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風魔の小次郎 風魔血風録

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129部分:第十二話 聖剣の真実その三


第十二話 聖剣の真実その三

 その誠士館では。今八人の戦士達が夜叉姫の前に片膝をついて控えていた。
「よくぞ戻って来ました」
「はっ、申し訳ありません」
「御迷惑をおかけしました」
 戦士達は夜叉姫の言葉に応えて顔を上げた。見れば彼等は八将軍だった。
「姫様、今こそ決戦の時です」
「次の剣道の試合」
 陽炎と黒獅子がまず口を開いたのだった。
「この誠士館で行われます」
「今度は全員で出陣します」
「八将軍全員がですか」
「如何にも」
 闇鬼の光がない筈の目が光った。
「我等八将軍の誇りにかけて」
「風魔の奴等を一人残らず」
 今度口を開いたのは不知火だった。
「この拳で倒してみせましょう」
「姫様」
 雷電もいた。
「風魔は七人。それに対して十人」
「確かに彼等は手強いです」
 紫炎はそれは認めた。
「ですが我等は八将軍。一度見た技は通用しません」
「そして我等は十人」
 白虎はそこを強調する。
「数のうえでも優勢です。ですから」
「勝利は確実だというのですね」
「その通りです」
 妖水は不敵な笑みを浮かべていた。血に餓えた笑みであった。
「我等八将軍が全員いれば今度こそは」
「姫様」
 壬生はここでは己の姉をあえてこう呼んだ。彼と武蔵は並んで部屋の隅に立っていた。
「是非。我等に出陣命令を」
「最後の決戦ですね」
 夜叉姫もまたそれを察していた。その目が光る。
「この誠士館で」
「おそらく風魔も全員出て来るでしょう」
 武蔵が言った。
「彼等もまたこの戦いで決着をつけるつもりです」
「そうですか。やはり」
「では姫様、これしかありません」
 陽炎がまた夜叉姫に述べてきた。
「我等も。総員を動員して」
「では貴方達十人を」
「いえ、違います」
 しかしここで彼は言うのだった。
「そうではありません。我等夜叉一族百八人全員をこの誠士館に集めるのです」
「何っ!?」
「馬鹿な、陽炎」
 今の陽炎の言葉には夜叉姫だけでなく部屋にいる全ての者が血色を変えた。
「同志達全てを集めるなどと」
「気は確かか」
「頭がおかしくてこの様なことは言わぬ」
 だが陽炎の顔には涼しげな笑みさえあった。
「決してな」
「では一体」
「何を考えているのだ」
「まずは風魔の者達に対する戦術だ」
「戦術だと」
「そうだ。風魔の者達が来るな」
 まずはそれであった。
「あの者達に我等の数を見せて心理的に圧迫を加えるのだ」
「ふむ、そうか」
 闇鬼はそれを聞いて納得したように頷いた。
「そういうことならな。悪い戦術ではない」
「風魔は七人」
 紫炎はまたこのことに言及した。
「我等百八人を揃えてはやはりプレッシャーをかけることになるな」
「果たしてそうなるかどうか疑問だがな」
「そうだな」
 だが白虎と黒獅子はこれには懐疑的だった。
「風魔の中でも精鋭の奴等だ」
「その連中にプレッシャーを与えられるか?」
「無論それも考えてある」
 やはり陽炎はここでも涼しい顔だった。
 
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