な闘いでした」
夜叉姫の前に武蔵と壬生がいる。二人で報告していた。
「傷も浅いもので済みました」
「それは何より。しかし」
夜叉姫はここで言うのだった。
「夜叉八将軍これで残るは二人」
「はい、確かに」
「まさかここまで」
「不知火達の復帰はまだなのですね」」
「今暫く時間がかかります」
武蔵が報告する。
「ですがその間に」
「風魔の負傷者二人も復帰すると」
「林彪は間も無くです。それに」
次に壬生が述べるのだった。
「項羽もまた。そろそろ里より出るそうです」
「それではです」
夜叉姫はそれを聞いて言うのだった。
「武蔵、私に考えがあります」
「お考えですか」
「そう。壬生を連れて柳生屋敷に行きなさい」
こう命ずるのだった。
「よいですね。二人で」
「二人でですか」
「姉上、それでは」
「攻介」
あえて弟の名を呼んでみせる。そのうえで彼の目を見ての言葉だった。
「どうして貴方に黄金剣を授けたかわかっていますね」
「はっ」
畏まって姉の言葉に応える。
「無論です」
「ではわかっている筈です。貴方達二人で」
さらに言葉を続ける。
「風魔の者達を一人でも多く倒しなさい。そして」
「そして?」
「柳生屋敷にあるもう一本の聖剣風林火山」
「風林火山!?」
その名を聞いた壬生の顔が一変した。
「姉上、今何と」
「聞こえた筈です。風林火山です」
夜叉姫はまた言ってみせる。
「それがあの柳生屋敷にあるのです」
「馬鹿な、そんな」
「いや、本当のことだ」
ここで部屋に入って来る者達がいた。陽炎と妖水だ。陽炎の言葉だった。
「陽炎」
「白虎が見たのだ。風林火山をな」
「北条家があれを持っているという噂は聞いていたが」
「北条家の代々の腹心柳生家」
また夜叉姫が言った。
「持っていても不思議ではないでしょう」
「それはそうですが」
「本来ならば八将軍全員を入れて総攻撃とするべきなのですが」
こう述べたところで夜叉姫の顔が不吉に曇る。
「こうなること自体が予想していませんでした」
「戦死者がいないだけでも宜しいかと」
壬生は目を閉じ沈痛な顔で姉に述べた。
「風魔九忍、やはり相当なものです」
「確かに。しかしだからこそ」
「はい、お任せ下さい」
壬生が答える。
「この壬生攻介、必ずや風魔の者達を」
「頼みますよ。武蔵」
夜叉姫は今度は武蔵に顔を向けた。武蔵もそれに応える。
「はい」
「貴方もです」
あらためて彼に出撃を告げるのだった。
「今度の作戦で一人でも多く風魔を」
「わかっております。何としても」
「特に狙うべきは」
「誰でしょうか」
「竜魔」
夜叉姫が出した名前はそれであった。
「九忍の筆頭であり総帥の補佐役でもあるあの男を。倒すのです」
「竜魔をですね」
「できますね」
その美麗な目をここでも不吉なものにさせていた。目の光は強いがそれは剣呑なものである。そこには焦りと危惧が浮かんでいた。
「そのうえで風林火山もまた手に入れる」
「風魔の者達に気付かれないうちに」
「その通りです。それでは二人共行きなさい」
「はっ」
「わかりました」
二人は夜叉姫に対して応える。
「陽炎、妖水」
「はい」
「何でしょうか姫様」
「貴方達は次の作戦への出陣の用意をしておきなさい」
二人への指示はこれであった。
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