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ブレイブソード×ブレイズソウル~偽剣と共に歩む者~

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記憶が無い…?



「ふぅん…ここがマスターの家、ねぇ…」

「…何か文句でもあるのか?」

「いえ?ただ…」

「ただ?」

「………少し殺風景ではなくて?」

「普通に文句あんじゃねぇか…!」

……あの後、あの森に居るとまた冥獣が現れそうだったのでこの少女…魔剣少女と共に自らの家に帰って来たのだが…

この少女、何の躊躇いもなく家へ上がりこみ、少し家の中を見渡すといきなりケチを付けてきやがったのだ
…いや、確かに家具などは必要最低限しか置いてはいないが…普通思ってても言うか…?

「はぁ…お前はもう少し遠慮と言うものをだな…」

そこまで言うと唐突に唇に人差し指を当ててくる少女
いきなりの事だった為、自分の頬が赤く染まっていることが見なくてもわかる

「…な、なんだよ…」

「【お前】じゃ、ないでしょう?私にはちゃんと名前があるの
さぁ、私の名前は?」

「…グラム、サンタ…か?」

「えぇ、正解よマスター」
そう言うとフフ…と微笑み指を離した
その際、更に自分の顔が赤くなったのが自覚できた
………我ながらチョロい、チョロすぎる…

「マスターは結構初心なのね、意外だったわ」

「う、うっせ…ほっとけ…」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

リビングへ移動し、お互いに椅子へ向かい合って座る
…ここでもコイツはなんの躊躇いもなく自分で椅子を引き、座りやがった

「………で?お前…じゃない、グラムサンタって…何者なんだ…?」
その図太さに呆れながら半眼で問い掛ける

「何者、と言われても
私は魔剣よ、マスター」

しれっとした顔で流される

「それは知ってる、…さっきの森での事…少なくともSランク、またはそれ以上の魔力だったんだぞ」

「あら、相手の力量を測ること位は出来るのね
てっきり、丸っきりのド素人かと思ったわ」

「その程度なら、な…
で、一体何をしたんだ?お前が現れる瞬間、空間を無理矢理こじ開けたような【歪み】が現れて、そこから破壊の嵐を撒き散らしやがったんだぞ…」

「…【歪み】、ねぇ…
…マスター、ちょっと良いかしら?」

「何だよ」

「その【歪み】の先に、何か見えなかったかしら?
…例えば、白い雪の街…とか」

「白い雪の街…?…いや、そんなものは見えなかったが…
…それと何か関係があるのか?」

「別に無いわ」
ピキッ
「………喧嘩売ってるのか?」
額に青筋を浮かべながら、笑顔で、極力笑顔で話し掛ける

「正直に言うと、私にも良く分からないわ」

「…は?」

「だから、記憶が無いのよ
――貴方が私に触った時以前の記憶が」
さっき言った、白い雪の街以外はね、と付け足す

「………あの時【使えそう】って言ってたのは?」

「単なる暇つぶしよ」

自らの尻尾をフリフリさせながらなんということはないと言う風に言ってのける

「何処から来たとかは?」

「覚えてないわ」

「自分の年齢は?」

「レディに年齢を聞くのは失礼よ?」

「……スリーサイズは?」

「…それは言う必要があるのかしら?」

ピーンと尻尾を立てながら良い笑顔を向けてくるグラムサンタ

「………本当に、何も覚えてないんだな?」

「えぇ、驚くほどに」

「はぁ…」

どうやら俺は冥獣よりも面倒くさく、とんでもなく大きい爆弾を、抱えているのかもしれない…

――――記憶喪失の魔剣少女、拾いました

――いやまぁ…ホントに記憶喪失かは、まだ分からないんだけど…ね




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「…で、これからどうするかだが…」

「その前にマスター、一つ良いかしら」

「何だよ…?」

「貴方、自分の左腕が折れていることを忘れていらっしゃらない?」

「…忘れてた」
思い出すと同時にズキズキと痛み出す左腕
…何で忘れてたんだ 

「…まぁ良いわ、マスター、コッチに手を出して頂戴」

「え?お、おう…」
言われるままに手を差し出す、すると

「……これを…こうかしら」
小さくブツブツと呟いたかと思うと俺の手に重ねるように差し出していた手から桃色の魔法陣のようなものが展開される

「これは…?」

「簡単な治癒魔法よ、数時間も安静にしていれば元通りになるわ」
綺麗な桃色の魔法陣が手の上でクルクルと回る

「あ、ありがとう…?」

「お礼を言われる程では無いわ
…それに、明日からは特訓があるのだから」

「特訓!?」

「えぇ、私を扱うなら最低限動きや使い方位はマスターして貰わないといけないわね
……また襲われたときに死んでしまうかもしれないでしょう?」

「あの時は!…たまたま、冥獣が居ただけで…」

「また現れないと、そう言い切れるかしら?」

「……………」

「…自慢ではないけれど、私はそれなりに膨大な魔力を持っているつもりよ
あの冥獣は私の魔力に引き寄せられてやってきた、つまり…分かるわね?」

「…」

「大丈夫よ、貴方には素質があるわ
…そう、素質が…ね」
フフフ、と妖艶に微笑む

「俺が…強くなれるのか…?」

「えぇ、マスターが望むのなら、幾らでも」

「…分かった、やるよ」

「決まりね、物分りの良いマスターで助かったわ
…もし拒否していたら…」

「……していたら…?」
ゴクリと喉を鳴らす

「私の身体を触りまくっていた事を盾に脅そうかと考えていたわ♪」

「脅す!?と言うか触りまくるって…俺は何も…」

「あら?触っていたじゃない、ペタペタと色んな所を撫で回したり…」

「…………まさか、魔剣状態の時の事なのか?」

「ご名答、沢山触っていたわね…
あんな所や、そんな所まで…」

「んなっ!?お、俺は一体何処を触って…!?」

「そんなこと…言えないわ…」
顔を赤くしながらグラムサンタの尻尾がクネクネと揺れ動いている

「お、俺は悪くねぇぇぇぇえ!?」



雪の積もった白銀の世界で、一人の少年の悲痛な叫びが響き渡った…





 
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