夢幻水滸伝
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第五話 出雲へその三
「そこは覚えておくんや」
「よおわかったわ」
「それで三十人位はな」
これ位はというと。
「まさに一瞬で終わるからな」
「安心してええか」
「ああ、ほな呼び寄せてな」
「そしてか」
「一網打尽にしよか」
「その方が後腐れもないし」
「ああ、やったるで」
こんな話をしてだ、鵺は中里を乗せてだった。
森の中を進んでいった、そしてやけに粗末な小さな砦の様な建物の前に来た。鵺はその前に来て自分の背にいる中里に言った。
「ここや」
「そこにおるか」
「それでや、今から呼び寄せるからな」
「ここのならず者全員か」
「ここから出てる奴等もや」
「全員呼び出してか」
「それで頼むで」
呼び寄せた者全員をというのだ。
「自分にやってもらうからな」
「わかった、じゃあ呼んでくれや」
「そうさせてもらうわ」
鵺は口を開いた、そして。
何か得体の知れない鳥のそれを思わせる声を出した、すると。
忽ちだ、砦の中と森の中からだ。人間だけでなくエルフやドワーフ、オーク等の柄の悪そうな者達が出て来てだった。
そのうえでだ、中里と鵺を見て言った。
「何だこいつ等」
「はじめて見る連中だな」
「侍と何だこの魔物」
「見たことがないな」
こう口々に言う、手には刀や槍、弓矢等がある。
「何か知らないが着けている具足いいな」
「それに刀もな」
「これは高く売れるな」
「そうだな」
「じゃあ殺っちまってな」
中里を見て残忍な笑みを浮かべた。
「そしてだな」
「ああ、どっかで売っ払おうぜ」
「そうしてやるか」
「よく一人で来たもんだ」
「迷い込んだみたいだがな」
「まあこんな連中や」
鵺はならず者達の言葉が一段落したところで中里に言った。
「お約束やろ」
「こうした連中はな」
「何処でもおるからな」
「ほんまにお約束やな」
「それで今からや」
「ああ、僕一人でやな」
「一瞬で終わらられるからな」
それこそというのだ。
「安心してればええわ」
「ほなやろか」
「あの建物は壊さん方がええ」
鵺は彼等の砦、非常に粗末なそれを見て言った。
「あそこに何かあるかも知れん」
「この連中が近所の村の人達から奪ったもんか」
「そや、銭とか食いものとかな」
「そういうのがあるかも知れんからか」
「それでや」
だからこそというのだ。
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