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風魔の小次郎 風魔血風録

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128部分:第十二話 聖剣の真実その二


第十二話 聖剣の真実その二

「八将軍の奴等、一人でも」
「いや、俺だ」
 続いて名乗り出たのは劉鵬だった。
「黒獅子が出て来るのなら都合がいい。今度こそ決着をつけてやる」
「甘いな」
 霧風はその二人を笑っての名乗りだった。
「私は八将軍全員を倒してみせるぞ。この霧の中でな」
「何だよ、皆俺を忘れてねえか!?」
 小次郎も小次郎で名乗り出る。
「俺だってな。この風林火山でな」
「御前は駄目だ」
 その彼を林彪が止める。
「何でだよ」
「馬鹿だからだ」
 林彪の言葉は実に容赦がない。
「だから駄目だ」
「馬鹿っておい」
 小次郎はさらにむっとした顔になって林彪に言い返した。
「それが理由になるのかよ」
「まあ駄目だっていうのは冗談だがな」
 林彪はまずはそれは否定した。
「しかしだ。気をつけろよ」
「あっ、ああ」
 何とか機嫌を元に戻しつつ林彪に言葉を返した。
「わかったぜ。それはな」
「夜叉は十人」
 竜魔はそこをあえて強調した。
「それに対して我等は今七人。数での劣勢は否めないのだ」
「十人対七人かよ」
 小次郎はまたそのことを心に刻み込むのだった。というよりはその心に刻み込まれたと言ってよかった。やはり数の問題があるのだった。
「下手に動けばその数に敗れる」
「例えばだ。小次郎」 
 今度は劉鵬が小次郎に対して言ってきた。
「俺が黒獅子と不知火を相手にすることになる」
「ああ」
「一人ずつ相手にするにしてもこれはかなり辛いな」
「まあそうだよな。俺だったら壬生と武蔵の野郎両方相手にできるがな」
「だからその考えが駄目だというんだ」
 項羽は内心呆れたが表情は変えずに小次郎に言ってきた。
「御前はな。一度に二人も相手に出来るものか」
「だから俺とこの風林火山があればよ」
「御前、本当に連れて行かないぞ」
 小龍も呆れていた。
「そんなことでやっていける筈がないだろう」
「へっ、じゃあ一人ずつ相手にしてやるさ」
「そうしろ」
 霧風の言葉は醒めていた。あまり小次郎に関心がないようにすら見えるものだった。
「さもないと今度こそ死人を出すようになるからな」
「俺が死ぬっていうのかよ」
「幸い今は犠牲者は出ていない」
 竜魔はそれはいいとした。まずは、といった感じで。
「しかしだ。何度でも言うぞ」
「あっ、ああ」
 小次郎もまた彼のその言葉を聞く。
「忍の闘いは生きるか死ぬかだ」
「生きるか死ぬか」
「兜丸にしろ麗羅にしろだ」
 最初にこの二人について言及される。
「そして今ここにいる項羽と林彪にしろだ」
「下手すれば死んでたっていうんだな」
「その通りだ。そして小次郎」
 竜魔は今度は小次郎自身に対して声をかけた。
「御前もまたそれはわかっている筈だ。その身を以ってな」
「ああ、それはな」
 顔を少し俯けさせて応えた。応えるしかなかった。
「あの時。俺はもう少し遅かったら」
「だから。決して慢心するな」
 小次郎をその左目で見ての言葉だった。
「そして油断もするな。いいな」
「わかったよ。じゃあ今度の出撃だってそれかよ」
「わかったら大人しくしろ」
「いいな」
 項羽と小龍が小次郎に言った。
「御前も風魔の兄弟だからな」
「死ぬなのよ」
「死ぬなか」
「わかったらだ」
 霧風は話が終わったところでまた口を開いてきた。
「出陣の準備に入る。いいな」
「うむ」
 竜魔がそれに応えた。
「では行くぞ、誠士館に」
「敵の本城に」
 今風魔の戦士達は決戦に向かう決意を固めた。彼等はそれぞれの全力を尽くして戦いに向かうことを心に定め今立ち上がったのであった。
 
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