風魔の小次郎 風魔血風録
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26部分:第三話 忍の掟その四
第三話 忍の掟その四
「それはまたよ。勉強になるな」
「・・・・・・ところでだ小次郎」
竜魔は鯵を食べながら小次郎に問う。
「何だ、兄ちゃん」
「あの時の鯉は大丈夫なのだろうな」
「大丈夫って何がだよ」
「虫だ」
食事の時にはあまり相応しくないものだった。だが竜魔はそれをあえて問うのだった。
「それは大丈夫だったのだろうな」
「鯉って虫いるのか?」
「・・・・・・こいつは」
項羽も遂に呆れてしまった。
「それ位知っておけ。食あたりどころじゃ済まんぞ」
「ちぇっ、何か今日俺ボロクソだな」
そう言いながらも飯を貪る。それが終わってから竜魔から木刀を受け取って庭で素振りをする。その時屋敷に姫子が一人で来た。
門を潜り中に入ると。早速風魔の忍達が彼を取り囲んだ。そのうえで劉鵬が彼女に問うた。
「白凰の学生とお見受けするが」
「誰ですか?」
麗羅が人なつっこく彼女に問う。今いるのはこの二人と兜丸に項羽であった。
「北条姫子と申します」
姫子はその彼等ににこりと笑って名乗った。
「というと総長様で」
「ええ、そうですけれど」
今度は兜丸に対して答えた。
「ところで貴方達は」
「我々は」
「あっ、わかりました」
項羽が答えるより前に彼女の方から言ってきた。
「小次郎さんのお友達ですね」
「え、ええまあ」
「そんなところです」
四人は姫子の雰囲気に飲み込まれていた。忍である彼等にとっては珍しいことに。
「そうですか。それでですね」
「はい」
姫子のペースのまま話は進む。
「小次郎さんはどちらでしょうか」
その時小次郎は。自分の部屋の布団を畳んでいた。それから屋敷を出ようとしていた。
「小次郎」
その小次郎に蘭子が後ろから声をかけてきた。
「行くのか」
「ああ、今度の試合はボーリングだったよな」
「そうだ」
小次郎のその問いには隠すことなく答えた。
「また誠士館との戦いだ」
「向こうも何かと色々スポーツやってるんだな」
「純粋にスポーツ校としてはかなりの強さだ」
蘭子もそれは認めていた。
「ただそれだけではないのが問題なのだがな」
「だからだよ」
小次郎は布団を畳み終えると立ち上がった。その右手に木刀を持って誇らしげに言う。
「あの連中をぶっ潰しに行くんだよ」
「その怪我でか?」
蘭子は顔を顰めさせて小次郎に問うた。
「幾ら何でも無理だろう。飛鳥武蔵だけではないのだよ」
「そんなの関係ねえよ」
それを聞く小次郎ではなかった。
「出て来た奴等を片っ端から潰すだけだよ」
「そうなるとは思えないがな」
「とにかくだ。今から行くからな」
「待て」
しかしここで。また一人やって来た。
「小次郎、行く前に聞きたいことがある」
「兄ちゃん、またかよ」
小次郎は顔を顰めさせてその顔を竜魔に向けた。
「今度は何なんだよ」
「御前に聞きたいことがある」
真剣な顔と声で竜魔に対して問うてきた。
「御前にとって忍とは何だ」
「忍かよ」
「そうだ」
それをまた言う。
「答えよ。それは何だ」
「そんなの決まってるじゃねえかよ」
小次郎は軽い調子で竜魔に言葉を返してきた。
「忍術で敵をバッタバッタと薙ぎ倒していくスーパー戦士だよ」
派手に両手で木刀を振りながら言葉であった。
「そうじゃねえのかよ」
「馬鹿を言え」
竜魔は小次郎のその言葉を一言で完全に否定した。
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