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風魔の小次郎 風魔血風録

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27部分:第三話 忍の掟その五


第三話 忍の掟その五

「そんなものは忍ではない」
「ちぇっ、じゃあ何なんだよ」
「自分で考えることだ」
 それには答えようとはしない。しかしさらに言葉は続けた。
「それがわからなければ」
「わからなければ」
「御前に忍を名乗る資格はない」
「な、何だよ」
 自分の顔の前に木刀を指し示すように突き出してきた竜魔に対して言い返す。
「資格がねえって。一体よ」
「人知れず戦い味方に勝利をもたらす」
 竜魔は言う。
「それが忍だ」
「何だよ、そんなことかよ」
 小次郎は今の竜魔の言葉を聞いて何だといった顔になった。それでまた言葉を返すのだった。
「そんなのわかってるって。全然大丈夫だよ」
「いや、わかっていない」
 それでも竜魔は言うのだった。
「わかっていない以上御前を出撃させるわけにはいかない。蘭子さんにも聞いた」
「えっ、蘭子にかよ」
「御前の戦い方は忍の戦いではない」 
 こうも言うのだった。
「ただの喧嘩だ。喧嘩は忍のすることではない」
「ちぇっ、何か俺ボロクソだな」
「あっ、ここですか」
 姫子が部屋の中に入って来た。するとそれだけで小次郎の顔が一変する。
「ひ、姫様」
「小次郎さん、怪我をされたそうですが」
「いやいや全然」
 姫子の顔を見て完全に態度が変わりついでにその痛みも殆ど忘れた。実に便利な身体だ。
「姫様の為なら全然大丈夫、ノープロブレムですよ」
 手と足を派手に動かして言う。
「ですから今度の助っ人も」
「そうですか。じゃあボーリングの試合も」
「いえ」
 しかしここでその竜魔が出て来た。
「小次郎は怪我をしています。ですからこの私が」
「貴方は」
「竜魔」 
 姫子に対して名乗った。
「助っ人に行かせてもらいます。小次郎に代わって」
「はあ」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ」
 小次郎は竜魔の助っ人申し出を聞いて焦る。しかしもうどうしようもなかった。
「俺のメルヘンが・・・・・・」
「俺のじゃないだろ、馬鹿」
 また蘭子に頭をはたかれる。それが小次郎にとって追い討ちとなった。
 絵里奈は眠っていた。その横には武蔵がいる。
「お兄ちゃん・・・・・・」
「大丈夫だ、絵里奈」
 武蔵は優しい言葉をかけてうなされている絵里奈を見ていた。
「お兄ちゃんはここにいるからな」
「風が来るよ、風が」
 だが絵里奈はまだうなされていた。夢の中で風を感じ続けていたのだった。
 ボーリングの試合。試合場の中では白凰と誠士館双方の生徒と選手がいた。姫子もその中で選手の服を着ている。白いミニスカートが映えている。
「姫子様はサッカー部ではなかったのか」
「助っ人だ」
 竜魔に対して横にいる蘭子が答えた。
「怪我人がいるからな」
「やはりそれは」
「証拠がない」
 一言だった。
「相変わらずな」
「そうか。やはりな」
「今回の試合もおそらくは」
「わかっている。いるぞ」
「いる!?何処にだ」
「少し。行って来る」
 竜魔はこう言うと踵を返した。そうして試合の場を去る。
「また後でな」
「わかった」
 竜魔が姿を消した。姫子はそれに気付くことなくボーリングのボールを投げた。ボールは奇麗に入りストライクを取るかと思われた。しかしその手前で急にカーブしてガーターとなったのだった。
「えっ!?」
「あれっ、おかしいな」
「そうよね」
 姫子だけでなく観客席からも選手達からも声があがる。あまりにも不自然なカーブだったからだ。
「どうしてかしら」
「やはりな」
 姫子はわからなかったが蘭子にはすぐに察しがついた。
「そういうことか」
「ならもう一度」
 また姫子は投げた。今度も奇麗なストライクだ。しかし今度は何と通り抜けた。流石に今回ばかりは皆目を疑った。
「何なんだ、今のは」
「一体」
「通り抜けたなんて」
「何だよ、やられっぱなしじゃねえか」
 ここで小次郎が出て来た。それで姫子のところに来て言うのだった。
「夜叉の奴等によ。じゃあここは俺が出て来てスコーーーンとストライクをだな」
「馬鹿、何度殴らせるつもりだ」
 また蘭子が出て来て小次郎の頭の後ろをはたく。
「毎回毎回。寝ていろって言われただろうが」
「何だよ、また殴りやがって」
「私が殴るのは御前だけだぞ」
 実はそうなのだった。
「弟にすら手をあげないというのに」
「御前弟もいたのかよ」
 どうやら蘭子は男兄弟の中にいるらしい。
「そうだ。全く」
「とにかくよ。夜叉がいるぜ」
 小次郎はそれはわかっていた。
「ちょっと行って来るな」
「行って来るなってそれも」
「兄ちゃんにいい格好させてたまるかよ」
 蘭子の話を聞かずにもう動いていた。
「姫様の前ではよ。この小次郎様が」
「全く。何処まで馬鹿なんだ」
 蘭子の呆れる言葉も聞かない。しかし小次郎はそれでも行くのだった。
 
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