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風魔の小次郎 風魔血風録

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31部分:第三話 忍の掟その九


第三話 忍の掟その九

「俺で決まりだな。よし、皆」
「ああ、わかった」
「屋敷で待っているぞ」
 風魔の面々は林彪の言葉に応える。そうして先程の夜叉の面々と同じく姿をけしたのだった。残ったのは林彪と不知火だけだった。二人はあらためて対峙した。
「まさか御前と闘うことになるとはな」
「期待していたぞ、俺は」
 不知火は笑いながら林彪に言葉を返した。
「御前と闘うことをな」
「確かにな。悪くはないな」
 林彪も彼と同じ笑みで応える。
「夜叉一族の中で最も体術に優れているのだったな」
「俺に接近戦で勝てる者は八将軍にもいない」
 断言さえした。
「さて。どちらが勝つか」
「勝負するか」
 お互い身構えた。林彪は木刀を両手に持ち身体を屈める。不知火は右手の木刀を前に出し左手の呉釣を後ろに構える。そのまま互いに気を溜める。
「行くぞ」
「来い」
 最初に動いたのは不知火だった。激しく回転しつつ空中を舞い竜巻の様な動きで林彪に襲い掛かって来た。
「むっ!?」
「これが貴様にかわせるか」
 言いながらその攻撃を浴びせる。両手で激しい動きを繰り出すのだった。
「くっ!」
「どうした林彪!」
 木刀で防戦一方の林彪に対して問う。
「その程度か。風魔の剣術は!」
「まだだ!」
 だが林彪もそれに言葉を返す。言葉と共に攻撃も。
「この程度で俺を倒せるか!」
「この程度か・・・・・・うっ!」
 突きを出す。それが不知火を襲うのだった。
「くっ、この突きは」
「どうだ」
 一撃腹に受けた。それで不知火は動きを止め地に下りる。一瞬倒れ込もうとするがそれは何とかしのいで立つのだった。
「今の攻撃を防いで一撃を入れるとはな」
「そちらもな」
 林彪は動きを止めて不知火に応えた。その右肩が切り裂かれそこから血を流すのだった。
「どうやら腕は互角か」
「その様だな」
 互いに見合う。それと共に実力を確かめ合うのだった。
「どうやらな」
「そうだな。しかしだ」
 両者はそれでもまた構えに入る。またしても先に動きを見せたのは不知火だった。
「だが最後に勝つのはこの不知火だ。見せてやろう
「見せるだと」
「そうだ。この不知火の最大の技」
 全身にこれまでよりも激しい気が見えた。
「行くぞ、林彪!」
「何っ!」
「夜叉死霊斬!」
 技の名を叫ぶと共に呉釣を投げそれを追うようにして突進する。激しい突きを繰り出しそれを出して林彪を倒そうとする。まずは呉釣が林彪を襲った。
「この程度!」
「甘いぞ林彪!」
 呉釣を打ち落とした林彪にさらに不知火自身が襲い掛かる。
「それは囮よ。本命はこの不知火!」
「しまった!」
「これで貴様も終わりだ。覚悟しろ!」
 無数の突きが正面から襲い掛かる。これは林彪自身もかわせるものではないとすぐに察知した。それで。彼は賭けに出たのだった。
「ならば・・・・・・俺も!」
「何をする気だ」
「知れたこと。俺も技を出す」
 これまでの屈んで刀を右に掲げたものから居合いにしたのだった。
「この林彪の技。今ここで出そう」
「御前の技。それは」
「これだ。行くぞ!」
 林彪の方から前に出た。
「風魔天狼牙!」
「なっ!」
 居合いで木刀を一閃させた。それは不知火の激しい突きの嵐をも退け彼を切ったのだった。一条の光が彼を貫いた。
 動きは止まった。両者は交差したまま動かなかった。だがやがて。不知火がその身体をゆっくりと前に倒していき崩れ去ったのだった。
「・・・・・・見事」
「貴様もな」
 林彪の左頬が切れそこからも血が出る。それだけでなくその長ランも所々が裂かれていたl不知火の攻撃による風圧からのものであった。
「あと一瞬遅かったならば倒れていたのは俺だった。しかも」
 林彪はさらに言う。
「急所を咄嗟に外すとはな。流石だ」
「俺も負けだ」
 倒れ伏して林彪に告げる。
「止めをさせ」
「悪いが。それはまた今度は」
「どういうことだ」
「俺にもその余力はない」
 そうなのだった。不知火の攻撃を受けた結果だった。
「だが俺の勝ちだ。これで夜叉八将軍は残り七人だ」
「くっ・・・・・・」
「少なくとも暫く出ることはできまい。違うか」
「そうだ。だが」
 不知火も言う。
「次に出て来た時は。覚悟しておけ」
「覚えておこう」
 勝利を収めた林彪は風と共に消えた。後には倒れ伏す不知火だけがいた。風魔と夜叉の戦いはまずは風魔に軍配があがったのだった。


第三話   完


                 2008・4・16
 
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