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提督はBarにいる・外伝

作者:ごません
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美保鎮守府NOW-Side B- PART1

 
前書き
 金城提督が以前行った演習の相手、美保鎮守府への視察。1年以上経った今頃、視察せよとの辞令が下った。その事に大淀は一抹の不安を覚えたーー……
 

 
~ブルネイ第1鎮守府・大淀の手記より~

 今日、奇妙な辞令が提督に下った。1年以上前に行った演習相手の鎮守府を視察し、演習の効果を評価せよという物だ。その目的、視察先のどちらもが不可解だった。しかも辞令は軍令部からではなく元帥閣下からの直接の辞令。拒否が出来る類いの代物ではなかった。提督は

「面倒くせぇなぁ」

 とぼやきながらもニヤニヤと不敵な笑みを浮かべていた。あの顔は何かしでかそうとしている時の顔だ。そもそも、あの時行われた演習は正規の演習相手ではなく、相手の証言を全面的に信用するならば過去の美保鎮守府からやって来た艦隊だったのだ。その鎮守府の『現在』を視察して元帥閣下は何をさせようというのか?

「とりあえず、事前調査がいるな。まぁ青葉にでもやらせとけ」

 との指示を受け、青葉さんに美保鎮守府についての事前調査をお願いした。勿論、相手方に気付かれないようにではあるが。




 数日後、視察の詳細が送られてくる。随行員は3名、今回はあくまでも視察である為、提督の護衛がメインの人員を選ばなくてはならない。

「当然私は付いていくネー!」

 と名乗りを挙げたのは金剛さん。まぁ、鎮守府最高錬度である上に提督の妻である彼女は妥当な線だろう。

「青葉も行きますよ~!」

 鼻息が荒くなっているのは青葉さん。まぁ、彼女も妥当だろう。事前調査をした張本人であるし、諜報も実戦もイケる彼女は視察団の面子としては最適だ。問題は残る1人。

「提督、何で私なワケ?」

 選ばれた本人は憮然とした顔で、不満そうだった。

「まぁそうむくれるなよ、川内。今回は演習ナシの視察だ、要するに艤装の持ち込みは基本的に出来ん」

「だから?」

「だから鎮守府屈指の近接のプロを連れていく。合理的だろ?」

 提督の説明に少しは納得したらしい川内。

「それに……」

 ゴショゴショと何やら耳打ちすると、川内は目を見開き、

「ちょっと提督、それ本気?」

「おぅ、マジもマジ。貸しはキッチリ利子まで取り立てるのが俺の流儀だからな」

「そっか、なら私と青葉が必要だよね」

 と、提督と青葉と川内。三人揃ってグフフフと悪い笑みを浮かべていた。不安だ、物凄く不安だ。美保鎮守府逃げてぇ!超逃げてぇ!と言いたい。しかし向こうが呼んでいる上に拒否できないお膳立てまでされている。完全なる詰みである。

「大淀、darlingがああなったら止められないネー。人間諦めが肝心ヨ?」

 そう言って語る金剛さんの目は、悟りを開いたかのような優しげな目だった。あれは何をやっても無駄だという諦めの境地だったのかもしれないが。





 その後、提督は視察に向かう当日まで明石と何やら怪しげな行動を取り、視察団メンバーと数回の打ち合わせを重ねていた。その姿を見る度に私は不安を覚えたが、グッと堪えて口出しせずにいた。あの淫ピ(淫乱ピンク)め、後で締め上げて事情聴取してやる。そんな事をしている内に、とうとう出発の日がやって来た。

「んじゃ、悪いが行ってくるぞ」

 まるで観光旅行にでも行くかのような気楽さで、出発の挨拶をする提督。

「とびっきりのお土産、期待してますよ提督!」

 あの淫ピめ、提督は遊びに行くんじゃ無いんだぞ?お土産なんて買える訳無いじゃない。

「提督、お留守の間の執務はどうしますか?」

「あ~……俺の代理は加賀だな。金剛を除けば最高錬度だし」

「了解しました。提督代理の責務、務めさせて頂きます」

「ん、頼んだ。補佐は大淀と日替わりの秘書艦でな?」

 これはいつもの執務の体勢なので問題ない。

「緊急時対応マニュアルはどうしますか?」

 提督が不在の時に緊急事態が発生した場合のマニュアルが、幾つか組んであった。事の重要度に応じて使い分けているのだが、今回はどのマニュアルをベースに行動を取りますか?という質問である。

「イ-1で対応してくれ」

 提督の言葉に僅かに反応してしまった。イ-1というのは緊急時も緊急時、提督が鎮守府への帰還が困難・又は不可能となった場合の対応を決めておいた物だ。

「どうにも今回の視察はキナ臭い。視察の期間が決まってない辺りを考えても、な。何が起こるか解らん、十分に注意してくれ」

「……了解しました」

 普段はやる気の無いようにしているが、提督は百戦錬磨。こういう『悪い予感』は大概当たってしまうのだ。私も気を引き締めなければ。

「んじゃ、暫く頼んだぜ。あばよ!」

 ニヤリと笑った提督をはじめとする視察団一行は、輸送機に乗り込んで離陸していった。

「……行っちゃった」

「行っちゃったねぇ」

 のほほんと言ってのける明石に、ヘッドロックをかける。

「えっちょ、大淀さん!?なにしてんの!」

「さぁ、吐いてもらうわよ?」

「え……な、何をっすか?私思い当たる事が無いなぁ」

 今更惚けようと言うのか。

「アンタが提督と良からぬ事を計画してたのは知ってるんだからね!?さぁキリキリ吐きなさいこの淫乱ピンク!」

「ちょっ!ピンクの髪なのは認めるけど、淫乱は否定するよアタシ!?」

「脳内もピンクの癖に何言ってんの!さぁ吐きなさい、吐きなさいったら!」

 ヘッドロックから流れるように、コブラツイストに移行。ストレス発散からプロレスにハマった私だけど、意外とこういう時に役に立つ。

「わ、分かった!言う言う、言うからギブ~っ!」

 陥落した淫ピを解放し、計画の全てを聞き出した時、その大それた計画に頭痛がしてきた。はぁ……あの人の側に居ると、気が休まる時が無いわ。



















 退屈しなくて毎日が楽しい、なんて思ってる事は口が裂けても言えないけど。






 
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