ブレイブソード×ブレイズソウル~偽剣と共に歩む者~
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力の使い方
あれから一日…折れていた左腕はすっかり元通りになり、なんの問題もなく動かせるようになっていた
そしてまたあの森へ向かって特訓開始…なのだが
「さて、何から始めようかしら」
いきなりコレである、特訓すると言った本人が何も考えていないのは如何なものか…
「…考えてないのか?」
「………取り敢えず素振りでもしなさい」
「今絶対誤魔化したな…」
「何か言った?」
「いーえ、なにも…」
言われるままにブンッ、ブンッと両手で魔剣を前に振り下ろす
そのまま素振りを続けながら隣で俺を観察しているグラムサンタに声を掛ける
「なぁ…思ったんだけどさ」
「何?」
「この魔剣…見た目の割に軽くないか?」
そう言うと彼女は少し考える素振りをする
「それに関しては…何故かは知らないけれど、マスターには私に対して適正があるのよ
そうね…例えるなら【ソウル】みたいなものかしら」
「【ソウル】?」
「あら、マスターはソウルを知らないの?」
「あぁ…生憎、今まで一般人だったもんでなっ!」
ブォンッ、と一層気合を入れて振り下ろす
「装備するだけで強くなれる物、とだけ覚えていれば良いわ
――マスターの場合、貴方自身がソウルと化しているみたいだけどね」
「俺自身が…?」
「そう、その適性がなければ…多分私を振るうどころか持つことすら出来なかったでしょうね」
「もしかして、それも俺を選んだ理由の一つかっ?」
「まぁ…そうね」
…そのままお互い無言になり、俺は素振りを続ける
規則的な風切り音が静かな森の中に響く
――そうして数分、数時間だろうか?
ジッと素振りをしていた俺を目詰めていたグラムサンタがやっと口を開く
「そろそろ、ね…
素振りは終わりよ。次は戦い方の基礎ね
さ、早く魔剣を構えなさい…じゃないと、死ぬわよ?」
「は…?ってうお!?」
ヒュンッと鋭い風切り音が聞こえたかと思うといきなり白い魔力弾が後方へと抜けていく
「さぁ、ドンドン行くわよ?早く弾くなり斬るなり避けるなりしないと…貫かれるかもしれないわねぇ?」
そう言ってニヤリと微笑んだかと思うと、グラムサンタの周りに幾つもの魔力弾が生成され始める
「っ!イキナリ卑怯過ぎんだろ!?」
「口を動かす暇があるなら手と足を動かしなさい」
「鬼!悪魔!人でなし!!」
「残念、私は魔剣よ」
クネクネと、尻尾が揺れている
―――間違いない、コイツ楽しんでやがる
〜〜〜〜数時間後〜〜〜〜〜
「はぁ…はぁ…き、キッツ…」
「弱音を吐いてる暇は無いわよ
さて、今度は…貴方自身の魔力の放出の練習かしら」
キュッキュと何処から出したのか小さなホワイトボードにペンで【魔力放出練習(魔剣に纏わせる事が出来れば尚良)】と書き出す
さっきまで魔力弾を連射しまくってた割に全然消耗していない様子だ
「いくら何でもコレはハード過ぎじゃないですかね!?」
素振りはまだ良い…けど、そこからいきなり魔力弾ぶっ放してくるのはおかしいと思うんだ…
「あら、並の魔剣使いでもこれ位は出来るわよ?
それとも、何も出来ないままに死ぬのがお好み?」
「分かった、分かったから…
で、魔力放出って一体どうすれば良いんだよ?」
「どうって…こう、ドバーッて感じよ」
「大雑把過ぎるわ!?」
余りの説明の雑さに悲鳴の如く叫ぶ
いや…もうちょっと別の言い方無かったのか…?
「…仕方ないじゃない、私だってよく分からないのだから」
サッと目を逸らしながらそう言うグラムサンタ
それを呆れた目で見てから、取り敢えず自分なりの方法で魔力を放出する事にする
「…………」
――頭に浮かべるのは湖とそれを堰き止める門、そしてその門を開けるイメージ
だが、それだけでは駄目らしく、全く変化が起きていない
今度は湖にイメージを傾ける、湖の中は暗く、何も見えない
何処までも暗く昏く闇だけが続いている様だ
その闇を押し出すイメージでもう一度門を開ける
―――轟ッ!!!
その瞬間、夜の闇を凝縮した様な魔力が全身から吹き出す
その魔力の勢いで立っていた地面に若干ヒビが入る
「…成功したみたいね、言ったでしょう?ドバーッとするイメージだと」
フフン、とかなり大きめな胸を張りながらそう言うグラムサンタ、その尻尾も何処か嬉しそうにフリフリと揺れている
「…これが魔力?」
「そうよ、…マスターの魔力は真っ黒ね、これほど濃い闇の魔力を持っているのに私を扱えるなんて、ね…
――あぁ、マスター?それ以上は放出しない方が良い…「な、なんか力が抜けて…?」……遅かったみたいね」
倒れる寸前、グラムサンタが体を支えてくれた様で、地面に倒れはしなかった
「な、何が…?」
「初めて魔力を放出したから体がビックリしただけよ、休めば元に戻るわ」
「そ、そうか」
「そうね、少し休憩を入れてからまた始めるわ
今のうちに休んでおきなさい」
ポン、とこれまた何処から出したのか水筒を差し出してくる、中身は温かい紅茶のようだ
「あ、ありがとう…」
「紅茶は家の棚にあったものを適当に使わせてもらったわ」
この少女、もう家の物が何処にあるか把握している様だ
遠慮という物がもう少しあっても良いものなのだが…
ジトーっと隣で自分の水筒(恐らく俺の家にあったもの)を傾けている少女を一瞥してから一口飲む
「…美味しいな」
「あら、ありがとう」
紅茶をちびちび飲みながら、ずっと気になっていた事を口にする
「なぁ…その、そんな服で寒くないのか…?」
「えぇ、大丈夫よ」
…まぁ、寒さ以前にそんな露出の多い服で恥ずかしくないのか、とか色々聞きたかったが…
なんというか…疲れた
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
暫くして、体調も回復したので次の特訓である
「次はさっき放出していた魔力を魔剣に流し込んで頂戴
その際、さっきみたいに大量に垂れ流しにしていたらまた倒れることになるから気を付ける事ね」
「…こう…か…?」
ズズ…ズ…
黒い魔力が刀身を覆い尽くす、が次の瞬間浄化されたかの様に白い魔力へと変わる
「飲み込みが早いのね、少しは見直したわ
…じゃ、そのままさっきみたいに素振りしてみなさい」
「わ、分かった…」
カチャリ、と両手でその大剣を掴み、構える
「…はぁっ!!」
ザンッ!
瞬間、直線状にあった全てが【消し飛んだ】
文字通り、跡形もなく
「ふぅん…?予想以上の威力ね、これなら冥獣程度なら一撃かもしれないわ」
「………なんというか、スゲェな」
「それが魔力を乗せた斬撃の感覚よ、それをさっきみたいに溜めずに意識せずとも出来るようになりなさい
…それと、威力の調整も課題の一つね」
「…りょーかい」
また何気に無茶振りをされた気がするが、この際もうどうにでもなれ、である
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…今日はこの辺で終わりよ
まぁ、初めてにしては良く頑張った方ね」
その一言と同時に手に持っていた魔剣を手放して地面に転がる
「や、やっとか…長かった…」
「さ、早く帰るわよマスター
―――冥獣やモンスターにまた襲われたいのなら、そうして転がっているのも別に構わないのだけれど」
「わ、分かってるって…よっ…と!」
立ち上がると同時に横に置いていた魔剣を担ぐ
「そろそろ私は戻るわ、後は頼んだわマスター」
そう言うなりスゥっとグラムサンタの姿が掻き消える
魔剣の中に戻ったのだろう
「…コイツ、歩きたくないから戻ったんじゃ…?」
―――そうしてまた、一日が終わる…
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