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提督はBarにいる・外伝

作者:ごません
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美保鎮守府NOW-Side B- PART2

 
前書き
 何か腹に一物を抱えて視察に出発した金城提督一行。何を考えているのか、明らかになる。 

 
 ~視察の裏で①~

-日本国本土・陸軍知覧航空隊基地-

「あー、あー。繋がったか?」

「多分大丈夫です、明石さん聞こえます?」

『聞こえてますよ提督、感度良好です』

 時刻は24:00。美保鎮守府に向かう予定がフィリピンで足止めを喰らい、日没を迎えたお陰で今日中の到着を諦め、鹿児島の知覧にある陸軍の航空隊基地に一泊する事になった。完全消灯時間は22:00なのだが、ゲスト扱いの提督一行はこの時間でも灯りを点していても許されていた。

 一行が揃って話しかけていたのは一台のノートPC。明石と提督が『計画』の為に設計し、無駄にオーバースペックな技術をぶちこんだ今回の秘密兵器だった。今はその機能の1つ、『傍聴防止機能付きテレビ会議』を使って真夜中の打ち合わせの予定だったのだ……PCの画面に映った人の顔を見るまでは。

「ゲ、大淀!」

『ゲ、とは何ですかゲッとは!事情は全て明石から聞きましたからね!何考えてるんですか!?』

「とりあえず大淀さぁ、ボリューム落としなよ。味方とはいえ陸軍基地から秘匿通信飛ばしてるなんてバレたらマズイと思わない?」

 やれやれ、と呆れ顔の川内が一行が持ち込みのビールをプシュッと開けて煽る。同じ日本国の軍隊とはいえ陸軍と海軍。仲が宜しくないのはもはや伝統芸能に近い。

『そ、それもそうですね。すみません』

「解りゃあいいんだよ、解りゃあ。ってか、バレんの早すぎだろ明石ぃ」

『いや~スンマセン。まさか大淀がコブラかけてくるとは思わなくて』

「What?コブラ?」

『淫乱ピンクの妄想です、忘れてください』





『それより、どういう事なんです?今回の視察で美保鎮守府の独自技術を頂く、って』

「おいおい、頂くとは穏やかじゃねぇなぁ。俺ぁ奴への貸しを取り立てに行くだけだぜ?」

 そうやって嗤う提督はグビリ、と缶ビールを飲んでゲェプ!と盛大にゲップを吐き出す。

「貸しって、まさか」

「青葉の想像通りだと思うぜ?奴の部下が仕出かしてくれたデータの強奪。その取り立てだ」

「え、確かそれって武蔵が止めたんじゃなかったデスか?」

「形として残ったデータは、な。設計図だとか、データディスクとか……武蔵が見逃したのは艦娘ならではのコピーした情報だ」

「コピー……あぁ、視覚記憶情報か」

 思い当たる節があったらしい川内が正解を引き当てた。

「そういう事だ。艦娘……特に第一世代型の奴には、脳内に視覚情報を記憶しておく為の改造が施されている奴が少なからず、居る」

 何ともSFチックな話だし、倫理的に考えたらモロにアウトな話だ。だが、深海棲艦が出現した当初は倫理観を投げ捨ててでも戦力を産み出す必要があった。艦霊との適性を見極め、人体をベースに機械を組み込み、サイボーグの様な形として生まれた第一世代型艦娘。ウチの連中は殆どがその第一世代型をベースにクローン技術等を用いて量産された第二世代型だが、聞くだけでも中々ヘビーな話だったらしい。

「まぁ、取材した内容をずっと保持しておけるんだ。お前からしたら夢の機能だろ?青葉」

「ふえ?あ、あはは……そうですね!」

 重苦しくなった空気を変えようと茶化して見せる。時には道化になる事もしねぇとな。

「話を戻すぞ。そんなワケで武蔵が押収したのは形として残ったデータのみ。青葉やあの技術士官の脳内データや電子データはノータッチにしておいた」

 それが『貸し』である。しかしあのタイムパラドックスが無ければ艦娘の量産化の目処は立たず、第二世代型艦娘はここまで普及しなかった。つまり見逃さなければあの場でブルネイ鎮守府どころか世界中の艦娘が消滅していた可能性さえあった。その推論に思い当たった青葉は、ゾッとした背筋をぶるりと震わせた。

「ンー……でも、darlingがあそこでデータを消してたら私達が生まれなくて、でも生まれてないとデータは盗めなくて過去に持ち帰れなくて……ア~っ!頭が痛くなって来まシタ!」

 要するに金剛の言いたいのは『卵が先か?鶏が先か?』論争だ。そんな物は不毛だし、考えるだけ無駄だ。

「事実関係だけで処理するぞ。ウチはデータを盗まれ、持ち逃げされた。奴さんもこっちもその事実は暗に認めてる。その貸しはキッチリ取り立てるさ、利子つきでなぁ?」

 ただでさえ米軍と親しいらしい美保鎮守府だ、ウチにないノウハウやらデータやらが眠っている事だろう。その為の人選である。




「俺と金剛は普通に視察して連中の目を惹き付ける。言わば囮だ。川内はデータの物理的奪取……不可能なら一暴れしてもらうかもな」

「りょうか~い♪」

 川内はニヤニヤというか、眼がギラギラしている。戦闘狂、ここに極まれりという顔だ。正直、危ない。

「青葉はノートPC使って電子データの吸出しだな。くれぐれも、枝付けられたり逆探なんて真似はされるなよ?」

「大丈夫です!目標は電子戦のプロであるメスゴリラ少佐ですから!」

「草〇素子は無理があるから止めとけ」

 アニメ好きにしか解らないような冗談を交わしつつ、打ち合わせは幕を閉じた。明日(というか既に今日だが)の起床予定は05:30。あと数時間しか無いが、少しでも寝ておこう。

「あ、darling?」

「何だ?」

「あのマイルドなしゃべり方、違和感丸出しですから止めた方がいいデスよ?」

「うるせぇ馬鹿、とっとと寝ろ!」

 自分でも解ってはいるのだ。ただ、相手に不快な印象を与えて青葉と川内が動きにくくなる事態を避ける為なら、三文芝居でも何でもやってやるさ。

「しかし……そんなに変か?」

 普段からヤクザかゴロツキのような喋りだからなぁ。違和感も感じるか。 
 

 
後書き
 はい、という訳で白飛騨さんが書いていた美保鎮守府NOWの12話で陸軍の航空隊基地にお泊まりした際の一幕でした。あちらの作品を呼んで頂けると解るかと思いますが、提督さんの言動がかなりマイルドな感じです。攻〇のバトーさんとパ〇レイバーの後藤課長位違います←解りにくい

 まぁ、作者の書き方の差なんですがそれも活かして提督さんが演技してましたというお話にしてみました。そしてイヤ~な視察の仕事、提督さんはタダじゃ動きません。がめついのですw 
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