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風魔の小次郎 風魔血風録

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30部分:第三話 忍の掟その八


第三話 忍の掟その八

「超長ランは我等夜叉一族や飛騨一族が着ているが」
「白というのは聞いたことがないぞ」
「何処の忍だ」
 彼等は顔を見合わせて言い合う。
「その様な忍がいるのか」
「わからん。その男は銀色の髪と目を持っていたらしい」
「銀色の」
 彼等にしてはさらにわからない話だった。
「また話がわからないぞ」
「何なのだ、一体」
「何者かわからないからだ。今は戻れ、いいな」
「夜叉姫様を御護りするのだ」
 壬生もまた八将軍に告げた。
「いいな、それは」
「わかった」
「夜叉姫様は。何としても」
 彼等にとっては絶対の存在だ。その彼女をないがしろにすることは考えられなかった。それは彼等が夜叉一族であることの何よりの証だった。
「では戻るぞ。・・・・・・むっ」
 武蔵が告げたその時だった。また風魔の方から一陣の風がやって来た。それは。
「面白いことになってるみたいだな」
「その声は」
「来たか」
 竜魔と劉鵬がその声に振り向く。するとそこには黒い髪をリーゼントにし右肩に木刀を担いだ精悍な長ランの男がいた。彼こそは。
「林彪、いいタイミングで来たな」
「遅れてすまんな、項羽」
 まずは項羽に挨拶をした。
「風魔九忍の一人林彪、只今到着だ」
「また一人獲物が来たと言いたいが」
「今はな」
 陽炎と妖水は歯軋りする顔で呟くだけだった。
「本陣に何かあっては話にもならん」
「夜叉姫様を御護りせねばな」
「誰が残る」
 ここまで話したうえで互いの顔を見合う。
「一人だ」
「誰がいいか」
「不知火」
 武蔵はここで不知火に顔を向けた。
「御前が行け」
「俺でいいのだな」
「元々御前に出した任務だ。そのまま行け」
「わかった」
 不知火は武蔵の今の言葉を聞いて楽しげな笑みを浮かべた。闘いを楽しみと感じている笑みだった。
「では喜んでな」
「他の者は戻るぞ」
 武蔵はあらためて他の面々に告げた。
「何者かわからん。急ぐぞ」
「うむ」
「ではな。風魔よ」
 紫炎が忌々しげに彼等に捨て台詞を送った。
「また会おう。その時こそ」
「貴様等の最期だ」
 最期に闇鬼が告げる。彼等にしては不本意だがこれで姿を消すのであった。後には風魔の面々と不知火だけが残った。
「さて、とだ」
 まずは劉鵬が口を開いた。
「誰が闘うかだな」
「今まで闘っていたのは俺だが」
 竜魔が言う。
「どうするか」
「じゃあ俺がよ」
「だから御前は駄目だって言ってるだろ」
 また小次郎が劉鵬に怒られた。
「本当にわからない奴だな」
「ちぇっ、何か俺最近ボロクソじゃねえか」
「そんなに暴れたいのなら刑事にでもなるんだな」
 項羽が突っ込みを入れる。
「まあとにかく誰がやるかですけれど」
「誰がいく?」 
 麗羅と兜丸が周りを見る。ここで霧風が言った。
「林彪。どうだ」
「俺か」
「そうだ。来て早々に悪いがな」
「いや、それはいいさ」
 自信に満ちた笑みを浮かべながら霧風のその言葉に応える。
「俺も闘いたくてうずうずしていたしな」
「そうか」
「竜魔」
 林彪は今度は竜魔に顔を向けた。
「この闘い貰い受けていいな」
「ああ、俺は構わない」
 竜魔は一言で答えた。
「御前が望むのならな」
「わかった。じゃあ御前は」
「俺も構わない」
 相手である不知火もまた不敵な笑みを浮かべていた。
「むしろ風魔の中で最も優れた体術を持つ林彪が相手ならばな」
「そうか。御前がそう言うのなら余計にな」
 林彪は不知火のその言葉を聞いてさらに笑う。闘いを前にした笑みだった。
 
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