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ブレイブソード×ブレイズソウル~偽剣と共に歩む者~

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魔剣との出会い

 
前書き
〜前回のあらすじ〜
モンスターと戯れた後、その場から離れようとする十夜に襲いかかる謎の魔力振
その揺れが収まったとき、目にしたものは…
―――巨大な紅白の魔剣だった
 

 


「コイツが…さっきの現象を…?」

地面に突き刺さっている一本の魔剣を間近で眺めながら、そう呟く
【ソレ】は白い刀身に血のように紅い模様が刻まれた剣だった
何処か神々しさを感じる反面、禍々しい力も感じる

「これは…まさか、魔剣、グラム…!?」

【ソレ】は魔剣の中の魔剣…数ある魔剣の中で唯一【魔剣】の名を冠するグラムに驚くほど似ていた

「だけど…本で見た物と全然違うが…こういうもの、なのか?」

ペタペタと刀身に手を触れながらクルリと周りを一周する
相変わらず魔剣と思われる剣からは莫大な程の魔力が溢れ出ているが…十夜は対して気にした様子もなく観察を続ける

「まさか…噂に聞く本物を超えた偽物…って奴か…?」

魔剣グラムと言う者はこれまで幾度も研究が行われ、その中には魔剣グラムを超える魔剣を生み出すという事も行われた…らしい
その結果、奇跡に奇跡を重ねて生まれたのが…

「魔劍グラム=オルタ…なのか…?
いや、でもあれは単なる噂で…それに、なんでこんな所に……」

そうして思考しているとふと、ある事に気付く

「森が…静か過ぎる…?」

通常、あれだけの魔力振が起きれば辺りのモンスターは凶暴化するなり、パニックに陥ったりするものだが…

ーカーィーー

「ッ…!まさか……!?」

遠くから響くようなその声は段々とコチラへと近づいて来ている

ーーテーカイィー‼ーーー

「ははは…オイオイ、嘘だろ…?」

――そして、その声は

【スベテ…ハカイィィィィ!!!!】

―――その姿を表しながら目の前で咆哮した

「【冥獣】ッ…!?なんでこんな所に…ッ!」
(…いや、そんなことはどうでも良い!
どうする…どうやって逃げる…!?)

【アアアアアアアァァァァァアッ!!】

「んなっ!?」

いきなり奇声を上げたかと思うと、その手に持っている大剣を振り被りながらコチラに大ジャンプしてくる冥獣
…間一髪、横へと飛び込むように避けられたが…

「……こりゃ、ヤバイな…」
冥獣が振り下ろした大剣は固い地面に深く埋まっていた

「…あの冥獣、クレイモア型か…」
(動きは比較的遅いが一撃でも当たればタダじゃ済まないな…)

冷静に分析し十分に距離を取る

(敵は一体のみ、それも動きが遅いクレイモア型…相手の動きに注意していれば逃げ切れない相手じゃない…!)

ユラリユラリとコチラに歩み寄ってくる冥獣だったが、数十メートル辺りの距離で止まる

【アァァァァアアア!!】

そして二度目の大ジャンプ
俺目掛けてその大剣を振り下ろす、が

「よっと!」

ズガァンッ!

ヒョイっと相手の動きに合わせて振り下ろされる大剣を躱す
その際さっきの衝撃で吹き飛ばされたであろう大剣が避けた先に転がっていた

「………」

―――冥獣は、まだ動かない
逃げるのならば、今がチャンスだ…と言うのに俺の身体は、動かない
目の前の大剣が放つ魔力に動きが止められたように

「チッ!」

何故か目の前の大剣を置いていってしまうと、取り返しのつかないことになりそうな予感があった
そんな予感がしたからだろうか?

目の前の大剣を持って、その場から逃げ出した
…後ろの森からは、冥獣の歪な叫び声が響いていた


〜〜〜〜〜〜


「…ここまで来れば、大丈夫、だろ…」

偶然見付けた小さな教会へ身を隠し荒い息を整えながら座り込む
街への道は冥獣が塞いでおり仕方なく街とは逆の方向…つまり森の奥まで走って来たのだが…

「ふぅ…こんなとこに教会があるとは…んっ…お陰で助かったぜ…」

走っている内に運良くこの教会を見つけ、その中に隠れた訳だ

「ったく…いきなりどデカい魔力振が発生したと思ったら魔剣みたいなのが出て来て、挙句に冥獣とかくれんぼとは…
………泣けるぜ」

…ちなみに、今も教会の外では冥獣が叫び声を上げながら俺を探し回っている

【アアァ…ハカイィィ!!】
ガァンッ!

「うおっ!?……アイツ…無茶苦茶しやがって…!」

外で冥獣が暴れている影響でコチラにまで振動が伝わってくる
恐らく辺りの木を手当り次第吹き飛ばしているのだろう

(この魔剣は不幸を司る力でも持ってんのか…!?)

床に刺した魔剣を眺め…いや、睨み付けながら心の中で愚痴る
魔剣は何の反応も返さない…いや当たり前だが



そうして数分…いや数時間だろうか?
いつの間にか外からの衝撃も、声もしなくなっていた

「ようやく行ったか…?」
壁に手を付きながら静かに立ち上がる
「っと…コイツも持ってかないとな」

ガッと床に刺さっていた魔剣を掴み取り、掲げる
――そしてある事に気付く

「…この剣…全然重くないな、と言うか軽い…?」

逃げているときは気付かなかったがこの魔剣、見た目に反してかなり軽い
コレならあの冥獣とも戦えたんじゃ…?と思う十夜だったが…

「これ、もしかして中身が空っぽで軽いんじゃ…?」

そうであればさっきの一撃を受ければ剣ごと真っ二つ…
そこまで考え身震いをした
と、言うか戦闘経験の無い自分がいきなり魔剣を持って戦え、と言うのは中々に理不尽である
―――それも中身が空っぽの良くできた魔剣の玩具であるならば
「…まぁ、取り敢えず帰るか」

大きな溜息を一つ零してその大剣をブンブンと振り回しながら教会から出る…普通に危ない

そんな考え事をしていたからか、十夜は気付かなかった
その魔剣が、中身が空っぽの只の玩具ならば
その教会の…ボロボロとはいえ大理石で作られた床に、深々と突き刺すことが出来ただろうか…?
それが玩具ならば、何故莫大な魔力を発しているのか…を………

『……………』



教会の入り口から少し顔を出し、辺りを見回す
軽く見た感じでは冥獣は居ない様だ

「つーか…暴れすぎだろ…?」

先程の歪みが発生した場所に負けず劣らず辺りの木々がへし折られ、一部の木は縦や横に一刀両断されていた

……この森だけ自然破壊されまくりである、森の主がいるならばさぞ怒り狂う事だろう

「…さて、居ないみたいだし…」

早く帰らなきゃな、と続ける前に目の前に巨大な黒の塊が落ちてくる
ドスンッ!

それは――

【ハカイィ…ハカイィィィ!!!】

先程から暴れていたであろう冥獣だった

「ウッソだろ…!?ちょっとしつけぇぞ!?」

悲鳴のような声で文句を言っている間にも問答無用とばかりに大剣を振り下ろしてくる冥獣
咄嗟の事に手に持っている魔剣で防ぐ

ガギィン!

とてつもない金属音が響きその魔剣は十夜に迫る大剣を防いだ
とは言え衝撃までは殺しきれず、刀身を支えていた左腕がゴキリと音を立てた

「ぐっ…!?」

咄嗟に左手を離し冥獣の大剣を別の方向へと逸らす
…冥獣は三度地面に大剣を埋めることとなった

「今だぁッ!!」

その隙を見逃すはずはなく、手に持った魔剣を未だ地面から引き抜こうとしている冥獣の背中目掛け全力で振りかぶる、それは剣技とも言えぬ子供が棒切れを振るうような一撃だった
―――そして

ザシュッ…‼

【ア…アァァァ…】

―――その身体は、半分へと分かたれた
鮮血が舞い上がり、小さな呻き声とともに息絶える
物言わぬ骸となった冥獣それは段々と消えていき
そして後には何も残らなかった

「………終わり…か…?
…は、はは…冥獣も、案外対したことはないんだな…」

こちらの損害は左手のみ、しかも骨折程度だ
―――…一歩間違えれば死んでいた、そう確信できる
初めての戦闘で相手が冥獣ともなれば、奇跡と等しい結果である

生き残った、嬉しいことの筈なのに手の震えと速すぎる心臓の鼓動が収まらない

「…俺が…殺した…冥獣とはいえ、生きている者を…」

ザンッ、と手から落ちた魔剣が地面に突き刺さる
――これが、十夜の、人生初の【殺し】であった


〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 



「…帰るか」
空が闇に染まる頃、教会の十字架に座り込んでいた十夜は顔を上げ、立ち上がる
その顔には涙の跡が残っていた

「…今日の事は忘れよう、これは全部悪い夢だった…」

自らに言い聞かせるように右手に持った魔剣を見る
「これも…夢だった、俺はただ、散歩に来ただけ
…それだけなんだから」

十字架に向き直り、片手で大剣を地面に突き刺す様に振り下ろす
ズンッ!

重い音を立てながら床へ深々と突き刺さる紅白の大剣

「…じゃあな、助かったよ
…お前が居なきゃ、俺は死んでた
だから、ありがとう」

最後にその綺麗な刀身を優しく撫でる

『……………』
―――刹那、膨大な量の魔力が自分の中に流れ込んできた

「ッ!?ガぁァァァぁッッ!?」

その余りの苦痛に叫びを上げる
その魔剣から手を離そうとしても、接着されたかの様にその手は剥がれない

―――魔核エーテライト、認識

…声が響く

―――コード:アンロック…承認

一度流れ込んできた魔力が、再度魔剣へと流れていく

―――システム:ブレイブソード…展開

それは結晶へと変化しながら更なる光を放つ

―――ネフィリム機関をオーバーロード
――環境変数、ブレイズゼロに固定

そして…

――――魔力結晶体…構築
――《魔剣少女》開放します

―――光が弾けた

「くっ…!?」

「――あら、やっとスタートかしら?」

光の中で、女の子の声がする

「この私を扱おうだなんて…物好きな方も居るものね」

そこに居たのは、かなり露出の多いサンタの様な衣装を着た、長い髪の少女だった
その頭には2本の禍々しい角が生えていて、普通の少女では無いことを感じさせる

「…ッ!誰…だ!」

「あら、そんなに怖い顔をしないでも大丈夫よ?
…とは言っても、簡単には警戒は解けないでしょうね」

「………」

無言のまま、右手に持った魔剣を少女に向ける
少女は「あら怖い」と戯けたように返し続ける

「では、自己紹介をしましょうか
……私は魔剣グラムと魔煉サンタクロスの融合体、あるいはキメラ
本物でも、偽物でもない、この世に存在してはならない禁忌の魔剣
名は…【聖王の剣】または偽剣グラム×サンタとでも呼んで頂戴」

そこまで言うと両手でスカートを摘みながら軽く一礼する

「…魔剣少女、か…」

「えぇ、そうよ
――貴方の持っている、その魔剣のね
…それより、貴方も自己紹介するのがマナーと言うものでしょう?」

「…俺は、十夜」

「そう…十夜、ね
私はマスターと呼ばせてもらうわ」

「マスター?」

「そう、貴方が私のマスターよ
最初はどうしようかと思ったけれど…
貴方は【使えそう】だからね…」
「どう、マスター?私の使い手に…マスターになってみる気はないかしら?」

スッとその赤い手袋に包んだ手を差し出すグラム×サンタ

「………あぁ…助けられた借りも、あるしな
なってやるよ、マスターに」

「そう…ありがとう」

ギュッと差し出された手を握る
その手はとても華奢で少しでも力を込めれば折れそうだった…



――――それが、最初の彼女…グラム×サンタとの出会いだった



 
 

 
後書き
今回はここまでです
では次回もお楽しみに… 
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